レビュー

未来を花束にして(Suffragette)

投稿日:2017年2月18日 更新日:

おすすめ度

「Suffragette」のポスターの写真

キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 2.5 ★★☆

1910年代のイギリスで参政権を求めた女性たちを描いた史実に基づく物語。1912年のロンドン。24歳のモードは洗濯工場で過酷な労働を強いられながら、同僚の夫と幼い息子の3人で暮らしていた。ひょんなことから女性参政権運動活動家の友人に代わって公聴会で証言し、「今とは異なる生き方があるのでは?」という疑問を持ったことから参政権運動に関わっていくように。女性の政治活動を苦々しく思う男性も多い時代。家から追い出され、愛する息子とも引き離されたモードは、ますます活動にのめり込んでいく・・・。

 

言いたい放題

キット♤ まずこの邦題はよぉないなぁ。

アイラ♡ “Suffragette(婦人参政権論者)”はデビッド・ボウイ好きでもなければ普通は誰も知らん英語やし、配給会社も相当困ったことやろね(笑)

♤ 洗濯工場で過酷な重労働を強いられながら、女性に参政権がない現状に特に問題意識を持たなかった主人公が、次第に男女の平等に目覚めて活動家となっていく話なので、適当な日本語がなければ“サフラゲット”のままでよかったんとちゃうかな。けど、映画自体は必要以上に説明的になることもなくテンポよくまとまってたし、サラ・ガブロン初監督作としてはなかなかしっかりした映画やなぁと思いながら観た。

♡ 私はほとんど入り込めなかってん。当たり前に選挙権が与えられていて、それを行使してきてもいて、でもそのことの有り難さや値打ちを実感したり信じたりできない時代におるからかなぁ。当時の工場労働の過酷さはよく伝わったけど、活動家の中には裕福な層もいたし、なぜ彼女たちが階層を超えてああまで参政権を渇望したのかというあたりをもう少し書き込んでくれたら、共感が深まったように思うのやけど・・・。

♤ それはそうやねんけど、個々の背景までを2時間の枠に入れようとするとこの映画のまとまりが崩れてしまうのとちゃうかな。

♡ やりようはあったと思うよ。いうたら、彼女たちは爆弾テロ犯やん。そうまでしなければ、世論や政治家を振り向かせられないからだという。でもメリル・ストリープ演じる理論的指導者に対して、末端の活動家たちはその盲信的支持者ともいえて、最後の衝撃的な行動も現代の自爆テロと変わらないと考えると、観客として彼女たちの行動を心情的に応援できなくて、かなり悩みながら観てたんよ。史実だからといっても、作品を貫く主張の軸が弱いなぁと感じた。

♤ ぼくの見かたは違ってて、爆弾は使ってたけど人への危害は避けようという気持ちはあったから、昨今の無差別テロとはちょっと違うんやないか。ラストの行動も、テロというよりはかつて日本や他の国でもあった抗議の焼身自殺に近いもんと思う。その意味で、ぼくはこの映画自体には好感もってるねんけど、日本の配給会社には文句ある。日本版のポスターは、オリジナル版の凄みや強さが消されて優しい感じになってるし、話と関係のない花束まで入れてる。硬派というほど硬い映画ではないけど、興行的にソフトに見せたいという意図なのか、ここは気分悪いとこやな。

♡ 「こういう人たちが今の私たちに花束を送ってくれたのです」みたいな話ではないはず。オリジナルポスターの表情には強い意志と怒りがにじみ出てるのに、ここを綺麗ごとにしてしまってはあかんよね。けど、映像はほんまに丁寧に作り込まれてた。100年前のロンドンの下町の様子とか2階建ての乗合自動車とか、あと洗濯工場のセットなんかにもすごく手をかけてたし。

♤ 演技陣では、主演のキャリー・マリガンが、平凡な労働者から家庭を失っても活動に身を投じていく過程で表情が次第に変わっていくところなどええ感じやった。初めて見る女優かと思ったら、ここ数年で観た映画では『マイ・ブラザー』『ウォール・ストリート』『華麗なるギャツビー』『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』にも出ていたことが判明。う~ん、顔が覚えられん。

♡ それはいつものことやん(笑) 今回はほとんどすっぴんやったしね。彼女の新鮮な愛らしさはよかったなぁ。

♤ 爆弾をせっせと作る過激な活動家役のヘレナ・ボナム=カーターは50歳とは思えぬ若々しさと広いデコで相変わらずええ味出してる。大御所のメリル・ストリープはゲスト出演に近い感じ。ドナルド・トランプを激昂させて「過大評価された女優だ」と言わせるくらいの人なので、本人はこういう役に出たかったのかも。

♡ ヘレナ・ボナム=カーターの母方の曽祖父は、第一次世界大戦開戦時のイギリス首相ハーバート・ヘンリー・アスキスで、まさにあの女性活動家たちを取り締まった当事者だというのは面白い裏話。実際に国会議事堂内での撮影が許されたのも初めてらしいよ。

♤ 女性たちが主役なので男は脇役に回らざるを得ないけど、強硬な捜査をする警部役のブレンダン・グリーソンが拘置所での収監者への不当な扱いに憤るところなんかよかったな。気の弱そうな旦那役のベン・ウィショーは、周りに女房も管理できない男と見られたくなくて強がっているだけで、ほんまはええ人かなという気も。100年前は女性には辛い時代やったけど、男連中にもええ時代ではなかったのかなとふと思った。

 

予告編

 

スタッフ

監督 サラ・ガブロン
脚本 アビ・モーガン

 

キャスト

キャリー・マリガン モード・ワッツ
ヘレナ・ボナム・カーター イーディス・エリン
ブレンダン・グリーソン アーサー・スティード警部
アンヌ=マリー・ダフ バイオレット・ミラー
ベン・ウィショー サニー・ワッツ
メリル・ストリープ エメリン・パンクハースト

レクタングル336

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