レビュー

IT イット “それ”が見えたら、終わり。(IT)

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おすすめ度

IT

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.0 ★★★

スティーブン・キング原作のホラー小説「IT」の劇場映画化作品。メイン州の閑静な田舎町デリーで子どもたちの失踪事件が相次ぐ。ある大雨の日、内気な少年ビルの幼い弟が、手製の紙の船を持って出たまま大量の血痕を残して行方不明となった。以来、ビルもそして彼の友達も、何かの恐怖にとりつかれるたび、さまざまな場所で「IT(それ)」に遭遇していた。やがて「IT」の正体に気づいた少年たちは、自力でそれに立ち向かっていくのだが・・・。監督はアルゼンチン出身で『MAMA』のアンドレス・ムシェッティ。

 

言いたい放題

キット♤ スティーヴン・キング原作小説の映画は、佳作か駄作か両極端という傾向があるので出来栄えが心配やったけど、日本公開前にアメリカで大ヒットしていたので期待しつつ映画館へ。

アイラ♡ とはいえ読んだのがもうだいぶ昔のことで、大筋は覚えているのやけど、登場人物の細かいキャラクター設定まではほとんど記憶になかった。原作でも印象に残る、凶悪なピエロと赤い風船というモチーフは、上手にビジュアル化してたと思うけど。

♤ 原作は文庫本にしても厚めの4冊という長編。劇場映画の尺にまとめるには、どこをどう残すかが難しい。1990年に制作されたテレビのミニシリーズは2話構成で、比較的原作に忠実に作ってたけど評価はあまり高くなかったみたいやな。

♡ 舞台は、キング作品ではキャッスルロックと並んでたびたび登場するメイン州の架空の町「デリー」。この街には、27年ごとに目覚めては子どもたちを捕食する謎の怪物が棲みついている。原作では、地元の図書館に勤務する一人が、27年前ともに「IT」と戦った6人を呼び集めるところから始まるのやけど・・・。

♤ 映画化にあたっては、7人の子供時代から話を始め、そこだけにフォーカスすることで複雑になりすぎないようにしていて、これが成功の要因となったのは間違いないと思う。主人公を子供にすることで、キング原作映画の中では人気の高い『スタンド・バイ・ミー』を連想させるしな。

♡ 原作を読んだときは、すぐこれはホラー版『スタンド・バイ・ミー』やと思ったわよ。特に小説版では7人の性格描写や互いのやりとりが仔細に描かれて、すごくいい味わいがある。読んでるときはぐたぐだしてかなわんなぁと思うのやけど、特に思春期へ向かう時期の男子たちの頭の中のくだらなさかげんには終始苦笑しっぱなしで、映画もそこをうまく描写してた。

♤ そこはキングが得意とするところやな。27年前、主人公のビルの弟の失踪を機に、同じような恐怖体験を持ついじめられっ子たちが力を合わせて一度は「IT」を撃退。そのとき、もし27年後に「IT」が現れたら再び集結することを誓い合う。ところが超自然的な力で27年前の記憶は薄れてしまっていて、それを思い出さなければならないという仕立てが加わるのがキングらしい。

♡ ただ、ホラー映画としてどうだったかというと、恐怖感や気味の悪さという点ではいまひとつ。ピエロって、アメリカでは確かに薄気味悪いものの象徴みたいなところがあるけど、想像力が縦横無尽に膨らんでいくキングの世界を映像化するのって意外と難しいのかなぁと思ったわ。ホラーと友情ものと両方の側面を持った原作なので、後者に軸足があると考えればこれでいいのかもしれないけど、恐怖ものを期待した人にはちょっと肩透かしやったのでは?と思う。子どもたちの演技はよかった!

♤ 子役はビル役のジェイデン・リーベラーとリッチー役のフィン・ウルフハードが他作品への出演経験があるくらいで、大半は恐らく素人か本作が映画デビューかと思う。でもそれがかえって新鮮でよいな。7人それぞれのキャラクターも端的にうまく描かれてたし。

♡ 紅一点で、大人になりかけの少女ベヴァリーの存在感もなかなかよかった。ラストで“チャプター1”と出たところをみると、続編で大人編を作る準備はあるってことやね。

♤ アメリカでは予想以上のヒットを収めたのでその可能性はあるやろな。けど、原作でも話に華があるのは子供時代の方やから、大人編は一捻りが必要そう。けど、映画化されるなら楽しみではある。あと、原作には秩序を守る側のアイコンとして「亀」が登場するのやけど、本作では子どもたちが川遊びするシーンで踏みつけられたり、ビルがレゴの亀を持っていたりという形で登場。物語には特に影響しないので、単なるキングファンに対するトリビアネタとしての提供やろな。あと、ビルの自転車にマジックで”Silver”と大書きされているけど、原作ではローン・レンジャーの愛馬の名前からとった「シルバー号」のお陰で「IT」から逃げられるし、大人になっても大事な材料として使われるので小説を読んだ人にとってはニヤッとするところ。続編への布石とも思われる。

 

予告編

スタッフ

監督 アンドレス・ムシェッティ
原作 スティーブン・キング
脚本 チェイス・パーマー
キャリー・フクナガ
ゲイリー・ドーベルマン

 

キャスト

ジェイデン・リーベラー ビル・デンブロー
ジェレミー・レイ・テイラー ベン・ハンスコム
ソフィア・リリス ベヴァリー・マーシュ
フィン・ウルフハード リッチー
チョーズン・ヤコブス マイク
ジャック・ディラン・グレイザー エディ
ワイアット・オレフ スタンリー
ビル・スカルスガルド ペニーワイズ
ニコラス・ハミルトン ヘンリー

 

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