レビュー

メリー・ポピンズ リターンズ(Mary Poppins Returns)

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おすすめ度

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

Mary Poppins Returnsアカデミー賞5部門に輝いたディズニー映画「メリー・ポピンズ」(1964)の続編。舞台は25年後のロンドン。大恐慌後の時代、バンクス家の長男マイケルはかつて父や祖父が働いていたロンドンのフィデリティ銀行で臨時の仕事に就いていた。妻をなくしたばかりのマイケルには3人の子どもがいるが、経済的な余裕には乏しく、しかも融資の返済期限切れで自宅まで失いかけていた。そんな彼らの前に再び舞い降りたのがメリー・ポピンズだった。新たにメリー・ポピンズを演じるのは『プラダを着た悪魔』のエミリー・ブラント。マイケルには『007 スペクター』のベン・ウィショー。コリン・ファースやメリル・ストリープ、さらに前作で煙突掃除人のバートを演じたディック・バン・ダイクも出演する。監督は『シカゴ』『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』などのほか、舞台演出家・振付師としても活躍するロブ・マーシャル。

 

言いたい放題

キット♤ 1964年の映画『メリー・ポピンズ』の54年ぶりの続編といえばいいのかな。前作でバンクス家の子どもたちだったジェーンとマイケルは大人になっていて、マイケルにはアナベル、ジョン、ジョージの3人の子供がいる。姉のジェーンは独身。前作が1910年のロンドンが舞台で、本作は25年後の1935年。世界恐慌のあおりでマイケルたちは親の残してくれた家で貧乏暮らしを強いられている。

アイラ♡ 54年ぶりかぁ・・・。前作はたしかに公開当時に観てるのやけど、物語の筋はだいぶ忘れてしまった。でも曲のいくつかはしっかり覚えていて、記憶って理屈より感覚なんやなぁとしみじみ実感。

♤ メリー・ポピンズを演じるのは、前作のジュリー・アンドリュースからエミリー・ブラントへ。ジュリー・アンドリュースといえば、舞台で演じてヒットさせた『マイ・フェア・レディ』が映画化される際に、歌えないオードリー・ヘップバーンに主役を奪われて失意の後、『メリー・ポピンズ』で映画デビュー。アカデミー主演女優賞を獲得したという記念作でもある。今作の劇中曲はすべて新しく作られてるいけど、エミリー・ブラント自身が歌っているらしい。4オクターブの声が出せたというジュリー・アンドリュースにはかなわないけど、庶民的なジュリー・アンドリュースのポピンズよりもスマートで今風。

♡ ダンスはジュリー・アンドリュースよりうまいんじゃないかな。衣装もとってもおしゃれで素敵。いずれも子どもたちに命令口調で接する厳しいナニーやけど、ふんわりした空気のジュリー・アンドリュースに対して、あくまで居丈高で近寄りがたい雰囲気のエミリー・ブラント。タイプは違うけど、それぞれによいと思う。とはいえ、やっぱりメリー・ポピンズはジュリー・アンドリュースかなぁ・・・。

♤ メリー・ポピンズのキャラだけでなく、本作の評価は、前作を知っているかどうかで違ってきそうな気がするな。たとえば、前作でディック・バン・ダイク演じる煙突掃除屋に相当するジャックの仕事は、ガス灯を点灯して回ること。前作を観ていれば、25年経ってさすがに暖炉はもう使われなくなったのか・・・という感じ方もできる。

♡ そうでしょうね。前作を知っているほど、それへのオマージュ的な場面を期待してしまうしね。前作では煙突掃除という仕事があったから、名曲「チム・チム・チェリー(Chim Chim Cher-ee)」があった。ほかにも前作には名曲が揃っていて、数曲でいいから出てこないかと待っていたのやけど・・・。ちなみに、前作の音楽はリチャードとロバートのシャーマン兄弟が担当。この2人は、トム・ハンクスとエマ・トンプソンがウォルト・ディズニーとメリー・ポピンズの原作者パメラ・トラヴァースを演じた『ウォルト・ディズニーの約束(Saving Mr.Banks)』にも出てくる。今作では、リチャード・シャーマンが音楽面のコンサルタントとしてバックアップに加わっているそう。全曲新作ながら、前作の雰囲気を踏襲した楽曲はとても楽しかった。「チム・チム・チェリー」に代わる「小さな火を灯せ」の群舞は迫力あったし。

