レビュー

ハンズ・オブ・ストーン(Hands of Stone)

投稿日:2017年8月8日 更新日:

おすすめ度

ハンズ・オブ・ストーンのポスター
キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

パナマのスラム街から世界チャンピオンにまで上りつめた伝説的ボクサー、ロベルト・デュランと彼を育てたトレーナーの実話に基づく物語。スラム育ちで学校もまともに出ていないデュランは、トレーナーのレイ・アーセルの指導もと世界チャンピオンを目指す。やがてシュガー・レイ・レナードを倒してチャンピオンベルトを手にするが、その後のリターンマッチで突然の試合放棄。「ノー・マス」として知られるこの事件の顛末と当時の米・パナマ情勢を織り交ぜながら描いていく。監督・脚本に『ベネズエラ・サバイバル』のジョナサン・ヤクボウィッツ。ロベルト・デュランにエドガー・ラミレス。レイ・アーセルにロバート・デ・ニーロ。シュガー・レイ・レナードをミュージシャンのアッシャーが演じる。

 

言いたい放題

アイラ♡ 先日観たばかりの『ビニー 信じる男』にも登場する、パナマ人ボクサー、ロベルト・デュランの物語。デ・ニーロやジョン・タトゥーロ、人気ミュージシャンのアッシャーなど、『ビニー』より多くの大物を起用しているにも関わらず、新宿の小さい劇場の特集企画のなかで数日間上映されただけというもったいなさ。世界チャンピオンとはいえ、ボクシングの実話ものではなかなか観客動員は見込めないってことなのかしらね。

キット♤ 多くのボクシング映画の例に漏れず、本作も、恵まれない生い立ちながら努力して成功を掴み、挫折、そして再起するという王道のストーリー。“石の拳”と呼ばれたロベルト・デュラン役のエドガー・ラミレスは、『ゼロ・ダーク・サーティ』でCIAの特殊部隊の一人をやっていたらしいが、ほとんど無名の俳優。けど『ビニー』でも思ったけど、普通の俳優がボクサー役をいかにもそれらしく演じてしまうのは俳優の層の厚さなんやろなぁ。日本では考えられない。

♡ 『ビニー』が交通事故による首の怪我からの再起に焦点を当てていたのに対して、こちらはデュランの半生をじっくり描いてる。物語自体は陳腐というか、この手の題材にありがちな内容で、ある意味普通やけど、字も読めず、食べるためにボクサーとなったデュランの生き方と、アメリカの支配下にあった当時のパナマ情勢をうまく絡めたことで奥行きが出たね

♤ 主人公が少年時代を過ごしたスラム街やパナマ運河の返還にまつわるニュースなど、ローカル色の強い時代背景を見せる一方で、チャンピオンになって国民的英雄に上り詰め、転落すると一転して皆から責められるという浮き沈みをうまく見せてるな。2階級上の無敗の王者、シュガー・レイ・レナードに挑戦してタイトルを奪取するところをクライマックスに持ってくるのではなく、この試合と半年後のリターン・マッチでチャンピオン・ベルトを取り返されるところを真ん中に置いて、その後の再起でラストに繋げていく構成もよく考えられている。

♡ 特にシュガー・レイとの再戦で、8ラウンド目で試合放棄をしてしまういわゆる「ノー・マス(もうたくさん)」事件について、彼の真意を明らかにしているのも見ものということなんやね。

♤ シュガー・レイ・レナードとの2回の戦いについては、試合前から始まる心理戦が勝敗を左右したという筋書きにしているところに工夫が観られる。ボクシングの試合のシーンも、細かなカットを繋ぎ合わせて躍動感を見せ、随所に過去のフラッシュバックを混ぜるところもなかなか面白かった。素人ボクサーのボロ隠しなのかもしれないけど・・・。

♡ デュランの奥さん(アナ・デ・アルマス)がめちゃくちゃきれいでかわいい。キューバの女優さんらしいけど、今度の『ブレード・ランナー2049』にも出ているそうなので楽しみやわ。あと、本作出演に備えてばっちり身体を作ってきたというアッシャーの素敵なお尻が拝めて最高

♤ 名トレーナー、レイ・アーセル役のロバート・デ・ニーロはもう余裕の演技やな。シュガー・レイ・レナード役のアッシャーはちょっとニヤニヤしすぎやろ。リングで国家を歌うレイ・チャールズのそっくりさんやドン・キングのそっくりさんが出てくるのもお楽しみ。

♡ そういえば、『ビニー』の製作総指揮にはマーティン・スコセッシが名を連ねていて、いうまでもなくロバート・デ・ニーロとは1980年製作の『レイジング・ブル』の監督と主演俳優の関係。2人がこのタイミングで別々のボクシング映画に携わっているのも面白いわね。

♤ ちなみに『ビニー』でも描かれていた、デュランがビニー・パジェンサに敗れてタイトルを失ってしまうのは1994年の話。シュガー・レイ・レナードとの対戦から14年後のことなので、ボクサー人生の最晩年だったころ。生涯の対戦記録は、119戦、103勝〈70KO勝〉、16敗。ビニー・パジェンサ(60戦、50勝〈30KO勝〉、10敗)、シュガー・レイ・レナード(40戦、36勝〈26KO勝〉、3敗、1分)と比べても総試合数が圧倒的に多く、KO率が高いのは「石の拳」の面目躍如といっていい。

 

予告編

スタッフ

監督 ジョナサン・ヤクボウィッツ
脚本 ジョナサン・ヤクボウィッツ

 

キャスト

エドガー・ラミレス ロベルト・デュラン
ロバート・デ・ニーロ レイ・アーセル
アッシャー シュガー・レイ・レナード
オスカル・ハナエダ カフラン
エレン・バーキン ステファニー・アーセル
ルーベン・ブラデス カルロス・エレータ
ペドロ・ペレス プロモ・クイノネス
アナ・デ・アルマス フェリシダード・イグレシアス
ジョン・タトゥーロ フランキー・カルボ

 

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