レビュー

ブライト(Bright)

投稿日:2018年1月5日 更新日:

おすすめ度

Brightキット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.0 ★★★

Netflixが、同社最大規模の100億円超ともいわれる製作費を投じたオリジナル映画。劇場公開はせず、2017年12月22日から全世界同時配信を開始。初日からの3日間で全米での視聴が1100万件にのぼったと伝えられる。舞台は、オークやエルフなどさまざまな種族が人間と共存するパラレル世界のロサンゼルス。人間のウォードと、差別される種族であるオークのジャコビーはともに市警勤務の同僚。2人は、世界を破滅に導くマジック・ワンド(魔法の杖)をめぐる争いに巻き込まれていく。主演はウィル・スミスとジョエル・エドガートン。『スーサイド・スクワッド』のデビッド・エアー監督。

 

言いたい放題

キット♤ 17年のアカデミー作品賞候補になった『最後の追跡』と同じくNetflixが制作、ネット配信のみで劇場公開なしという作品。 主演にウィル・スミス、 ジョエル・エドガートン、 ノオミ・ラパスと一流どころを揃え、制作費9000万ドルと劇場公開用作品並の予算をつぎ込んだことで配信前からかなり話題になっていて、実際アメリカでは放映開始後3日間で視聴者は1100万に達したそうな(ニールセン調べ)。

アイラ♡ バディものという既視感のある世界やけど、そこに『指輪物語』でおなじみのエルフやオークがいてるという不可思議さ。物語の構成は陳腐やけど、この独特のギャップのある世界観はなかなか楽しめたね。

♤ 舞台は未来のロサンゼルスなんやろな。遠景からのビルのシルエットなどは未来風になっているけど、映画で描かれる日常生活はテクノロジーの進歩を感じさせるようなところもなく、感覚的には現代と大して変わらない。

♡ いわゆるパラレルワールドやね。ひとつ明確なのは、種族間差別が歴然と存在する社会だということ。オークなど、まぁ見た目も美しいとはいえないのやけど、歴然とした差別やいじめを受ける種族として描かれる。逆にエルフたちはすらりとした美男美女。こうしたファンタジー世界の住人を使うことでどきつさを回避しながら、いまのアメリカ社会のありさまを煮詰めて見せてる感じがした。

♤ エルフの居住エリアは街全体が綺麗で、行き交う人はウォールストリートのエリートのような風体やし、警察組織もトップはエルフ。ウォード(ウィル・スミス)のような第一線の警察官は、命の危険と隣合わせで人気のある職業じゃないけど人間の仕事。はみ出し者のウォードが罰ゲームのように組まされた相棒が、オークとして初めて警察官となったジャコビー(ジョエル・エドガートン)で、この2人が関わった事件から話が展開していく。

♡ ジャコビーは苦労して警官になった努力の人。ウォードはオークである相棒への偏見が取り払えず、対等な関係であることをなかなか認めない。でも2人が謎めいたエルフの少女とマジック・ワンドと遭遇し、いろいろあってやがて信頼と絆が深まっていく・・・みたいな筋立て自体は目新しいものではないのやけどね。

♤ 悪徳警官やギャング、エルフの悪者組織「インファーニ」などが絡んで話が進んでいく。まぁ娯楽映画としては十分楽しめるけど、なんというか映画そのものが軽くて深みがない。Neflixとしては『最後の追跡』に続けという意図があったのかもしれないが、映画の出来としては遠く及ばない。

♡ とはいえウィル・スミスは余裕の演技。饒舌でノリもいい。敵役のノオミ・ラパスも、表情ひとつ変えずにアクションを決める冷徹な役がほんとにハマるわね。オークのジョエル・エドガートンについては、元の顔立ちがまったく判別できないほどのメイクアップで、これやったら誰でもええやん!って感じやけど、ナイーブで真面目なジャコビーを好演。

♤ 『ロード・オブ・ザ・リング』の世界で出会うものと思っているエルフやオークが、こんな現実世界の延長上に現れるという発想は非常に目新しい。マジック・ワンドなどの小物もあって、この奇妙な世界観はそれなりに楽しめる。あと、フェアリー(妖精)っていうのが出てくるんやけど、完全に害虫扱いで人格すら与えられてないなど、笑いを取るところも組み込まれている。

♡ フェアリーといいながら、世にも気色の悪いクリーチャー。ハエや蚊みたいに潰されるだけの存在やけど、中途半端にでっかいから誰も手を出したがらない(笑)

♤ 配信後の視聴が順調なことから続編の制作はすでに決まっているらしい。舞台背景としては、2000年前に9種族が力を合わせて“ダーク・ロード”なる最強ボスを封じ込めたということになっているようなので、新たな種族を登場させる可能性もあるのかな。

♡ 劇場公開をしないNetflixの長編作は、予算も潤沢で相当高いクオリティのものを出してくるので、やっぱり目が離せない存在ではあるね。

 

予告編

スタッフ

監督 デビッド・エアー
脚本 マックス・ランディス

 

キャスト

ウィル・スミス ウォード
ジョエル・エドガートン ジャコビー
ノオミ・ラパス レイラ
ルーシー・フライ ティッカ
アイク・バリンホルツ ポラード

 

レクタングル336

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