レビュー

ブレードランナー 2049(Blade Runner 2049)

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Blade Runner 2049

キット ♤ 4.5 ★★★★☆
アイラ ♡ 4.0 ★★★★

80年代カルト映画の名作ともいうべきリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』から35年。『メッセージ』『ボーダーライン』など独特の映像美で注目されるカナダ出身のドゥニ・ビルヌーブ監督が、前作から30年後の近未来世界を舞台に、ブレードランナーやレプリカントたちのその後を描く。ロス市警のもとで働くレプリカントの“K”(ライアン・ゴズリング)は、世界の危機となる状況を解決すべく、行方不明となっているブレードランナーのリック・デッカード(ハリソン・フォード)の捜索を始めるが・・・。リドリー・スコットは製作総指揮に回り、脚本には前作も手がけたハンプトン・ファンチャーと、『LOGAN ローガン』『エイリアン コヴェナント』のマイケル・グリーン が参加した。

 

言いたい放題

キット♤ 1982年の『ブレードランナー」の続編。163分という最近としては珍しい長尺。前作の監督リドリー・スコットが製作総指揮にまわり、ドゥニ・ヴィルヌーブがメガホンを取った。制作発表から何かと話題にはなってたし、完成後に批評家には好意的に受け取られていたにも関わらず、アメリカでの興行成績はあまり振るわないらしいな。

アイラ♡ さまざまな映画評では、何よりまずヴィルヌーブ監督独特の映像美がさかんに賞賛されているよね。私自身というか、前作を観た人の多くがそうだと思うのやけど、ファンそれぞれの中で『ブレードランナー』という作品は一応前作で完結しているので、今作に何を期待するか、どこをどう楽しむかというところのベクトルが揃ってないんでしょう。だから共感を集めやすいところで、映像の素晴らしさばかりが喧伝されることになる。音楽も、ヴァンゲリスの刷り込みが強い人からすると、今回のハンス・ジマーはただうるさいだけやったみたい。私はいいと思ったけどなぁ。ファンにはそれぞれにこだわりがあるのよ、やっぱり。

♤ 少なくとも前作からのファンである自分としては、やはりまずこの映像は素晴らしいし、監督、脚本、俳優それぞれ悪くなく、全体として好みの作品に仕上がってる。163分を長いと感じずに最後まで楽しんだ。 

♡ 逆に前作を知らない人には、わかりにくい部分も多かったやろし、どれほどの話やねん?という疑問にもつながっているみたい。それが興行成績に響いてるのかもね。基本的には『ブレードランナー』ファンのための続編という印象ではあった。

♤ 映像に関しては、前作の暗闇と明かりのコントラストを踏襲した世界観に加えて、廃墟となったサンディエゴやラスベガスの虚無感たっぷりの映像など拡張した部分を含めてうまくまとまっていると思った。特に、SF映画で都市の雑踏のシーンを撮る際に、『ブレードランナー』以降の映画を作る人たちは意識せざるを得なかったであろう東洋が入り混じった風景は、ネオンサインにホログラムが加わってさらに強力になっている。

♡ 酸性雨のそぼ降る近未来のロサンゼルスの猥雑で薄汚い光景が、さらに強化版になってたね。うどんの屋台へのオマージュとおぼしき看板など、できればもう一度観て細部へのこだわりを再確認してみたいもんやわ。あとはやはりこの監督ならではの、鋭利でいながらしっとりと湿ったような映像が美しい。ストーリーのほうはどう思った?

♤ よく考えられてると思ったで。レプリカントである”K”は、30年前に失踪したブレードランナーのデッカードを探すことになるわけやけど、“K”にも不可解が部分がある。彼をデッカードと共に失踪したレイチェルの息子かと思わせて、途中でひっくり返す意表の突き方とか。ただ、なぜ“K”にだけリアルな記憶が与えられていたのかの説明がないんや。

♡ どうもそのあたりに、続編制作への意図が見え隠れするんやけど・・・。とはいえ本作では、前作で明示的に説明されていないがために長年議論となってきたいくつかの“謎”に説明がついたことになるのかしらね。

