おすすめ度
キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.0 ★★★
交通事故で将来を絶望視されながら奇跡のカムバックを果たす実在のプロボクサー ビニー・パジェンサと、彼を支える人々の物語。世界タイトルを獲得して前途洋々だったはずのビニーを自動車事故が襲う。復帰は到底不可能と思われたが、ビニーはトレーナーのケビンのもと壮絶なトレーニングを重ね、王座奪還をめざす。『セッション』で渾身の演技とドラミングの技術をみせたマイルズ・テラー主演。かつてマイク・タイソンのトレーナーでもあったケビン・ルーニー役にアーロン・エッカート。『マネー・ゲーム』のベン・ヤンガーが監督・脚本。製作総指揮にマーティン・スコセッシ。
言いたい放題
キット♤ スポーツもの映画には、いったんは挫折した主人公が一念発起してトレーニングを重ね、無謀に思える挑戦で勝利を収めるというパターンが多い。本作もその形式を踏襲してはいるが、実話がベースなのが違う。
アイラ♡ フィクションでない分、ドラマチックに描くにも一定の限界があるから、交通事故による怪我からの復活というリアリティをどう描くかが勝負になってくるかな。
♤ 挫折からの再起と再びの成功、そしてまた転落するという筋書きはミュージシャンものにもよくあるけど、ほとんどは麻薬か酒が絡んでる。けどスポーツの中でも特にストイックでなければやっていけないボクサーは薬や酒をやらない分、話はシンプルになる。本作の主人公ビニーも、ギャンブル癖はあるがそれ以外は総じて健康的。
♡ ケレン味の強いビニーの戦いっぽりはなかなか面白く描かれてるし、自信過剰な思い上がり野郎が多いのは、ボクシング映画ではまぁお約束やしね。イタリア系で家族はみな信心深くて、貧しいながらも健全な絆に結ばれた家庭があるという設定はどこか和むものがあるわね。
♤ ビニー・パジェンサ役を演っているのは『セッション』で初々しいドラマー役だったマイルズ・テラー。それが本作ではすっかりボクサーの体格になり、顔つきまで精悍になっていたのでびっくりした。交通事故で骨折した首を固定するための仰々しい金具を装着した不自由な様子から、その状態でのトレーニング、そしてボクシングの試合の場面まで本人に成り切っている感じがした。
♡ 頭蓋骨に穴を開けて金具を固定するという治療は痛々しくて、これでよく復帰を志すよねぇ。考えるだけで痛い痛い~。
♤ トレーナー役のアーロン・エッカートは、10年前の『ダークナイト』でハンサムな市長役。最近は『ハドソン川の奇跡』の副操縦士役があるけど、本作ではぱっとみてもまったく気づかないほどの肉体改造ぶり。
♡ 『ブラック・ダリア』でも正当な二枚目役やっただけに、お腹ぽっこり、頭は禿げ上がってもう唖然。10kg増やして頭も剃って臨んだそうやけど、すぐ後に別作品の撮影が控えていて、急いで身体を絞ったのやて。身体にも悪いことやけど、そうして役作りにのめり込めることを愉しんでるみたいなことを言うてるね。
♤ あと、脇役では父親役のキアラン・ハインズが良かった。映画の冒頭、トレーナーやマネージャーに対しても高圧的で、息子を金づるとみているいやな父親という雰囲気やったけど、事故の後は息子を気遣う以上に弱気になっていくところを好演していた。
♡ エンドロールは、実話もののお約束というか、実際のパジェンザの映像が流れるので、本物とはあんまり似てないなぁとは思ったけど、インタビューでの喋り方なんかけっこう頑張って似せてるのよね。マイルズ・テラーは強い個性を売りにする俳優ではないし、まだキャリアも浅いけど、素材としてはこれからが楽しみよね。
♤ 事実に基いているのでストーリーに大きな違和感を感じるところはないが、多少は脚色されてるんやろな。特に感じの悪い親子のマネージャーなんて、試合を組むところではいとも簡単にタイトルマッチの話を取ってくるし。
♡ それより私は、試合の場面をもう少し盛り上げてほしかったかな。復帰戦は僅差の判定勝ちになるわけやけど、ビニーがすごく頑張ったという印象が薄くて、あまり有利な感じがしなくてちょっと残念やった。
予告編
スタッフ
監督 | ベン・ヤンガー |
脚本 | ベン・ヤンガー |
キャスト
マイルズ・テラー | ビニー・パジェンサ |
アーロン・エッカート | ケビン・ルーニー |
ケイティ・セーガル | ルイーズ・パジェンサ |
キアラン・ハインズ | アンジェロ・パジェンサ |
テッド・レビン | ルー・デュバ |