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ドリーム(Hidden Figures)

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hidden figures

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

1962年、米国初の有人宇宙飛行をめざす「マーキュリー計画」はじめ、NASAを陰で支えた3人の黒人女性を描く実話に基づく物語。米ソ間で熾烈な宇宙開発競争が展開されていた61年、バージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所には、ロケットの打ち上げに欠かせない高度な計算を行う黒人女性グループがいた。なかでも数学に卓抜した才能をもつキャサリンは、中枢本部の計算係に抜擢されるが、白人男性ばかりの環境でさまざまな差別に苦悩する。有人飛行ではソ連に遅れを取ったアメリカだったが、ついにジョン・グレン飛行士による衛星軌道周回飛行に成功。その陰にはキャサリンたちの存在があった。キャサリン役に『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のタラジ・P・ヘンソン。コンピュータサイエンスのスペシャリストとなるドロシー役に『ヘルプ 心がつなぐストーリー』などのオクタビア・スペンサー。メアリー役には『ムーンライト』などにも出演した歌手のジャネール・モネイ。監督は『ヴィンセントが教えてくれたこと』のセオドア・メルフィ。制作と音楽にはミュージシャンのファレル・ウィリアムスも関わっている。

 

言いたい放題

アイラ♡ しっかりとよくまとまった作品やね。

キット♤ どこを取っても実にアメリカ映画らしいアメリカ映画。人種差別、女性差別、ソ連との宇宙開発競争と50~60年代の世相を取り込みながら、障害を乗り越えてハッピーエンドを迎える物語。といってしまうと身も蓋もないが、登場人物の分かりやすいプロット、印象的なエピソードを交えながら不要な部分を切り詰めたシナリオが思った以上によく出来ており、オーソドックスな演出と相まってすんなりと入り込める。

♡ 主人公がさまざまな苦難を乗り越えて胸の熱くなる大団円へ・・・へというアメリカ人の大好きな作りになりすぎていてちょっと減点してしまったけれど、いい作品ではあるよね。主人公3人が何があろうと貫き通した自尊心が本当に美しいし、それを支え続けた家族たちの存在もいい。展開も軽快で、脚本も無駄がない。ただその出来過ぎ感がちょっと鼻についてしまったというだけです。

♤ NASAの業績を影で支えた3人の女性ということで、ポスターも主要登場人物である3人を大きくフィーチャーしてるけど、実質的な主人公は、並外れた数学の才能を持つキャサリン・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)。ほかの2人も生涯で立派な業績を残した人物やけど、本作のメインとなる「マーキュリー計画」への貢献はは限定的。映画では2人の努力ぶりにも触れるが、深くは踏み込まずサラッと流しているところは上手いやり方。

♡ 「マーキュリー計画」といえば、名作『ライトスタッフ』(83年)が宇宙飛行士たちの視点からこれを描いてるわけやけど、表裏一体のものとして観なおしてみるのも面白そう。本作ではさらりと触れるに留めていたけど、公民権運動が盛り上がる60年代初頭に、黒人女性が高度な仕事で社会に貢献していたという事実が50年以上も経ってようやく賞賛される。本作もまた“白すぎるオスカー”への反動として作られたんやろなと考えると、アメリカ社会もまだまだ硬直的なんやなという気がしたわ。

♤ その点で、キャサリンがきわめて有能で創造的な仕事をしているのにあくまで「計算係」としてしか扱われないことや、女性だからという理由で重要な会議に入れないとか、有色人種用トイレの問題や、同僚からのいやがらせに負けずに奮闘するところが当時の社会を踏まえた見どころ。それを既成勢力とのガチガチの戦いではなく、ユーモアを交えてソフトに演出しているところは監督セオドア・メルフィの手腕かと思う。

♡ 上司役のケビン・コスナーの起用は正解やったね。

♤ 俳優としては盛りを過ぎてしまった感があったけど、気難しいが仕事ができてリーダシップのあるボス役はハマり役。久々に会心の演技やったと思う。『メランコリア』の好演で大人役へと脱皮した感のあったキルステン・ダンストが意地悪な上司というちょっと気の毒な役。TVドラマ『ハウス・オブ・カード』のロビイスト役から『ムーンライト』でオスカー獲得と大出世のマハーシャラ・アリが、ちょい役ながらしっかり脇を固める。

♡ 主人公たち3人の仕事とプライベートの描き方のバランスがちょうどよかったね。あと衣装が素敵やった。NASAの男性職員が全員白いシャツに細身のネクタイという中で、カラフルで素敵なデザインのドレスが印象的。音楽もハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムス、ベンジャミン・ウォルフィッシュの3人が参画して力が入っている。

♤ 打ち上げの寸前にマイルスの“So What?”を流すセンスもよかったな。ところで、原題『Hidden Figures』の「Figures」には「数字」と「人物」の意味があるけど、誰にも出来なかった軌道計算をキャサリンがやってのけたことと、マーキューリー計画を人知れず影で支えた黒人女性たちの両方の意味に掛けてあるんやろな。ところが聞くところでは、日本の配給会社の当初の邦題案は『ドリーム 私たちのアポロ計画』。これを知った映画ファンが事実と違うと猛抗議した結果『ドリーム』になったという。「アポロ計画」は「マーキュリー計画」に続く人を月へ送り込む計画で、本作とは全く無関係。これがタイトルになってたらかなり恥ずかしかったな。『ドリーム』でさえほとんど意味をなしてないのに・・・。20世紀FOXジャパン、大丈夫か?

♡ キング牧師の“I have a dream”の演説にかけているのでは?という説もあるようやけど、ほとんどの日本人はそれではピンとこない。やっぱりあほなんでしょうね。それにしても最近、これは!という邦題にお目にかかってないなぁ~。

 

 

予告編

スタッフ

監督 セオドア・メルフィ
原作 マーゴット・リー・シェッタリー
脚本 アリソン・シュローダー
セオドア・メルフィ

キャスト

タラジ・P・ヘンソン キャサリン・G・ジョンソン
オクタビア・スペンサー ドロシー・ボ―ン
ジャネール・モネイ メアリー・ジャクソン
ケビン・コスナー アル・ハリソン
キルステン・ダンスト ビビアン・ミッチェル
ジム・パーソンズ ポール・スタッフォード
マハーシャラ・アリ ジム・ジョンソン
キンバリー・クイン ルース
グレン・パウエル ジョン・グレン
オルディス・ホッジ レビ・ジャクソン

 

レクタングル336

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