レビュー

僕たちのラストステージ(Stan & Ollie)

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おすすめ度

Stan & Ollie

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

ハリウッドの映画創成期を支えたアメリカの伝説的お笑いコンビ「ローレル&ハーディ」。“極楽コンビ”として100本以上の作品に出演してきた2人組コメディアンのパイオニアだったが、すでに絶頂期を過ぎ、それぞれに食い違う仕事観をめぐって対立しながらも、互いを思いあう大切さに気づき最後のステージに臨む。主演は『ナイト ミュージアム』シリーズのスティーブ・クーガンと『シカゴ』のジョン・C・ライリー。監督は『フィルス』のジョン・S・ベアード。脚本は『あなたを抱きしめる日まで』のジェフ・ポープ。

  

言いたい放題

キット♤ アメリカのコメディアンコンビ「ローレル&ハーディ」の伝記映画。冒頭は、絶頂期にあって彼らが最も稼いでたころの映画撮影所のシーン。スタン・ローレルはチャップリンやキートンは自分たちの10倍以上稼いでいると言ってギャラに不満をこぼしたり、雇い主のハルとギャラアップの交渉をするとか、独立するとか気楽な話をしている。オリバー・ハーディのほうは離婚するたびに慰謝料を払って金回りが苦しくなっているのに次の結婚をしようとしているなど彼らの日本語名「極楽コンビ」を地で行っている。

アイラ♡ 人気商売がうまく行っているときの典型というか、古き良き時代の大らかさが漂ってくる冒頭やったね。でも物語はただちに15年後へ。映画はサイレントからトーキーへと変遷しつつあり、無言劇に近い芸風の彼らよりも、喋り中心のアボット&コステロに人気が移っていたことが示される。

♤ ローレル&ハーディにはもはや映画の話もなく、イギリスでドサ回り中。この公演ツアーを成功させて、新作映画の作りのチャンスを掴みたいともがき続けている。

♡ 台本を担当するスタンは器用だけど生真面目で、ボケ担当のオリーはちゃらんぽらん。でも長年連れ添ってきた2人の阿吽の呼吸が抜群であることは、病に倒れたオリーに代役が立てられたシーンが如実に物語る。なんだかんだ言っても、結局このコンビしかないよね!という2人の信頼感。オリーはラストステージを機に引退し、スタンは2人の台本を生涯書き続けた・・・というお話にはやっぱり胸が熱くなる。

♤ 映画がサイレントからトーキーに変わる時期のコメディアンでは圧倒的にチャーリー・チャップリンが有名。バスター・キートンとハロルド・ロイドを加えた3人が「三大喜劇王」ということになっている。この3人とローレル&ハーディはいずれも1890年前後に生まれているので、同じ世代で活躍した喜劇人。チャップリンとキートンは、1970年代に一連の作品が日本でリバイバル上映されたので主要な作品は観ているし、ロイドも名前は知っている。ただローレル&ハーディに至ってはこの映画を観るまで知らなかった。

♡ チャップリンとは比較にならないとしても、ローレル&ハーディもトーキーへという時代の変遷を生き抜いた人たちよね。ビートルズの『サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットにその姿を見ることができるわよ。

♤ 本作中にもちらっと出てくる彼らの映画作品をみると、いわゆるドタバタ喜劇。チャップリンやキートンと違って、2人組としてのコントやダンスでの息の合ったところが見もの。チャップリンがやがて映画の監督や制作にまで踏み込み、社会的なテーマも扱うようになったのに比べて、ドタバタに徹したために人気が続かなかったのかも知れないな。2018年制作ながら、随所に古い喜劇作品の雰囲気が感じられてなかなかよかった。

♡ 主演のスティーブ・クーガンとジョン・C・ライリーの2人も、彼らのキャラクターを活かした名演だった。地味な作品でも、名優たちをきっちり起用してくれることでぐんと見ごたえのあるものになる好例。

♤ 面白かったのが、2人の妻役で途中からツアーに参加するシャーリー・ヘンダーソンとニナ・アリアンダ。これが絶妙のコンビ。オリーの妻は口を動かさず甲高い声で喋るし、スタンの妻はロシア訛りで常に強気。クセの強い変な人物かと思ったら、それぞれに味わい深い人柄やった。

 

予告編

スタッフ

監督 ジョン・S・ベアード
脚本 ジェフ・ポープ

キャスト

スティーブ・クーガン スタン・ローレル
ジョン・C・ライリー オリバー・ハーディ
ニナ・アリアンダ イーダ
シャーリー・ヘンダーソン ルシール
ダニー・ヒューストン ハル・ローチ
ルーファス・ジョーンズ バーナード・デルフォント

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