レビュー

ノー・エスケープ 自由への国境(Desierto)

投稿日:2017年5月9日 更新日:

おすすめ度

ノー・エスケープのポスターキット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

『ゼロ・グラビティ』でアルフォンソ・キュアロン監督と共同脚本を手がけた息子ホナス・キュアロンの監督作品。豊かさを求め、危険を顧みずアメリカへの不法入国を試みるモイセスたち15人のメキシコ人。防爆とした砂漠が広がる米墨国境地域には、狂信的なまでに彼らの侵入を阻止しようとする男がいた。摂氏50度を超える炎天下、丸腰の彼らは決死の逃走を図るが・・・。主演は『バベル』のガエル・ガルシア・ベルナルと、TVドラマ『ウォーキング・デッド』のジェフリー・ディーン・モーガン。

 

言いたい放題

キット♤ メキシコからアメリカへと不法入国を試みる一団が、正体不明の殺人者に命を狙われるサバイバル・スリラー。宣伝文句はやたら「『ゼロ・グラビティ』のスタッフが・・・」の文言をクローズ・アップしてるけど、監督はアルフォンソ・キュアロンの息子のほう。父親は本作では製作として参加してる。

アイラ♡ 『ゼログラ』が成功したからね。あちらが特撮でのみ作られたといっていいのに対して、こちらはなんとまぁ低予算でお手軽な・・・というのが途中までの印象。岩と砂漠とサボテンばっかりの中をただぞろぞろ進むだけで、遠足みたいやなぁって思ったり。でも話が進むにつれて、だんだんスクリーンから目が離せなくなる。

♤ ストーリーは至ってシンプル。アメリカへの密入国を請け負った2人が15人のメキシコ人を乗せてトラックで国境をめざす~途中でトラックが故障~予定のルートを変更して徒歩で国境越え~突然遠距離からの狙撃~生き残った数人が逃げる~執拗な追跡でだんだん減っていく~必死の反撃~結末。全部バラしたった~。

♡ なにをするの!(# ゚Д゚)ノ けどたしかに、わりと早い段階で展開は読めてしまったよね。

♤ 最初にいきなりの大量殺戮があって、あとは着の身着のまま逃げる数人を強力な武器を持った殺人者が追うというスリリングな場面が続く。はらはらするけれど、顔ぶれをみれば誰が生き残りそうかはなんとなく想像できてしまう。反撃の方法もだいたい予想通りやったし。

♡ というとつまらない作品みたいに思われるかもしれないけど、この映画の妙味のひとつは、この緊迫感を最後まで引っ張っていくとこでしょうね。

♤ まず舞台がいい。平坦で隠れるところもない砂漠、ごつごつとした岩場、サボテンだらけの荒野など、思いのほかバリエーションに富んだ地形を逃亡・追跡の場として利用していること。そして最大の功績者は殺人者が連れている大型犬。その名のとおり“トラッカー(追跡者)”として優秀で、獲物の臭いを嗅ぎ分け、ルートを選んで追跡し、人間も倒せるくらいの凶暴さ。

♡ あれはこわいわ! 逃げる側のモイセスたちからみると、自分たちを襲撃してくるのはまったく正体不明の人物。射撃は異様なまでに上手く、凶暴な犬までいる。対するこちらは丸腰で、体力的に弱い者もいるという圧倒的不利がある。不気味な者に追い回される怖さは、スピルバーグの初期の名作『激突』にも通じる感覚やった。ただ大事なのは、一見サバイバルものという作りなだけに、単にエンターテインメント映画という期待でこれを観てしまうと完全に方向を見誤るという点やと思う。

♤ たしかに全編通して、なぜこの銃撃者がここまで不法入国者を目の敵にするのかは特に語られてない。国境警備に就いてるわけでもなく、いってみれば単なる殺人狂。

♡ このおっさんがどういう人物なのかはたぶんあまりどうでもいいことで、相当な危険を犯しても不法入国を試みる人々にのしかかるあらゆる脅威の象徴とみるのが適当かもしれないわね。それだけに、もっと狂気をたたえた俳優を起用してもよかったようにも思う。構想8年というから、企画段階ではドナルド・トランプの“万里の長城政策?”なんかなかったと思うけど、結果としてなんともタイムリーな公開になってしまったわよね。

♤ 主演の、ガエル・ガルシア・ベルナルはメキシコのトップ俳優。『モーターサイクル・ダイアリーズ』のチェ・ゲバラ役があるけど、国際的に評価されたイニャリトゥ監督の『バベル』では、酔っ払って車で国境を強行突破する若者を演じてたっていうのも面白い。追う側のジェフリー・ディーン・モーガンは『ウォーキング・デッド』などテレビドラマの出演のほうが多いみたいやな。本作では昼間からジャック・ダニエルをラッパ飲みするぐうたら親父かと思ったら、射撃の腕は抜群やし、素手で岩登りするし、逃げる標的を延々追いかけるタフな殺人者。

♡ 怖いわんちゃんとの相棒ぶりもよかったしね。警備の訓練を受けた3匹を使ってたらしいよ。

♤ 『ゼロ・グラビティ』では、宇宙空間に取り残されたサンドラ・ブロックが、地球のある地点との短時間の交信に成功する場面を、地球側から描いたショートムービーが公開されてたけど、これも、国境で不法入国者を待ち伏せするおっさん+犬の目線で1本短いのを作ったら面白いのにな。

♡ うまいと思ったのは、遠くに希望のようなものが見えているのに、本当にそこにたどり着けたかどうかわからないラスト。引きで見せる砂漠の夕景とそれを包む静寂、先が見えない絶望と寂寥感・・・、『ゼログラ』に通じるニュアンスを感じたわ。監督がメキシコ人であるということを踏まえるほど、これは国境を越える側から突きつけられた絶望的な事実として観るべきものと思う。

 

予告編

スタッフ

監督 ホナス・キュアロン
脚本 ホナス・キュアロン
マテオ・ガルシア

 

キャスト

監督 ホナス・キュアロン
脚本 ホナス・キュアロン
マテオ・ガルシア

 

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