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誰もがそれを知っている(Todos lo saben)

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Todos lo saben

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

『別離』『セールスマン』でアカデミー外国語映画賞を受賞し、カンヌやベルリンなどの国際映画祭でも高い評価を受け続けているイランのアスガー・ファルハディ監督が、スペインの片田舎の町を舞台に、ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムを主演に迎えて撮ったミステリー。妹の結婚式のため、アルゼンチンから子どもたちを連れて帰郷したラウラ。ワイン農園を経営する幼なじみのパコとも再開して開かれる婚礼の宴のなか、娘のイレーネが失踪する。やがて何者かからイレーネと引き換えに身代金を要求するメールが届く。警察には知らせず自分たちで解決を図ろうと皆が奔走するうち、家族の中にも疑心暗鬼が芽生えていく。そしてラウラはパコにある秘密を打ち明けるのだったが・・・。2018年・第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

 

言いたい放題

キット♤ 監督はイランのアスガー・ファルハディ、主演は実生活でも夫婦のペネロペ・クルスとハビエル・バルデム。であれば観ないわけにはいかない。カテゴリーとしては、誘拐が絡むサスペンスもの。犯人がまったく分からない状態でかなり引っ張るので、観る側はその気がなくても、いろいろと推理してしまう。だが、最後に犯人が分かるところにはあまりインパクトはない。冒頭に犯人推理のための伏線が仕込んではあって、推理ものの体裁はとってるけど、スペイン農村部での地主一家とそれをとりまくコミュニティの人間ドラマと見たほうがしっくりする。

アイラ♡ 極上サスペンスという触れ込みに惹かれて観てしまうと、正直期待はずれ。物語はテレビの2時間ドラマ並みに凡庸やし、犯人の正体や犯行動機などにも特に新味はない。ところが、このペネロペ・クルスとハビエル・バルデムという色気たっぷりの2人が主人公で、すっきりとは終わらない人間ドラマの世界的名手であるファルハディ監督の手にかかると、さすが飽かずに観せてしまうものに!

♤ 冒頭、結婚してアルゼンチンに移住したラウラ(ペネロペ・クルス)が妹の結婚式に出るために里帰りするところでガツンとやられる。何しろ、とにかく矢継ぎ早に登場人物が現れて、とてもじゃないけど誰が誰なのか認識できない。

♡ 妹の結婚式ってことは分かってるんやけど、若い女性はなんかみな顔が似てるし、おじさん連中もなかなか識別できないし・・・。

♤ これはまずいかなと思いながら観ていくと、だんだん主要登場人物が絞られてきて、なんとか話に付いていけるようになって一安心(笑)。

♡ 監督は、誘拐事件が起きるまでをまずとても丹念に描いていく。田舎の結婚披露宴の華やかなこと。イラン人である監督が、スペインを代表する俳優を起用してスペインらしさを描きたかったのやろうなと想像。そして娘ラウラの失踪が発覚し、事故なのか事件なのか何の端緒も掴めないまま皆が焦りを募らせていく場面にも時間をかける。引っ張りすぎでは・・・?と思いはじめるころ、これは一人ひとりが長年抱え込み、いままで言えずにいた怨嗟の気持ちをあぶり出す時間なんだということが並行してわかってくる。

♤ 平和な大家族のように見えていた一家とその関係者なのに、多額の身代金の要求をきっかけに、さまざまな怨念みたいなのがボロボロと出てくる。ここで主体的に動くのがラウラの元恋人のパコ(ハビエル・バルデム)。地主の次女のラウラと小作人のパコがかつては恋仲だったというのは周知の事実やけど、さらにラウラにはパコの知らない秘密があった。そのことは当のラウラと夫のアレハンドロしか知らないはずだったのに、村人は勝手に想像して、実は「誰もがそれを知っていた」状態だった。なのにパコだけが知らないという奇妙な状況となり、平和だったはずの人たちの生活が崩壊していく。

♡ 閉鎖的な社会で、「あの家族はみんなグル」「“秘密”を知っている身近な人が犯人」みたいな会話が交わされていく怖さったらね・・・。

♤ ストーリーとしては悪くないと思うんやけど、パコが全てを投げ売ってしまうところの感覚がいまいちよう分からん。パコの嫁さんのベアが気の毒やん。映画しての完成度については今ひとつという気もするが、ペレロペ・クルスが出てるからまあ、ええやろ。ハビエル・バルデムはどうでもええけど、まあええやろ。

♡ そんなことないでしょ~。もとはといえば、パコはラウラの家の使用人の子。それがラウラ側の事情とはいえ、ラウラの父には「うちの土地を安く手に入れたくせに偉そうにしやがって」みたいな目でみられ、嫁さんには愛想を尽かされ、財産をなくし・・・こんな可愛そうなことってあるかしら。それほどラウラが大事やったんやね。前半の陽気な空気と一変する後半は、まさに彼が耐え忍ぶ苦悩一色に染められる。ハビエル・バルデムあってこその作品かと。

♤ 2人の共演としては、ウッディ・アレンの『それでも恋するバルセロナ』。ハビエル・バルデムの元嫁役のペレロペ・クルスのぶっ飛び方に比べたら、今作では彼女の魅力が十分引き出されてなかったのが心残りではあるな。

♡あと、ラウラの夫であるアルゼンチン人のアレハンドロ役に『瞳の奥の秘密』や『人生スイッチ』のリカルド・ダリン。本作ではやや控えめな登場やったけど、実はアレハンドロの過去の行状が事件の伏線を成してもいたわけで、人生何がきっかけとなって何が起こるやわかりませんねぇ。

 

予告編

スタッフ

監督 アスガー・ファルハディ
脚本 アスガー・ファルハディ

 

キャスト

ペネロペ・クルス ラウラ
ハビエル・バルデム パコ
リカルド・ダリン アレハンドロ
エドゥアルド・フェルナンデス フェルナンド
バルバラ・レニー ベア
インマ・クエスタ アナ
エルビラ・ミンゲス マリアナ
ラモン・バレア アントニオ
カルラ・カンプラ イレーネ
サラ・サラモ ロシオ
ロジェール・カサマジョール ホアン
ホセ・アンヘル・エヒド ホルヘ

 

レクタングル336

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