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海王星の近くで消息を絶った父を探して、ひとり宇宙へ旅立つ宇宙飛行士を描くSF。主演はブラッド・ピット。地球外生命体の探求に打ち込んできた父が行方不明となって16年。その姿を見て育った息子のロイも、宇宙飛行士となる道を選んでいた。ある日ロイは、軍の上層部かあ父が生きていると知らされ、そればかりか父が進めていたある計画が、太陽系にとってきわめて危険なものであることがわかる。父の行方を探し求め、ロイはひとり地球を離れるのだったが・・・。ロイの父親のクリフォードにトミー・リー・ジョーンズ。ほかにリブ・タイラー、ルース・ネッガ、ドナルド・サザーランドが共演。『エヴァの告白』のジェームズ・グレイ監督。
言いたい放題
キット♤ 『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に続いてブラッド・ピット主演映画。本作では主演だけでなく制作にもクレジットされている。
アイラ♡ ブラピが設立した「プランBエンターテインメント」の作品やからね。オスカー取った『ムーンライト』や『ビールストリートの恋人たち』それに『バイス』なども同社の製作で、社会的テーマの良作を連発してるので、今後も目は離せないと思ってる。それにしても、私はこれかなり好きな作品なんやけど、レビューはいまいちなのよね。オリジナル脚本のようやけど、『メッセージ/原題:Arrival』の原作『あなたの人生の物語』の作者テッド・チャンや、『母の記憶に』のケン・リュウなどが描くSF小説のようなテイスト。モノローグを中心とした静謐な世界は結構好み。宇宙戦争ものを期待して行った人には気の毒やけど。
キット♤ 冒頭、地上から軌道上まで伸びる構造物で作業する主人公ロイ(ブラッド・ピット)が事故に巻き込まれ、落下するところから始まる。命に関わる事故にも関わらず、ロイは冷製に対処し無事地上に降りる。彼が訓練された優秀な宇宙飛行士で、どんな困難な状態に置かれても感情をコントロールでき、脈拍も増加しないということが次第に分かってくる。この冒頭の掴みの部分がよくできている。
アイラ♡ 映像のクオリティも高いよね。宇宙を舞台とする作品はもう数え切れないほど観てきたけど、本作の映像の美しさは屈指だと思う。ただ冒頭のロイの落下とか、宇宙空間での爆風の利用とか、映像のリアリティの凄さのなかで見過ごしてしまいがちやけど、辻褄のあわない場面は結構あって、低評価に結びついてしまったのかも。
キット♤ 物語はわりとシンプル。ロイの父親クリフォード(トミー・リー・ジョーンズ)は伝説の宇宙飛行士で、16年前に地球外生命体を探査するために宇宙船で出かけたきり消息不明になっていた。それが海王星あたりで生きていて、地球に悪影響を及ぼす何か(これが何なのかようわからんけど)に関わっているらしいという情報が上層部からもたらされる。その調査のためロイは宇宙船に乗り込み、月と火星のステーション経由で海王星へと向かう。その過程で、略奪者とのカーチェイスや漂流船の救助などのエピソードが組み込まれる。
アイラ♡ もっとも娯楽性の強い部分。月へ行くまでのルートはすでに商業ベースで確立していて、現代人が旅客機に乗る感覚で人々は地球との間を行き来している。この場面はヴァージンがスポンサーみたいね。そして月にはすでに強盗団みたいなのが住み着いている・・・。
キット♤ ロイが所属する軍は、彼に火星から父親へ説得のメッセージを送らせるが、実はこれは形式的なものに過ぎず、本当は核兵器でクリフォードを排除しようとしていたということがわかってくる。普段なら冷静なロイは感情的になってしまい、任務から外されるが勝手に宇宙船に乗り込んで父親と対峙するために海王星へと向かうという筋書き。
アイラ♡ 海王星への旅も壮大な宇宙空間を背景にしていて、映像的になかなか良い感じ。ただ、父親が関わっていた計画や彼の失踪の理由がどうもよくわからなくて、私自身完全燃焼できてない。
キット♤ うん。優秀なはずの父クリフォードが、地球から数カ月で行ける海王星あたりで16年も何をしていたのか、そして今になってなぜ地球に害をなすようになったのかの謎が解明されないのは消化不良として残るけど、全体としては面白かったんと違うかな。突き詰めれば、これはSFである必要も、宇宙が舞台である必要もない話。時代を中世あたりにして、父親が世界の果てへ探検に行き消息不明になった・・・みたいな設定でも、概ね同じような筋書きのドラマは作れそう。ただ、宇宙空間というのは、周辺をバッサリ取り去った環境に主人公一人だけを置くというシンプルな舞台設定が可能なので、試みとしては面白いと思う。
アイラ♡ そうよね。これは父と対峙する息子の物語。その点で主演のブラッド・ピットについて。ロイ自身はアクの強い人物ではないから、彼でなくてもいろんな人が演じられたとは思うけど、自身のプロデュース作品で、これまでとは大きく異る役柄を演じてみたいと思うだけの魅力がやっぱりあったんでしょうね。
キット♤ ブラッド・ピットは、どちらかというとカッコつけたような役が多くて、内面的な感情を演技で表すというタイプの俳優のイメージではなかった。特に、最近はプロデューサー志向なのか、出演するのも軽めの役が多かったように思う。それが、この映画では打って変わって性格俳優みたいに変身。映画の中でロイが沈着冷静でロボットのような性格から感情を持って人間的になっていくところとどこか重なる。
予告編
スタッフ
監督 | ジェームズ・グレイ |
脚本 | ジェームズ・グレイ |
イーサン・グロス |
キャスト
ブラッド・ピット | ロイ・マクブライド |
トミー・リー・ジョーンズ | クリフォード・マクブライド |
ルース・ネッガ | ヘレン・ラントス |
リブ・タイラー | イヴ |
ドナルド・サザーランド | トム・ブルーイット大佐 |