♤ ほかにも、凧揚げの凧も前作から引き継いだものやし、実写とアニメが混在していて、実写からアニメの世界へ入っていくのも前作へのオマージュ的なつくり。このアニメも最新の3D VFXではなく、わざわざ昔風の2Dで作っている。

♡ そうやねん。観はじめて最初のうちは、う~ん子ども向けやったかなぁと感じたのやけど、すぐにこれは前作を観て育った大人のために作られたものと気がついた。凧だけじゃなく、父親の遺品にガラクタばっかりと文句をつけるマイケルの手には、前作で「2ペンスを鳩に(Feed the Birds)」の歌い出しでジュリー・アンドリュースが持っていたセントポール大聖堂のスノードムが! 

♤ 2ペンスといえば、最後にジェーンとマイケルが前作で銀行に預けた2ペンスに利息が付いて大金になっていたことが分かる。

♡ そのときの話を語って聞かせるのが、御年93歳のディック・バン・ダイク。今作では、彼は銀行の前頭取Mr.ドース・ジュニア(前作で彼自身が演じたMr.ドース・シニアの息子)としての登場やけど、あの2ペンスには子どもたちの厳格な父親だった銀行家のMr.バンクスの価値観を変える大切な役割があったことを再び話す。そのバックに「2ペンスを鳩に」のインストがそっと流れて、私はここで涙腺が決壊(TдT) 彼が出ているとは聞いていたけど、達者なタップを踊ってみせてくれたのは本当に嬉しかった。ラスト近く、公演の風船売のお婆さんに『ジェシカおばさんの事件簿』シリーズのアンジェラ・ランズベリーが登場。この役でジュリー・アンドリュースが出てたらええのになぁと思ったけど、どうやら彼女は早々に出演オファーを断ってたらしいのね。エミリー・ブラントのメリー・ポピンズであってほしいからという粋な理由で。

♤ そういう楽しみも、前作を懐かしく思い出しながらだと楽しいけど、そうでない人には普通のファンタジーで終わるかも。コリン・ファースやメリル・ストリープなどを贅沢に使っているのはさすが。

♡ 物語については、前作のほうがより奇想天外な展開が多かったと思うし、お母さんが女性参政権運動に熱心だったり、バンクス氏の銀行で取り付け騒ぎが起こったりと、子ども向けとは言い切れない設定があった。今作でも借金返済をめぐる騒動があるけど、物語としての奥行きは少し浅かったかなという印象。楽曲も、前作のように後世に残るものがあったかなぁと思ったけど、時代も違うしね。結局は前作との比較ばっかりでごめんなさい!

 

予告編

スタッフ

監督 ロブ・マーシャル
製作 ジョン・デルーカ
ロブ・マーシャル
マーク・プラット
製作総指揮 カラム・マクドゥガル
原作 P・L・トラバース
原案 デビッド・マギー
ロブ・マーシャル
ジョン・デルーカ
脚本 デビッド・マギー
撮影 ディオン・ビーブ
美術 ジョン・マイヤー
衣装 サンディ・パウエル
編集 ワイアット・スミス
音楽 マーク・シェイマン
歌曲 マーク・シェイマン
スコット・ウィットマン

キャスト

エミリー・ブラント メリー・ポピンズ
リン=マニュエル・ミランダ ジャック
ベン・ウィショー マイケル・バンクス
エミリー・モーティマー ジェーン・バンクス
ジュリー・ウォルターズ エレン
コリン・ファース ウィリアム・ウェザーオール・ウィルキンズ
メリル・ストリープ トプシー
アンジェラ・ランズベリー
ディック・バン・ダイク

 

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