レビュー

ショコラ ~君がいて、僕がいる~(Chocolat)

投稿日:2017年2月19日 更新日:

おすすめ度

「Chocolat」のポスターの写真

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 4.0 ★★★★

19世紀末のフランス。田舎の小さなサーカスで出会い、コンビを組んで大いに人気を博した実在の芸人の物語。草創期の映画作家リュミエール兄弟が実写フィルムに残した2人は、フランス初の黒人芸人ショコラと、いまもその名が語り継がれるという道化師フティット。やがてパリの名門サーカスの専属となるほどの名声を手にするが、立ちはだかる人種偏見の壁にショコラは際限なくギャンブルに溺れていく・・・。『最強のふたり』で黒人では初めてセザール賞最優秀主演男優賞を受賞したオマール・シーと、チャールズ・チャップリンの実孫ジェームス・ティエレが組む。

 

言いたい放題

キット♤ ショコラ役のオマール・シーは、あまり期待せずに観た『最強のふたり』が最初やったけど、見た目に反してセリフ回しが軽妙で意外にやるやんという印象やった。もともとTVのコメディアンというから、今回の役にもぴったりハマってる。いまや『X-MEN』や『ジュラシック・ワールド』『インフェルノ』などハリウッドものでもよぉ見かけるようになったな。

アイラ♡ 対するジェームス・ティエレはチャーリー・チャップリンの孫なんやてね。両親はシルク・ドゥ・ソレイユなんかにつながっていく現代的な“ヌーヴォーシルク”を立ち上げた人たちで、彼自身4歳でサーカスの初舞台を踏んでいるそうやから、こちらもまた絶妙の配役。

♤ 白塗りメイクを落とせば渋いおっさんやのに、腹ばいになって腹筋だけでぴょこんぴょこん前進する芸とか、アスリート並みの動きにはびっくりしたな。アフリカに植民地が多くて移民に寛容だったフランスは、いま総人口の2割がアフリカ系やねんて。でもこれは100年以上前の話で、ショコラも場末のサーカスで見世物みたいにされていた。そこへ職を求めてやってきたのが、かつては名声を博したものの時代に取り残されて落ち目となっていたフティット。偶然見かけたショコラを相方にしたところから快進撃が始まっていく。

♡ ・・・と滑り出しは快調なんやけど、ショコラは常に抑制がきかない。稼げるようになればギャンブルにのめり込み、浪費で自己をひけらかさずにおれない。自信過剰で稽古嫌い。成功すると傲慢になって転落するってよくあるパターンではあるけれど、ショコラの場合、笑われ蔑まれることへの痛みが常に背後に見え隠れするんよね。芸への自信が大きいからこそ、その痛みも大きいのかもしれない。

♤ 凋落は自業自得とはいえ、彼の場合は見世物として人間扱いされていなかったところからスタートしてる。成功しても周りから白人と同様には接してもらえないという拭えないハンディキャップがあるからちょっと同情してしまう。芸人として成功することで自我に目覚め、蹴られたり張り飛ばされたりする役割を嫌うようになったショコラは、役者をめざしてシェークスピア劇のオセロ役に挑戦する。その向上心はええとして、現状を受け入れて無茶さえしなければ幸せやったかもと思うと複雑な気分。

♡ オマール・シーの演技力のすごさやと思うんやけど、自らの芸や演技が否定されたと察した刹那の絶望感が瞬時に目に宿るというか、大きく見開いた両目が一切の光をなくすときがあるねん。空気が停止して絶望だけがわきあがる感じ。まじで、彼の『オセロ』を観てみたいと思ったわ。

♤ 対するフィティットは、複雑な思いを抱えながらもショコラと比較的フェアに付き合い、最後まで友情も続いた。ギャラは折半じゃなかったみたいやけど、2人はまぁ師弟関係みたいなもんやしな。

♡ 稽古嫌いのショコラと、芸を磨くことを怠らないフティットという対比もあるね。助言にはまるで従わず、ときに手がつけられないショコラへの苦々しい思いがしばしばにじみ出るけど、ジェームス・ティエレの演技や表情には常に抑制が効いていて、ときどき祖父のチャップリンの哀愁が漂う。ゲイであることを暗示するような場面もあって、2人それぞれに「陰」の部分を抱えつつ華やかなステージで「陽」を演じるという対比設定もいいよね。

♤ 英語版と日本版の劇場ポスターを見比べると、日本版は2人支え合って立っているのに、英語版は喝采を浴びるショコラを前面に配して、ピエロメイクで悲しげにショコラを見るフティットが背後に小さく置かれてる。このほうが物語上の2人の関係と心理をよくあらわしてると思うな。

♡ エンドロールにリュミエール兄弟が撮影した実写フィルムが流れるけど、実物のショコラはもっと小柄やってんね。しかしこのサブタイトル、関西人はチャーリー浜さんを思い出すしかなくて、ほんまにこけそうになるわ。

 

予告編

 

スタッフ

監督 ロシュディ・ゼム
脚本 シリル・ジェリー

 

キャスト

オマール・シー ショコラ(ラファエル・パディーヤ)
ジェームス・ティエレ ジョルジュ・フティット
クロチルド・エム マリー・グリマルディ
オリビエ・グルメ ジョゼフ・オレール
フレデリック・ピエロ デルヴォー

レクタングル336

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