♤ 前作では、劇場公開番を含めて5つの版があり、いくつかの矛盾点や意味のはっきりしない部分の解釈がずっと議論の的になってきたわけやけど、少なくともレイチェルのその後については本作で明らかになった。デッカード自身がレプリカントかどうかという議論も根強くあるけど、ラスト近くで、デッカードはなす術もなくただ溺れかけてたくらいなので、個人的にはレプリカントではないと結論づけたい。

♡ 作品のテーマということでは、前作では奴隷労働を強いられるレプリカントの悲哀が大きなテーマでもあったわけで、私はルトガー・ハウアーの名台詞に匹敵する何かを今作には期待してしてたんやけどな。

♤ レプリカントと人間の違い、あるいは人間とは何かというテーマは引き継ぎながら、本作では“レプリカントの生殖”という、よりリアリティのある話へ発展している。加えて、人間ではないエンティティとしてジョイが加わっている。前作やけど、本作の特徴は、対立する勢力(LAPD、ウォレス社、レプリカント地下組織)に“K”とデッカードが絡む複雑な構図であるわりに主要登場人物が少ないこと。LAPDのシーンでも警察官って3人くらいしか出てなかったような気がするし、ウォレスは大企業のトップなのにほとんどラヴだけしか出てこない。お陰でややこしい人間関係と顔を覚えなくてよいのは助かる。

♡ 主演俳優の数も多くないしね。ライアン・ゴズリングの起用はすごくよかったと思う。

♤ 彼については、『ラ・ラ・ランド』でのブレイクは不本意なんちゃうかと思うくらいで、これでスターへの道を固めたように思う。ハリソン・フォードかて、出世作の『スター・ウォーズ』のあと、『ブレードランナー』あたりから演技派の仕事が増えているので、タイプは違うがゴズリングにも期待できそう。

♡ ジョイ役のアナ・デ・アルマスは、最近『ハンズ・オブ・ストーン』で観て、なんと可愛い女優さんかと思ったけど、当分はこういう美貌の役がつきそう。

♤ ほかに、サッパー・モートン役のデイヴ・バウティスタは『ガーデイアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズでおなじみ。マダム役のロビン・ライトは『ハウス・オブ・カード 野望の階段』でのゴールデン・グローブ賞獲得の勢いで映画でも頑張ってる。ジャレッド・レトは毎回違った役でその才能を見せてくれるが、本作でも好演。ラヴ役のシルヴィア・フークスはオランダの女優でアメリカではまだ無名みたい。『キャプテン・フィリップス』のバーカッド・アブディは、友情出演みたいな端役ながらも独特の風貌で存在感あり。あと忘れてはならないのは、前作でデッカードを見張っていたちょっと不気味なガフ役のエドワード・ジェームズ・オルモスは、かなり太ったが同役でちょい出演。あとレイチェル役だったショーン・ヤングもクレジットされてはいるけど、単に肖像権みたいなもんかな。

♡ ガフの折り紙は前作ファンへのサービスやろね。ただ本作にも新たな疑問というか、あえて説明を避けたような部分が各所に仕込まれてるね。デッカードとレイチェルの娘のものだった記憶を与えられた”K”とは誰なのか、今回生き残ったレプリカントの反乱部隊はどうなるのか、続編づくりへの下地は十分できてる。リドリー・スコット自身はもうええと言うてはるらしいし、ハリソン・フォードも特にもう観たくはないのやけど・・・。

 

 

予告編

スタッフ

監督 ドゥニ・ビルヌーブ
脚本 ハンプトン・ファンチャー
マイケル・グリーン

 

キャスト

ライアン・ゴズリング K
ハリソン・フォード リック・デッカード
アナ・デ・アルマス ジョイ
シルビア・ホークス ラヴ
ロビン・ライト ジョシ
マッケンジー・デイビス マリエッティ
カーラ・ジュリ アナ・ステライン
レニー・ジェームズ ミスター・コットン
デイブ・バウティスタ サッパー・モートン
ジャレッド・レト ニアンダー・ウォレス
バーカッド・アブディ ドク・バジャー
エドワード・ジェームズ・オルモス ガフ

 

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