おすすめ度
キット ♤ 2.5 ★★☆
アイラ ♡ 3.0 ★★★
『秘密と嘘』や『ヴェラ・ドレイク』の名匠マイク・リー監督が、19世紀初頭のイギリスで起きた“ピータールーの虐殺”事件を題材に、そこで起きたことの経緯を丹念に描く。1819年、ナポレオン戦争後でイギリスは困窮し、人々は貧困にあえいでいた。マンチェスターでは政治的改革を求める民衆6万人がセント・ピーターズ・フィールド広場に集まったが、鎮圧に向かった政府の騎馬隊が群衆の中へ突入。多くの死傷者を出してしまう。イギリス近代史に残る事件の全貌を、リー監督が自ら執筆した脚本をもとにリアルに描き出す。
言いたい放題
アイラ♡ これといった主人公を置かず、事件に関わることになるさまざまな人々を群像として扱い、それらが描く1本1本の線が事件現場となるピーターズ広場へと向かっていき、やがて惨劇へとつながる・・・という構造がユニークやね。
キット♤ 1819年、ナポレオン戦争後に経済的に疲弊した国民が、マンチェスターのセント・ピーターズ・フィールドで行われた選挙法改正を求める集会に対し、治安判事の指示にしたがって鎮圧に向かった騎馬隊が突入し18人の死者と多数の負傷者を出した弾圧事件を映画化したもの。ナポレオン戦争でのウォータールーの戦い(ワーテルローの戦い)になぞらえてピータールーと呼ばれるようになったという。
アイラ♡ 暮らし向きを少しでもよくするため、地元から議員を出そうと動く一般市民たちから、彼らを見下し不穏な動きがあればすぐ捻り潰す治安判事たちまで、いろんな立場の人が出てきて、とにかく常に誰かが議論をしている。市民の中にもさまざまに思惑の違いがあったりもする。長尺だしセリフも多いのだけど、それほどしんどくはない。そしてすべての駒が揃った終盤、ヘンリー・ハントなる雄弁家の演説を聞こうと、女子どもまでがすっかり正装して広場へと向かう。判事たちは騒乱罪を適用して彼を逮捕させ、そして半ばお祭り気分で集まっていた何万という民衆は騎馬隊に蹂躙される・・・。いくつもの細い線ばかりを描き、これといった山場も作らずに来たものが、すべてが広場へと流れ込んだとたん一気に修羅場を迎えるという手際がなかなかよいと思ったわ。
キット♤ 登場人物は、有名な弁士ヘンリー・ハント、彼を集会に呼ぶマンチェスター愛国連合の面々、集会で名を上げようとしている政治ゴロのような連中、報道陣、弾圧する側の治安判事たち、その手先となる騎兵隊や自警団たち。主人公が誰なのか分からないままこれらの面々がそれぞれの動きをしていくわけやけど、筋の通ったストーリーがあるわけでなく、雑多な話の寄せ集めた感じ。
アイラ♡ 誰の視点かということをあえて見せない作品なんやと思う。限りなく客観的にして、そこに関わるさまざまな人々の役割の違いをなんとなく見せていく。唯一、冒頭から出てくるワーテルローからの生き残りであるラッパ兵が、この広場でいかにも無残に命を落とす。ここがキモではあるね。
キット♤ 史実に基づく映画は勝手に事実を変えることができないので盛り上がりに欠けたりすることがままある。強いていえば、本作では集会に参加するある家族にフォーカスすることで民衆側からの視点を与えているけど、それほど上手く行っているようには思えなかったな。
アイラ♡ そこを狙ってるのだろうと思う。ひとつわかるのは、実はどの当事者もかなり適当な態度であの広場に集まっていたということじゃないかな。騎馬隊が動き出したときも、決して暴動が起きていたわけじゃない。鎮圧に動き出すきっかけはなんともうやむやで、期待を持ってやってきた6万もの人は、何が起きたかもわからないまま蹴散らされてしまう。誰が悪かったのだろうかという問いかけを感じずにはいられなかった。
キット♤ うん、集会を開く側、それを弾圧する側、双方ともけっこうええかげんやったという事がオチなんかな。イギリス人はどういう感想を抱くんやろうか。当時の服装や生活風俗はしっかり再現されていたと思う。
アイラ♡ いい作品やと思う。こうした歴史があったということを知る意義もあった。ただ議論や演説が多すぎて消化できなかったので、ちょっとポイント低めです。
予告編
スタッフ
監督 | マイク・リー |
脚本 | マイク・リー |
キャスト
ロリー・キニア | ヘンリー・ハント |
マキシン・ピーク | ネリー |
デビッド・ムースト | ジョセフ |
ピアース・ウイグリー | ジョシュア |