レビュー

20センチュリー・ウーマン(20th Century Women)

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20センチュリー・ウーマン

キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

ゲイの父親をモデルに『人生はビギナーズ』を撮ったマイク・ミルズ監督が、続いて実母をモデルに製作。2017年アカデミー賞脚本賞ノミネート作品。1979年のサンタバーバラを舞台に、15歳の少年ジェイミーとシングルマザーのドロシア、そして彼らを取り巻く人々によるひと夏の物語。価値観が多様化しめまぐるしく変化する20世紀後半のアメリカ社会で、思春期の息子ジェイミーの育て方に悩むドロシアは、下宿人の写真家アビーとジェイミーの幼なじみのジュリーに息子の“養育”を依頼するが・・・。ドロシア役のアネット・ベニングは、ゴールデングローブ賞の主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門)にノミネート。ジュリーにエル・ファニング、アビーにはグレタ・ガーウィグ。

 

言いたい放題

キット♤ マイク・ミルズ監督が5年前に撮って話題になった『人生はビギナーズ』との対比で批評されることが多いけど、前作を観そびれてるので我々にとっては本作が初めてのミルズ作品。タイトルは“Women”やけど、ポスターに並んで写っている5人のドラマ。まあ、息子を取り巻く3人の女性とおまけのおっさん1人の話といえんこともない。

アイラ♡ クリストファー・プラマーの演技が高く評価された前作だけに、観そびれたままで気になってるのやけど、それはさておき、あえて一切の情報を得ずに観たらば、盛り上がりに欠ける淡々とした運びに中盤まで少しダレ気味。でも途中から監督の意図するところが見えてきて、俄然面白くなってきたわ。

♤ なんか監督の私小説みたいで、好き嫌いでかなり評価が振れそうな作りやな。メインキャストはシングルマザーの下宿の大家ドロシア(アネット・ベニング)・55歳。息子のジェイミー・15歳。ジェイミーの幼なじみのジュリー(エル・ファニング)・17歳くらい。下宿人で写真家のアビー(グレタ・ガーウィグ)・20歳過ぎ。ヒッピーあがりの大工らしきおっさんウィリアム・年齢不明。これらの人たちの日常の生活を淡々と撮っていく感じ。

♡ 主人公のドロシアはぴったり私たちの親世代。そしてアビーは私と同年代。ジェイミーと彼より少し年上のジュリーは団塊ジュニア。元ヒッピーのおっさんは団塊世代。ひとくくりに20世紀といっても100年あるわけやけど、この監督は20世紀後半の世界-主にはアメリカ社会やけど-の価値観がどれだけめまぐるしく変わったかを、異なる世代の人々を通じて端的に見せたんやね。

♤ 1970年代末期のアメリカが舞台で、パンクロックとかフェミニズムとか当時のアメリカの世相に詳しければもっと違った見方があったかもしれない。

♡ 日本人にはその点でちょっと追体験が難しいところもあったわね。時代を象徴するいろんな音楽が使われてるけど、知ってる曲はかなり限られてたし。ドロシアは当時とすれば高齢出産で、思春期を迎えた息子を価値観の変貌する社会のなかでどう育てればいいか困惑した挙句、アビーとジュリーに母親代わりを任せるのやけど、彼女たちも平均的な子たちとはいえない。でも、時代の空気を体現する人々としての彼女たちの設定はすごく感覚的でおもしろかった。

♤ 母親のキャラクターは、当時としては先進的な考えの持ち主と思われるけど、それでもフェミニズムの話には抵抗感があったりとか微妙なところを狙っているような気がするのやけど、残念ながらあまりよくわからなかった。

♡ 70~80年代当時の日本はアメリカから10年も15年も遅れてるなんていわれてたけど、日本よりだいぶ先を行っていたアメリカでの、20世紀後半の世代論と思って観るとなかなか興味深いものがあるよ。男性社会でキャリアを重ねてきたドロシアは決して保守的ではないし、息子の教師にも言いたいことはいう。でも70年代ごろから社会を席巻したフェミニズムには抵抗があり、パンクロックもわからない。アビーは私と同時代の女性なので、彼女が影響を受ける価値観やサブカルチャーについては大いに共感できる。この2人をつなぐ役割として、ヒッピー時代を生きたウィリアムという飄々としたおっさんが配置されているのよね。特に自己主張もなく、根なし草のようで、無害やけど思うがままに生きている平和主義者というのか・・・。

♤ アネット・ベニングの演技はよかったと思うし、歳の割には行動が若々しいのもええんやけど、息子や娘の年代ともいえる下宿人とナイトクラブへ出かけるのは僕としては少々イタいなぁ。

♡ たしかに彼女には、理解できないものを無理にわかろうとしてる感があったよね。それこそが、ドロシアたち世代を貫く最大の戸惑いであり悩みでもある。そこへウィリアムという人物を、子どもたち世代との緩衝材として配している感じ。けどさすがに、ジュリーやジェイミーの性に対する態度に対しては、私も親世代的な見方になってしまうのは否めない。要するに、観る人が20世紀後半のどの時期にもっとも感受性の強い年代を送ったかによって受け止め方がまったく違ってくるんやろね。

♤ 映画の中で『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』が何度か流れる。いうまでもなくこの曲は、1942年製作の『カサブランカ』の劇中曲に使われて有名になったわけやけど、逆算するとドロシアは公開当時18歳だったことになるのでリアルタイムで観ていたかもしれないという設定。僕なら、もっと母親を中央に据えて『20th Century Woman』として撮ってもよかったんちゃうかなと思う。

♡ いや、これは20世紀、とくに第2次大戦以降のアメリカ社会を彩ってきたさまざまな価値観が、いかに層のように形成されてるかをみせる作品やと思うから群像劇でいい。と同時に、いまからみれば、それらの価値観がいかにあほくさいもんやったかにも気づかせてくれる(笑)。20世紀を生きてきた人なら誰しも、しょーもないことに真剣に気持を揺さぶられてきた記憶があるはずやねん。登場人物たちが淡々と各世代を体現してるだけに、よりリアリティを感じたし、ノスタルジックでもあったわ。

 

 

予告編

スタッフ

監督 マイク・ミルズ
脚本 マイク・ミルズ

 

キャスト

アネット・ベニング ドロシア
エル・ファニング ジュリー
グレタ・ガーウィグ アビー
ルーカス・ジェイド・ズマン ジェイミー
ビリー・クラダップ ウィリアム

 

レクタングル336

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