おすすめ度
キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆
ジプシー音楽とスウィング・ジャズを融合させ、ジャズからロックまで後世の多くのミュージシャンに影響を与えたジャズギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの半生を描く。1943年、ナチス・ドイツ占領下のパリで絶大な人気を博し、連夜華やかなスポットライトを浴びていたジャンゴ。ジプシーを最下層の民族と決めつけるナチスによる迫害は激化し、ジャンゴの家族にも危険が及びつつあったが、彼はナチスに利用され、将校たちが集う豪華な晩餐会での演奏を強いられていた。ジャンゴ・ラインハルト役には『ゼロ・ダーク・サーティ』『黒いスーツを着た男』のレダ・カティブ。『チャップリンからの贈り物』『大統領の料理人』などの脚本を手がけたエチエンヌ・コマールの初監督作品。
言いたい放題
キット♤ ロマ(ジプシー)の旅芸人の家に生まれ、ロマ音楽とジャズを融合させたジプシー・スウィングの創始者として多くのミュージシャンに影響を与えた実在のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの物語。。
アイラ♡ B.B.キング、レス・ポール、チェット・アトキンス、ジミー・ペイジ、ジミ・ヘンドリックス、カルロス・サンタナなど、ジャンゴ・ラインハルトに影響を受けたというミュージシャンは数知れず。ウディ・アレン監督の『ギター弾きの恋』(99年)で主演のショーン・ペンが扮した架空の天才ジャズギタリスト、エメット・レイは「自分はジャンゴに次いで世界で2番めの天才だ」と語っていたとされてたわね。
♤ 舞台となっているのは、ナチスドイツ占領下のフランス・パリとその解放直後の数年間なので、伝記映画というより、すでに占領下のパリでスターになり、華やかな演奏活動を続けていたが、ナチスによるロマへの迫害が激化したことで一家でスイスへ逃亡しようという一時期の物語やな。
♡ 監督も、ジャンゴの一生を大雑把にまとめた映画は作りたくなかったと言ってるそうやしね。それでも、最小限の説明でジャンゴやロマ人の置かれた境遇をうまく語っていたと思うわ。
♤ ロマという民族は、起源はインド北部らしいけど、定住をしないジプシーは行く先々でいじめられていたという。ナチスによるユダヤ人の迫害は数え切れないほど語られてきたけど、ロマの人々も強制収容所に送られ虐殺されていて、これは映画の中でも示唆されている。その事実がユダヤ人ほどには知られていないのは、彼らに財力と発言力がなかったからとしか思えないな。
♡ ロマ人を迫害しながら、ナチスは出自がロマである人気者のジャンゴをプロパガンダ利用しようとしていて、ベルリンで予定される彼の演奏会にはゲッベルスが来るという話ができている。ナチスは彼をスイスに逃亡させないよう釘を刺し、ジャンゴたちを高官の別荘で演奏させる。ジャンゴの気持ちはいかばかりか・・・。
♤ ただ演奏にあたって「ブルースは禁止」「シンコペーションは5%以下」「ソロは5秒以内」などの注文を付けるところがかにもドイツ人っぽい。ジャンゴを身体検査して頭蓋骨などを計測するところは、民族を分別して大量虐殺へ走らせた思想を垣間見るようで不気味やった。
♡ 火傷による指の障害だというのに近親婚のせいと決めつけたりね。民族浄化のためのさまざまな理屈がこうして積み上げられていったのだろうと思わせる。
♤ 本作中の演奏部分は、ジャンゴの音楽の流れを汲むというオランダのジプシー・スイングのバンド、ローゼンバーグ・トリオが参加している。肝心のジャンゴのパートは主演のレダ・カテブが1年間ギターを練習して自分で演奏しているというからすごいな。
♡ レダ・カティブは、風貌はそれほど実物とは似てないのやけれど、ギターの演奏っぷりは堂々としてかっこよかった。ジャンゴは火傷による指の障害をカバーする独特の2本指奏法を編み出していて、演奏シーンではその指の動きをアップで見せるほどの迫真ぶり。
♤ 映画のラストで、ジャンゴが作曲して一度だけ演奏され、楽譜が一部しか残っていないというレクイエムを指揮する。
♡ 資料によると、彼は戦前から同胞のために宗教的な貢献をしたいと考えていたそうで、ナチスによる迫害が大きくなるにつれてますますその思いを募らせていたというのね。ここで演奏されるのは、クラシックの要素の強いパイプオルガンによるミサ曲。ジャンゴの伝記でありつつ、ナチスによる迫害を描いた本作の締めくくりにはふさわしかったと思う。
♤ ただ欲をいえば、もう1回ギター演奏をやって欲しかったな。
予告編
スタッフ
監督 | エチエンヌ・コマール |
脚本 | エチエンヌ・コマール |
キャスト
レダ・カティブ | ジャンゴ・ラインハルト |
セシル・ドゥ・フランス | ルイーズ |