レビュー

スプリット(Split)

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おすすめ度

スプリットのポスターキット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.0 ★★★

『シックス・センス』『ヴィジット』などのM・ナイト・シャマランが手がけるサイコスリラー。3人の女子高校生がある日突如誘拐される。彼女たちを監禁したのは極度の潔癖症と思われる男性。だが次に現れたその男は、エレガントな中年女性の雰囲気に変貌していた。男は23人もの人格を持っており、複数の人格が次々と入れ替わっていく。彼らと対峙しつつ必死に脱出の道を探る彼女たちの前に、24番め目人格が出現する・・・。多重人格の男を演じるジェームズ・マカヴォイの好演が光る。

 

言いたい放題

キット♤ 監督は、『シックス・センス』『アンブレイカブル』『サイン』などのM.ナイト・シャマラン。この人については、名監督という人もいれば駄作の濫造者とこき下ろす人もいるという、まぁ評価・好き嫌いが大きく分かれる。名作・駄作あるいは好き嫌いは別にして、『シックス・センス』は興行的に成功して事実上の出世作となったけど、直近の『エアベンダー』や『アフター・アース』は評価も芳しくなく、興行的にもいまひとつだったみたいやな。どっちも観てないけど。

アイラ♡ 『シックス・センス』は、どんでん返しの来ることが最後の最後までわからないという仕掛けのうまさと、ハーレイ・ジョエル・オスメントの天才子役ぶりが注目を集めて成功。スリラー映画としても随所に新鮮味があった。ただ、そのあとは観たいと思うほどの作品はなかったし、事実ひとつも観てない(笑) なんか劇場予告を観るだけでも、こうすればアタるやろうという邪心というかあざとさが感じられてしまう監督で、どうもあまり好きじゃない。本作も「ナイト・シャマランやし、やめとこか~」って思ってたし。

♤ 近作があまりうまく行ってないからか、今回はたいした俳優も起用してないし、セットやロケにお金をかけたふうでもなく、全体に低予算映画の香りがプンプンするな。

♡ 密室のセットだけでほとんどOKって感じやったしね。

♤ 物語は女子高校生3人の誘拐事件。ただ、犯人のケヴィンが解離性同一性障害者、いわゆる多重人格者というのがちょっと違うところ。解離性同一性障害者は、ヒッチコックの『サイコ』でアンソニー・パーキンス演じる殺人犯がそうやった。彼は宿屋の主人という本人の人格と、亡くなった自分の母親の人格を持っていて、それが入れ替わるという役柄。ただ『サイコ』は人格が2つだけど、この映画の犯人は全部で23の人格を持っていて、話の中で24番目が出てくる。

♡ 問題はそこなのよね。もう30年も前にベストセラーになったノンフィクション『24人のビリー・ミリガン』を下敷きにしてるのがバレバレで・・・。

♤ アメリカに実在したビリー・ミリガンという人が24の人格を持っていて、分析すると“スポット”と呼ばれる場所の周りに24人が立っていて、スポットに立った者の人格が外に現れるというようなことやったな。

♡ 24人の人格というだけで、『ビリー・ミリガン』を読んだ人にはぴんと来てしまうのに、知的で上品な英国人とか、絵を描くのが好きな子どもとかっていう人格の設定がかなり似ていて、どうしたってパクりやん~って思ってしまう。

♤ 本来の人格であるビリーは、表に出すと自殺のおそれがあるということで他の人格によって眠らされている。この設定は本作にもみられるし、24人それぞれに異なる年齢、性別、名前があるのも同じ。ビリー・ミリガンの中では23人の人格を統合した“教師(Teacher)”が24番目の人格として登場する。

♡ 多重人格にヒントを得るのはよしとしても、こうもわかりやすいパクリをせず、もっと専門家に取材してしっかりと膨らませることができれば違ってたと思うのやけど・・・。というか、監督は単に人格が激しく分裂する人物設定という部分にのみ惹かれたんやと思う。

♤ 少なくとも、多重人格の構造についてはビリー・ミリガンを踏襲してるよな。本作では、表に出てくる人格について「光が当たる」「光を独り占めにする」という表現を使っているけど、ビリー・ミリガンで「スポットに立つ」というのに似ている。それぞれが際立った個性を持っているところもそっくり。ただ大きく違うというか、ある意味この監督らしいのが、24番目に出現する人格が、“ビースト(Beast)”と呼ばれる凶暴な性格と超人的な肉体を持っているという点。出現する人格によって肉体そのものまでが変化するというSF的な発想を加味して、超自然的なキャラクターにしてしまっているところはちょっと面白いかな。

♡ というか、みるべき点はそれくらいってことなのよね。あとは、それほどのことはない。誘拐された女子高校生たちに忍び寄る正体不明の恐怖とか、必死の脱出劇とか、そういう作り込みにはほとんど力は入れられてなくてむしろ退屈なほど。でも、そんな中ではケヴィン役のジェームズ・マカヴォイの演技が光ってたかな。

♤ 彼についてはほとんど知らないのやけど、X-MENシリーズのプロフェッサーXを、2014年の「X-MEN:フューチャー&パスト」からパトリック・スチュワートの後任として演じてる。本作では、24人のうち8人くらいを演じるんやけど、ちょっと気持ち悪いとこも含めて、まあようやってるのんちゃうかな。

♡ あと、誘拐される3人のうち、ヒロインともいえるケイシー役のアニヤ・テイラー=ジョイがなかなかよかったね。

♤ 19歳の無名の女優で、目と目の離れ具合が個性的。回想シーンを演じる子役も目が離れてたな(笑)

♡ ネタバレになるけど、ビーストの人格となったケヴィンは、ケイシーを自分と同種の人間と知ることで彼女に手出しするのを中断する。それがわかる場面は、シャマランらしいちょっとしたどんでん返しかなと思ったのやけど、ほんまのどんでんは最後の最後に残してあったわね。

♤ ダイナーかどこかで誘拐事件のテレビ報道を観ていた女の人が、「15年前の事件に似ている」と言うと、それに答えて別の人間があることをつぶやく・・・。それはどうやら『アンブレイカブル』の登場人物の名前らしく、シャマラン監督へのインタビューなどからの情報によると、彼はこれと本作を合わせたような続編を企画しているらしい。

♡ ってことは、本作はその続編の序章ってことかな・・・あんまり興味ないけど(笑) なんか、マーベルとかDCユニーバスみたいなことになってない?

♤ 不死身のヒーローをブルース・ウィリスが演じてて、それに対する悪の超人が本作のケヴィンって感じやろか。無理に引っ張らず、ここで完結させといたほうがええのんちゃうかと思うけど、続編を作るならお手並み拝見。目と目が離れたケイシーの復讐劇なら観てみたい!

 

予告編

スタッフ

監督 M・ナイト・シャマラン
脚本 M・ナイト・シャマラン

 

キャスト

ジェームズ・マカボイ ケビン
アニヤ・テイラー=ジョイ ケイシー
ベティ・バックリー フレッチャー
ジェシカ・スーラ マルシア
ヘイリー・ルー・リチャードソン クレア

 

レクタングル336

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