レビュー

ゲティ家の身代金(All the Money in the World)

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All the Money in the World

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

アメリカの大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐された実際の事件を巨匠リドリー・スコット監督が映画化。1973年、石油ビジネスで巨大な富を築いたジャン・ポール・ゲティの17歳の孫ポールがローマで誘拐され、母親アビゲイルのもとに1700万ドルの身代金が要求される。だが稀代の吝嗇家で守銭奴のゲティは身代金の支払いを拒否。息子を救うため、アビゲイルは犯行グループのみならず世界一の大富豪である義父との戦いを強いられる。アビゲイル役にミシェル・ウィリアムズ、ゲイルのアドバイザーとなる元CIAの交渉人フレッチャーにマーク・ウォールバーグ。ゲティ役だったケビン・スペイシーが映画完成間近のスキャンダルで降板。クリストファー・プラマーが代役を務めて完成、公開となったことでも話題を集めた。

 

言いたい放題

キット♤ 1973年に起きた億万長者ジャン・ポール・ゲティの孫、ジャン・ポール・ゲティ三世の誘拐事件の事実にフィクションを加えて作られた作品ってことやけど、公開前に話題になったのは、映画の内容ではなく主演男優の交代。ジャン・ポール・ゲティ役にはTVドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のケビン・スペイシーがあてられ、すでに全編撮影完了。それが1ヵ月半先のクリスマスシーズンの公開を待つばかりという段になってケビン・スペイシーのセクハラ疑惑が浮上し、自身の対応のまずさから、事実上スペイシーは映画・ドラマから追放となってしまった。

アイラ♡ アメリカを代表する名優であるだけに、彼の不祥事は映画ファンにとっても実に手痛い出来事やったね。

♤ ところがそれからの製作者と監督の判断が迅速で、ケビン・スペイシーの登場場面を代役のクリストファー・プラマーですべて撮り直すこととし、それをわずか9日間でやってのけた。ただし共演俳優のギャラなど追加費用が1,000万ドル。それで12月25日の公開に間に合わせたのやから、それも宣伝効果としては大きかったかも。

♡ 結果として、クリストファー・プラマーの起用で正解やったね。ケビン・スペイシーは、『ハウス・オブ・カード』の大統領役では素晴らしかったと思うけど、彼はまだ50代。ゲティを演じてもあのギラギラ感が出すぎてしまったんじゃないかな。

♤ 事実、ゲティが亡くなったのが83歳。58歳のケビン・スペイシーに老けメイクをしても無理があったやろ。一方のクリストファー・プラマーは今年88歳で、年相応に枯れているから地で行けた。

♡ ゲティの醜悪な老獪さや大富豪ゆえの孤独さは、これくらい枯れ感のある俳優から滲み出てきたほうがずっとリアルやと思うしね。

♤ 作品のほうは、さすがリドリー・スコット監督らしくかっちりとした構成で作られている。そこにゲティ役のクリストファー・プラマー、息子の元嫁で誘拐された孫の母親アビゲイル役のミシェル・ウィリアムズ、ゲティに雇われてアビゲイルと共に誘拐された孫を救出しようとする元CIAのチェイスを演じるマーク・ウォールバーグの3人が堅い演技をしているので出来栄えは約束されたようなもの。

♡ よかったのがアビゲイルのミシェル・ウィリアムズ。決して華のある女優ではないけど、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の母親役は抜群に素晴らしかったし、直近では『グレイテスト・ショーマン』でもいい存在感があった。どケチでこすっからい義父を向こうに回して戦うんやけど、義父への嫌悪感や徒労感が全身から染み出してて、こっちも一緒に疲れてしもた。

♤ 事実に基づいた映画は、話を大きく脚色できないため、往々にして退屈な内容になってしまうけど、本作には事実に基いてフィクションを加えているという但し書きがある。具体的には、孫が解放されてガソリンスタンドで見つかったというのが事実で、解放後に再度命を狙われて逃げ回るというのはフィクション。これを加えたことでサスペンスとして引き締まったのは監督の手際。

♡ リドリー・スコット監督は、実際に孫を誘拐した組織から手紙で脅迫されててんて。ちんけな悪党として描いたら承知せんぞ!という内容やったらしいけど、でもここに出てくるイタリア人は、悪党から警察から新聞記者パパラッチまで、皆なんだか頭が弱そうで・・・。あ、決してイタリア人への偏見じゃないよ!

♤ ただ個人的には、なぜスコット監督がこの映画を作ろうとしたのかという疑問が残った。当時世界一の金持ちで、かつケチだったというジャン・ポール・ゲティは確かに変な人間やけど、いまの人が関心を持っているとも思えない。孫の誘拐事件も今さら掘り返す類の事件ではないだろう。とすると、息子を誘拐された母親アビゲイルの頑張が見せ所なのか?

♡ スコット監督は、家族の崩壊をテーマにしていると語ってるそうやし、これまでも『エイリアン』や『テルマ&ルイーズ』など強い女性をテーマにすることが多かったので、いまの社会を戦い抜く女性像を描きたかったのと違うかしらね。

 

予告編

スタッフ

監督 リドリー・スコット
原作 ジョン・ピアソン
脚本 デビッド・スカルパ

キャスト

ミシェル・ウィリアムズ アビゲイル(ゲイル)・ハリス
クリストファー・プラマー ジャン・ポール・ゲティ
マーク・ウォールバーグ フレッチャー・チェイス
ロマン・デュリス チンクアンタ
ティモシー・ハットン オズワルド・ヒンジ
チャーリー・プラマー ジャン・ポール・ゲティ3世
アンドリュー・バカン ジャン・ポール・ゲティ2世

レクタングル336

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