レビュー

美女と野獣(Beauty and the Beast)

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「美女と野獣」のポスター

キット♤ 4.5 ★★★★☆
アイラ♡ 4.0 ★★★★

ディズニーのミュージカルアニメの名作『美女と野獣』(1991)の実写化版。主役のベルに『ハリー・ポッター』シリーズのエマ・ワトソン。監督は『シカゴ』や『ドリームガールズ』などミュージカル作品の多いビル・コンドン。音楽にはアニメ版『美女と野獣』とブロードウェイミュージカルの両方を手がけ、『リトル・マーメイド』『アラジン』『ポカホンタス』でのオスカー受賞を誇るアラン・メンケンが再度関わった。呪いで野獣の姿に変えられた王子は、魔女が残した1輪のバラの花びらがすべて散るまでに「真実の愛」を見つけなければ、永遠に人間に戻れなくなってしまう。やがて聡明で自らの価値観を信じて生きる町娘ベルが彼の前に現れ、2人は互いの想いに気づいていく・・・。王子役に『ダウントン・アビー』のダン・スティーブンス、傲慢なハンサム男ガストンに『ホビット』シリーズのルーク・エヴァンス。その他ユアン・マクレガーやイアン・マッケラン、エマ・トンプソンなどイギリスを代表するベテラン陣が花を添える。

 

 

言いたい放題

キット♤ オリジナルの物語は18世紀にフランスで出版されていて、その後も映画、バレエ、ミュージカル、歌舞伎にまでなっている。有名なのは1946年のジャン・コクトーによる映画化で、これは観てないのやけどストーリーは原作に近いらしい。けどやっぱり、世界的に有名になったのは1991年版のディズニーによるアニメ版で、1994年にブロードウェイで初演されたミュージカルも今回の実写版映画もこれを踏襲。主題曲はじめ、楽曲もほぼ同じものを使っている。

アイラ♡ 実写化といっても、魔女に姿を変えられた王子やお城の召使たちはCGアニメ。王子役のダン・スティーブンスは、高下駄みたいなのを履いたうえに肉襦袢を着て、モーションキャプチャーで体の動きや表情を撮るのに何度も同じシーンを演じることになって、それはそれは大変なことやってんて。

♤ 実写とCGアニメの合成は目新しいものではないけど、たとえばオープニングで村人が次々と歌をつないでいく場面なんか、古き良きブロードウェイミュージカルの雰囲気を強く残してとても楽しいし、CGで作られたキャラクターたちは、逆に舞台の制約から逃れて生き生きと動いてる。両方のいいとこどりでうまく作ってた印象やね。

♡ 当初は、ミュージカル仕立てにしないという選択もあったらしいのよ。でもこれでよかったと思う。後発の利を生かしてというのか、過去の名ミュージカル映画へのオマージュと思われるシーンもふんだんに盛り込んでたし。

♤ 城の中で燭台のルミエールたちがベルを歓迎する“Be Our Guest”の場面で、ポットの周りを塵払いが万華鏡のように回るシーンはエスター・ウィリアムズ主演の水中レビュー映画を連想させた。水たまりの中でルミエールが踊るシーンは『雨に唄えば』のジーン・ケリーそのものやし。

♡ ベルが広々とした丘の上に駆け上がるところは、カメラアングルまで『サウンド・オブ・ミュージック』そっくり。あと何かで読んだところでは、お父さんが城に迷い込んだときに目をとめる壁の燭台が、ジャン・コクトー版に出てくるのと同じ腕の形のデザインのものなんやそうよ。

♤ 魔法が解けてみて初めてわかるんやけど、俳優陣がなかなか豪華。人間に戻った王子には、TVの『ダウントン・アビー』シリーズで人気の出たダン・スティーブンス。燭台のルミエールにユアン・マクレガー。素顔での登場時間はわずかやし、メイクのせいで言われるまで彼とは気ぃつかんかったけど、軽妙な話術と“Be Our Guest”などの歌いっぷりで芸達者なところを見せつける。自惚れの強いガストン役のルーク・エヴァンスは、『ホビット』シリーズで弓の達人のお父ちゃんやってた人。本作では唯一の憎まれ役をきっちりとこなしている。元々ミュージカル出身なので歌も踊りも上手。

