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キングコング 髑髏島の巨神(Kong: Skull Island)

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「キングコング:髑髏島の巨神」のポスターキット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.0 ★★★

1933年に製作された特撮映画の古典的作品『キング・コング』にはじまり、これまで何度も映画かされてきたキングコングを、神話の中だけの存在とされてきた謎の島に君臨する巨大神として描くアドベンチャー大作。時代はベトナム戦争末期。未知の生物の探索を目的とする調査遠征隊が派遣され、島内に足を踏み入れた隊員とその護衛にあたる兵士たちは、次々と現れる巨大生物に翻弄されていく。監督はテレビドラマシリーズに携ってきたジョーダン・ヴォート=ロバーツ。『マイティ・ソー』シリーズのトム・ヒドルストンのほか、ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ジョン・C・ライリーら顔ぶれも豪華。

 

言いたい放題

キット♤ キングコングは何回も映画化されていて、最初が1933年でそのときのヒロインはフェイ・レイ。2作目は1976年でヒロインはジェシカ・ラング。3作目は2005年でナオミ・ワッツ。3作とも基本のシナリオは同じで、男2人、女1人の3人組が南太平洋の髑髏島へ出かけて島の神キングコングと遭遇。捕獲して見世物にするためにニューヨークに連れて帰るがコングが逃走。エンパイアステートビルあるいは貿易センタービルに登ったりして暴れるが、最後は人間に攻撃されて息絶えるという筋。この映画では、髑髏島、原住民、島の巨大生物などのオリジナルのアイデアを使いながら、舞台をコングのお膝元の髑髏島だけとすることでコングと人間との力関係を大きくコング寄りに変えている。

アイラ♡ 完全な現代ものにしてもよかったのに、ここに第2次大戦とベトナム戦争の時代背景を絡めて、行方不明となった兵隊の帰還物語の味付けも加えてるのがちょっと興味を引いたわね。

♤ オープニングは、太平洋戦争下での空中戦で髑髏島に墜落した日米双方のパイロットの戦いから。で、ここでいきなりキングコングが登場する。この種の映画では延々と気配だけを見せておいて、痺れを切らしたころでご本尊登場というパターンが多いことを思えば、出し惜しみせず気前がええな。それから約30年後、ベトナム戦争がアメリカ軍の撤退で収束する頃にアメリカの調査隊が髑髏島へ送り込まれるところから本筋が始まる。リーダーで元SIS隊員のコンラッド(トム・ヒドルストン)、カメラマンのウィーバー(ブリー・ラーソン)、資源探索チームのランダー(ジョン・グッドマン)、生物学者のリン(ジン・ティエン)、地質学者のブルックス(コーリー・ホーキンズ)などの寄せ集めチーム。

♡ 頭数は多いけど、最後までこれは誰?みたいな人物もいたりして。彼らの護衛と島までのヘリコプターでの輸送を担当するベトナム帰りのパッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)はさすがの存在感やったけど、ほぼ全員についてキャラの深掘りはないに等しいのよね。展開には問題なかったけど(笑) 

♤ リンとブルックスはストーリに関係せんおまけキャラ。過酷な環境で一番最初に死にそうやのに生き残る。それがエンドロールの後でちょっと出てくるので最後のお楽しみ。で、いつもながらのあら捜しをすると、やっぱり細かい突っ込みどころはそこら中にある。ヘリコプターが派手に墜落するのに死亡者か軽傷者だけで重傷者が出ないとか・・・。ま、そういうことは無視して楽しむのこの手の映画の約束事やしな。あと、全てのヘリコプターを失った後、徒歩で島を縦断する際に未知の巨大生物に一人ずつやられていくところなどはジュラシックパークを連想させる。夕陽に向かってヘリコプターが編隊を組んでいくところや、音楽を大音量で鳴らしながら飛んでいく場面は明らかに『地獄の黙示録』へのオマージュ。

♡ モンスターものに間違いないはずやのに、特に『地獄の黙示録』を思わせる場面は、そこだけなんとも異なる映像上の様式美があって、では失敗しているかといえば、むしろ作品に不思議な厚みをもたらしてるから面白い。隊員たちが命を落としていくなかで、自分が砦になろうと覚悟した隊員なんて、アメリカ人大好きのヒーロー像そのものやというのに、あっさりかっこ悪く殺される。あと、美女との取り合わせというお約束も守られてはいるけど、そこもさらりと流してるし、アメリカ映画の常道を時おりするっとかわしてくるこの監督のセンスは好きかも!

♤ あと、時代設定が今から約40年前ということで、出発前のブリーフィングはプロジェクターではなくコダックのスライド映写機、オフィスではパソコンではなくディジタル・イクイップメント社(DEC)のVT端末が使われている。現場ではソニーの初期のビデオカメラが使われてた。武器のことは良く分からないが、時代考証をして当時のものを使っていると思うので、そういったところを見るのも楽しみの一つやろな。

♡ 調べればわかると思うけど、反戦カメラマン役のブリー・ラーソンが携行しているカメラも、この時代の戦争カメラマンが愛用していたライカだろうと思う。

♤ 続編の製作はすでに決まっていて、マーベルの映画のようにエンドロールの後でおまけがある。チラッと見えるのは原爆の写真、日本の地図、地底で見つかったゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラのような壁画など。どうやら続編は日本の怪獣総出演となりそうな予感。

 

予告編

スタッフ

監督 ジョーダン・ボート=ロバーツ
脚本 ダン・ギルロイ
マックス・ボレンスタイン
デレク・コノリー

 

キャスト

トム・ヒドルストン ジェームズ・コンラッド
ブリー・ラーソン メイソン・ウィーバー
サミュエル・L・ジャクソン プレストン・パッカード
ジョン・グッドマン ビル・ランダ
ジン・ティエン サン
ジョン・C・ライリー ハンク・マーロウ
トビー・ケベル ジャック・チャップマン

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