レビュー

ハン・ソロ:スター・ウォーズ・ストーリー(Solo: A Star Wars Story)

投稿日:2018年7月15日 更新日:

おすすめ度

Solo A Star Wars Story

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』に続く『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ作品第2弾。ハリソン・フォードが演じたハン・ソロの若き日を描く。若き日のハン・ソロに扮するのは『ヘイル、シーザー!』で注目されたオルデン・エアエンライク。同じく若き日の悪友ランド・カルリジアンにはドナルド・グローバー。ハン・ソロの相棒となるチューバッカも登場する。監督は『ダ・ヴィンチ・コード』などのロン・ハワード。

 

言いたい放題

キット♤ 『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』に続く『スター・ウォーズ』シリーズからのスピンアウト作品。『ローグ・ワン』が思った以上にヒットしたので、ディズニー2匹めのドジョウを狙ったがアメリカでの興行成績がイマイチやという。

アイラ♡ 単発ものとしてみれば、随所にタイプの異なる見せ場を用意していて十二分に楽しめる。お金もかなりかけてるようやし。

♤ うん、全体の印象としては無難に作られた娯楽映画。最初から最後まで休む間もなくアクションシーンが続いて、それぞれがしっかり作られているので飽きない。前半の列車強盗のシーンはかなり手間をかけて撮っているようで、手抜きがないのは好感が持てる。

♡ “大列車強盗”という古典的テーマをSF化すると、なるほどこうなるのねという発想の巧みさは感じたわね。

♤ ただ、『スター・ウォーズ』のスピンオフ、しかもハン・ソロの若き日の話とわかって劇場に足を運ぶスター・ウォーズのファンにとっては、もやもやが残るところやろな。本作の注目ポイントは、本編では描かれなかった①ハンの生い立ち ②チューバッカとの出会い ③ランド・カルリシアンとの出会いとミレニアム・ファルコンの入手という3つやと思うけど、どれもさらりとしすぎで、もう少しなんとかならんかったのかという思いはある。逆に、これらの「売り」ポイント以外は、過去のスター・ウォーズ作品の本歌取りみたいなもので、類似点を見つけて楽しむことはできても、過去の遺産を食いつぶしているという見方もできる。その意味では、本作には後世の映画から参照されるような斬新な名場面はなかった。

♡ 「I have a good feeling about this(いい予感しかしないぜ)」とか「I hate you!」「I know」の掛け合いのセリフなども、古くからのファンをそれほど喜ばせるものでもないしね。斬新な名場面もないし、これは!という新キャラも出てこなかった。続編ありと予想させるエンディングではあるけど、わくわくしながら次を待ちたくなるほどでもなかったなぁ。それほど、やっぱり特に「エピソード4~6」は傑出してたってことでもあるわね。

♤ 時あたかもサッカーのワールドカップ開催のタイミング。日本代表は大会直前に監督の交代があったけど、本作も最初は『ファンタスティック・フォー』のジョシュ・トランクが監督に指名され、その後『LEGO ムービー』のフィル・ロード&クリス・ミラーに代わって撮影が始まったが、突然ベテランのロン・ハワードに交代。ほぼ撮影済だったシーンの7割を取り直したんやて。手堅いけど斬新さに欠けるロン・ハワード作品よりも、フィル・ロード&クリス・ミラーが作ろうとしていた映画を見てみたかった。

♡ とはいえ、オールデン・エアエンライク演じるハン・ソロは、なかなか魅力的ではあったわね。

♤ うん、悪くなかったと思う。ただストーリーやシナリオが少々おとなし過ぎとちゃうか?  ハン・ソロの魅力って、根は善人やけど同時にならず者で既存の体制から逸脱した生き方をしてるとこやのに、この映画のハンは優等生でマイルド過ぎる。相方の女性にやり込められたときの間抜けっぽいところは良くできてるけど・・・。

♡ そうやね、もっとクセ者っぽく描いてほしかった。ランド・カルリシアンももっと悪っぽいほうがよかったなぁ~。チューイと盟友になっていく過程も、いくらでも描き込めたでしょうに。

(以下ネタバレ)
♤ キーラ役のエミリア・クラークもなかなか良かったけど、コレリアを脱出する前は普通の女の子だったのが、数年後には組織の副官で鳴らしていて、知識や判断力だけでなく格闘能力まで手に入れているというのはギャップが大きすぎ、まあええけど。彼女の出世作はファンタジードラマの『ゲーム・オブ・スローンズ』ということなので、機会があれば観てみたいな。

♡ ところで、さらにネタバレになってしまうけど、ラスト近くで驚きの人物(?)が出てくるの、これはどうなんやろ。時系列的におかしいのと違うかと思ってしまったけど。

♤ そこや~。最後に、キーラが組織のボスと連絡したときに出てきた相手がダース・モールやったのには仰天した。本作の時代設定は、スター・ウォーズ本編と並べれば「エピソード3.5」くらいのはず。ダース・モールは「エピソード1」でクワイ・ガン・ジンを倒したあと、若きオビ=ワンに胴体を両断されて死んだはず。生き返ってきたのかとしか考えられないので後で調べてみると、スター・ウォーズのアニメシリーズでは、ダース・モールは上半身だけ生き残った後、ダース・シディアス(パルパティーン)とは別れて、オビ=ワンへの復讐のために悪の結社を作っていた。スター・ウォーズの制作権がジョージ・ルーカスからディズニーに渡って、エピソード7以降が大きく変わってしまったりして、古き良き映画、アニメ、小説のスター・ウォーズの世界観が失われてしまうことを危惧する声はあるけど、かといって映画の本編で使っていないネタを突然出すのは反則やないかと釈然としない。

♡ そうしたものにこだわりのない人や、ダース・モールを初めて観る人には、続編への期待が生まれるのかもしれないけど、この唐突さはちょっといただけなかったね。

♤ アメリカでの興行成績が伸びないことで、ディズニーによるスター・ウォーズのスピンオフ計画は見直しが入るらしいけど、ランド・カルリシアン、オビ=ワン・ケノビ、ボバ・フェットなど魅力的なキャラはまだまだ沢山いてる。けど、言い換えればこれらはジョージ・ルーカズの遺産みたいなものなので、それらを浪費するだけじゃなく、さらに光り輝かせるような映画にしないと観客は納得せんやろな。

 

予告編

スタッフ

監督 ロン・ハワード
脚本 ジョナサン・カスダン
ローレンス・カスダン

キャスト

オールデン・エアエンライク ハン・ソロ
ウッディ・ハレルソン ドバイアス・ベケット
エミリア・クラーク キーラ
ドナルド・グローバー ランド・カルリジアン
タンディ・ニュートン ヴァル
フィービー・ウォーラー=ブリッジ L3-37
ヨーナス・スオタモ チューバッカ
ポール・ベタニー ドライデン・ヴォス
ジョン・ファブロー リオ(声)
エリン・ケリーマン エンフィス・ネスト
リンダ・ハント レディ・プロキシマ(声)
ワーウィック・デイビス ウィーゼル

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