♡ 王子様のダン・スティーブンスは映画への出演は多くないようやけど、『ダウントン・アビー』のマシュー役がなかなか素敵で、今回は素顔出しのシーンが少なくて残念やけど、私には嬉しいサプライズやったわ。ベルが去った後でひとり切々と歌う“Evermore”は泣かせたわね。歌唱力もなかなかのものやし。ちなみにこれは本作のために書き下ろされた3曲のうちのひとつとのことやけど、ミュージカル曲としてはすでにクラシックとなった感のある主題曲はじめ、楽曲はどれもみな魅力的やね。

♤ エマ・ワトソンは、この映画への出演を決めた後に『ラ・ラ・ランド』の主演の打診を受けてそっちを断念。代わりに主役を獲得したエマ・ストーンがアカデミー主演女優賞を取ったので、エマ・ワトソンが賞を取りそこねたみたいにいわれてるようやけど、『ラ・ラ・ランド』もミュージカル映画やとすると、映画としての出来は『美女と野獣』のほうが数段ええと思う。今回のベルは知性的なキャラクターでもあるので、その点でもエマ・ワトソンははまり役。まだ若いし、これからが楽しみな女優やな。

♡ 脇役にも『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフだったイアン・マッケラン、『いつか晴れた日に』のエマ・トンプソン、『ソフィーの選択の』ケヴィン・クラインなど、イギリスのベテランたちを惜しげなく使ってて、なんたってみな楽しそうなのがいいわね。

♤ 主題歌の“Beauty and the Beast”は、主人公たちの踊る場面とフィナーレの2回歌われるけど、前者ではエマ・トンプソンのソロ、後者ではブロードウェイの大スターであるオードラ・マクドナルドが素晴らしい歌声を聴かせてくれる。あと、お城の家来に黒人が入っているのも今の映画らしい。

♡ そうなのよね。世界市場を相手にする企業にとってポリティカル・コレクトネスへの配慮は欠かせない。フランスのおとぎ話なのに、舞踏会にいろんな人種が混じってるのは不自然という声もあるようやけど、“見た目で人を判断するな”という映画のテーマに照らせばこういう演出もありでしょう。

♤ ただひとつ気になったのは、ガストンとともに城に攻め入った3人組が魔法のクローゼットに女装させられてしまい、1人が嬉しそうにするのやけど、フィナーレでこいつとガストンの腰巾着のル・フウと男同士でダンスさせるやろ。こういう描き方はLGBTの権利肯定とは言い難く、ちょっと失礼ちゃうかと思った。

♡ 女装でくねっ!と嬉しそうにさせる演出じたいがいまどき陳腐やしねぇ。あと、魔法のとけるのが魔女が設定したタイムリミットを超えてしまってるんやけど、それはまぁええか(笑)
ともあれ、賑やかなイントロに始まって、合唱と独唱の波状攻撃を経て、うっとりするパ・ド・ドゥ、そして華やかな大団円へという構成を踏襲した、やはりこれは王道のミュージカルだと思います~。

 

予告編

スタッフ

監督 ビル・コンドン
脚本 スティーブン・チョボウスキー
エバン・スピリオトポウロス
音楽 アラン・メンケン

 

キャスト

エマ・ワトソン ベル
ダン・スティーブンス 野獣
ケビン・クライン モーリス
ルーク・エバンス ガストン
ジョシュ・ギャッド ル・フウ
ユアン・マクレガー ルミエール
イアン・マッケラン コグスワース
エマ・トンプソン ポット夫人
ネイサン・マック チップ
オードラ・マクドナルド マダム・ド・ガルドローブ
ググ・バサ=ロー プリュメット
スタンリー・トゥッチ カデンツァ

 

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