おすすめ度
キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 4.0 ★★★★
ブラック・ミュージックの故郷ともいうべき米メンフィスを舞台とする音楽ドキュメンタリー。ブルース、ソウル、R&Bなどの分野に名だたるミュージシャンを輩出してきたテネシー州メンフィスの地にレジェンドたちを呼び戻し、ジャンルや人種、世代を超えた驚異のレコーディングセッションを行うという企画。巨匠たちがジャンルの異なる若手ミュージシャンたちに、技術だけでなくメンフィスの魂や誇りを受け継いでいく貴重なセッションはまさに見もの。公民権運動をめぐる当時の社会のうねりやSTAXレコードの盛衰の様子も盛り込んだ珠玉のドキュメンタリー。
言いたい放題
アイラ♡ 洋楽好きにとって、メンフィスはプレスリーの故郷であるという以上にブラック・ミュージック、それも泥臭いソウルやR&Bの街であり、同分野の名門として一時代を築いたSTAXレーベルの本拠地。その黄金期を築いたアーティストたちが続々と登場してくるからのっけから大興奮やったわ。
♤ ブッカー・T・ジョーンズ、メイビス・ステイプルズ、ボビー・ラッシュ、ウィリアム・ベル、チャールズ・スキップ・ピッツ、チャーリー・マッスルホワイト、オーティス・クレイ、ボビー・ブルー・ブランドなど、ここから一流ミュージシャンとなっていったレジェンドたちがスタジオに次々とやってきて、まるで同窓会のような雰囲気。
♡ 共演する若手は、スヌープ・ドッグ、ヨー・ガッティ、フレイザー・ボーイ、リル・P・ナットなど。いまの人たちのことはあまり知らないけど、いかにもヒップホップな風体の兄ちゃんたちが巨匠たちの前ではみな礼儀正しくて、受け答えにも必ず ”Yes, Sir” とかってリスペクトの意を示してるのがなんか面白かったね。
♤ レコーディングの場面でも大御所たちは貫禄で、わずかのきっかけさえつかめば、あとはそれぞれのスタイルで歌ったり演奏したりしている。さすが百戦錬磨やな。かたやラッパーたちはスマホを片手に歌ったりして、対照的で面白い。
♡ ラップは即興詩の世界なので、待ち時間の間にリーガルパッドか何かに歌詞を書き付けて、それを見ながらマイクに向かったり、スマホに入れた歌詞を追いながら歌ったりするのよね。ラッパーとの共演と知らされて「ラップ?」なんて聞き返す巨匠もいて面白かったけど、いざ本番となればすごい演奏が実現する。素晴らしい企画やわ。
♤ レコーディング風景と並行して、メンフィスで黒人音楽の拠点となっていたSTAXレコードについて、共同経営者だったアル・ベルが語っていく。ある時期はモータウンに対抗するほど栄えたのに、大手レコード会社の競争に巻き込まれて倒産の憂き目にあってしまう。
♡ そう。同じブラック・ミュージックでも、白人受けを志向したモータウンが栄えた80年代にはSTAXレーベルは存在してなかったのよね。でもいま、当時のスタジオは「スタックス・アメリカン・ソウル・ミュージック博物館」となっていて、ミュージック・アカデミーとして若手ミュージシャンを育成してもいる。映画の中でもここの学生たちとレジェンドとの共演シーンがあるけど、すごい子たちがたしかに育ってるのはほんとに嬉しい。
♤ 公民権運動の中でのSTAXの位置づけが語られたのも興味深かったな。キング師暗殺後に起きた黒人住民の暴動に対して、彼らが鎮圧の役割を果たした話とか。
♡ STAXには白人ミュージシャンもたくさん関わっていて、人種問題がピークにあった60~70年代でも、優れた音楽制作のために同社が果たしたその役割はきわめて大きい。学生たちはじめ、当時を知らない若者にSTAXのレガシーを伝えるというこの企画が良い結果に結びついてほしいと願うな。ボビー・ブルー・ブランドがリル・P・ナットに発声を教授する場面があるんだけど、おじいちゃんとひ孫のような年齢差でも、そこには確かにプロの教えがあって目頭が熱くなってしまった・・・。
♤ 年老いたレジェンドたちは皆かっこいい。でも残念ながら、元気な姿を見せていたチャールズ・スキップ・ピッツとボビー・ブルー・ブランドは本国での公開時には既に亡くなっていた。その後オーティス・クレイも亡くなっていて寂しさを感じる。生きてるうちに映画になって良かったということやな。
予告編
スタッフ
監督 | マーティン・ショア |
キャスト
テレンス・ハワード | 本人 |
メイビス・ステイプルズ | 本人 |
ブッカー・T・ジョーンズ | 本人 |
ホッジズ・ブラザーズ | 本人 |
ボビー・ラッシュ | 本人 |
ウィリアム・ベル | 本人 |
チャールズ・スキップ・ピッツ | 本人 |
チャーリー・マッスルホワイト | 本人 |
オーティス・クレイ | 本人 |
ボビー・ブルー・ブランド | 本人 |
ヒューバート・サムリン | 本人 |
アル・ベル | 本人 |
スヌープ・ドッグ | 本人 |
ヨー・ガッティ | 本人 |
フレイザー・ボーイ | 本人 |
リル・P・ナット | 本人 |