おすすめ度
キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆
『きっと、うまくいく』などで日本でも人気のインド映画界のスーパースター、アーミル・カーン製作。主人公を支える音楽プロデューサー役としても出演する。歌手志望の14歳の少女インシアは、インド最大の音楽賞のステージで歌うことを夢見ているが、古い価値観の持ち主である父親からは猛反対されている。あるとき顔を隠して歌った動画をこっそりと動画サイトにアップしたところ、ネットを通じて大人気を博してしまう。やがて彼女は落ち目の大物プロデューサー、シャクティ・クマールと出会い、チャンスを掴むための行動を始める。インシアには『ダンガル きっと、つよくなる』のザイラー・ワシーム。
言いたい放題
キット♤ 『きっと、うまくいく』(2013)、『PK』(2016)、『ダンガル きっと、つよくなる』(2018」に続くアーミル・カーンの主演作。これらを通じて彼が演じてきたのは、誠実で優秀な大学生、イノセントな宇宙人、娘の英才教育に燃える頑固な元レスラー。それが本作では、チャラチャラしてアクの強い落ち目のミュージシャン兼プロデューサー。
アイラ♡ これまでとは全くタイプの違う役を楽しそうに演じてるのよね。アーミル・カーンは作品をとことん厳選して制作に関わそうなので、彼が絡んでいればまずハズレはない。今回もそう期待して観に行ったけど、前3作ほどのインパクトはなかったかな・・・。でも主人公の母親やボーイフレンドなど登場人物がみな心優しくて、気持ちよく観られる良作。多くのインド映画に通じるのが、こうして何か暖かいものが残るところやね。
キット♤ アーミル・カーンは、本作では主演をザイラー・ワシームに譲って脇役に。彼女は『ダンガル きっと、つよくなる』でアーミル・カーン演じる元アマチュアレスリングのチャンピオンだった父親に無理やりレスリングをやらされる娘を演じていた。
アイラ♡ 最近のインド映画には、古い価値観との軋轢をテーマにしたものが多いけど、本作もその流れにある。歌や作曲が得意で、歌手を夢見る少女インシア。権威主義で男尊女卑の観念が抜けない父親と、ただ従順に夫に尽くす母親という、どちらかというと古いタイプの両親のもとで育ってきた。一昔前ならそこで話は詰まるんやろけど、さすがIT王国のインド・・・ってほどでもないけど、なんとインシアは自作の曲を動画サイトに投稿。それが大変な視聴回数を稼ぎ出し、やがて出会う音楽プロデューサーの手によって世に出ていくという現代物語としての側面をあわせ持つ。アーミル・カーンが出てくる後半の起伏が非常に面白くて、女性関係にだらしないダメ人間だけど少女のために尽力する、ちょっとキモいおっさんを好演。さすが!
キット♤ 最近観たインド映画『あなたの名前を呼べたなら』でも、インドにおける女性の地位の低さがテーマのひとつになってたけど、本作でもインシアのDV親父の暴虐ぶりが描かれる。この父親、見た目はシュッとしているのでインシアやその母親に辛く当たるところの冷酷さが際立ってなかなかよかった。
アイラ♡ それに対して、無学で夫に従うばかりの母親をインシアはもどかしく思い、ちょっと馬鹿にもしている。それがあることから大きく変わっていく。本作はこの母と娘の関係、さらには祖母の存在を通じて、長らく蹂躙されてきた女性の人権という大切な隠しテーマをちらちらと見せていく。アーミル・カーンが気色悪く笑わせてくれるコメディではあるのやけど、変わりつつあるインドの現実と課題をしっかり語ってもいる。
キット♤ たいていのインド映画の例に漏れず、本作も、主人公が大ピンチを迎えるものの、ドンデン返しがあってハッピーエンドというパターン。それも、かなり追い詰められて「えっ、ここからひっくり返すのん?」というところから母親が頑張る。このインパクトのあるラストがインドでの歴代3位の興行成績につながっているのかもしれない。とはいえ、『きっと、うまくいく』で感じた新鮮な驚きみたいなものからはちょっと遠ざかっているような、一抹の寂しさを感じてしまうのは僕だけか?
アイラ♡ うん、いつもよりは少し弱めやったかもね。でもエンドロールでは彼のすごい歌と踊りが堪能できて、やっぱりインド映画はサービス精神に溢れてていいわね!
予告編
スタッフ
監督 | アドベイト・チャンダン |
脚本 | アドベイト・チャンダン |
キャスト
ザイラー・ワシーム | インシア |
メヘル・ビジュ | 母親 |
ラージ・アルジュン | 父親 |
アーミル・カーン | シャクティ・クマール |