おすすめ度
キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.0 ★★★
スティーヴン・キングによる小説を、キング自身の脚本により映画化したアクションホラー。コミック作家のクレイは、ボストンの空港から別居中の妻と息子に電話をかけるが、バッテリー切れで通話が途切れる。時を同じくして、彼の周囲で携帯電話を使っていた人々が突如暴徒と化し、空港はパニック状態に。かろうじて地下鉄へ逃げ込んだクレイは、車掌のトムたちとともにその場を逃れ、妻と息子の住むニューハンプシャーをめざす。クレイを演じるジョン・キューザックが製作総指揮も兼ねるほか、サミュエル・L・ジャクソンが脇を固める。
言いたい放題
キット♤ スティーヴン・キングは好きな作家。映画やTVドラマの原作となった小説の数ではおそらくダントツで一番と違うかな。ただ映画の出来栄えは、名作クラスから低予算のB級というかC級というてもよさそうなのまで千差万別。ホラー作家として売り出して大成功してからも、得意ジャンルの一つとして長編・短編問わずホラー小説をせっせと量産してきたし、着想が絶妙なので、低予算でさくっと制作するのに格好の題材なんやろな。
アイラ♡ ただホラーに関しては、30~40分くらいのTVドラマの枠に収めるのにちょうどいいくらいの話が多くて、劇場映画の尺にまで引っ張るとちょっと厳しくなる感じ。2007年の『ミスト』がホラー系やけど、ダラボン監督の力技でもってる印象。例外は『キャリー』(デ・パルマ監督)と『ミザリー』(ロブ・ライナー監督)くらい。
♤ 名作といってよい劇場映画は『スタンド・バイ・ミー』(ロブ・ライナー監督)や『ショーシャンクの空に』(フランク・ダラボン監督)など、ホラーではなくヒューマンドラマやもんな。ホラー寄りでは『シャイニング』があるけど、監督のスタンリー・キューブリックが原作を無視して好きなように撮ってるので評価の分かれるところ。キング自身も気に入らず、20年後に自ら監督・脚本・出演までしてTVドラマ化してるけど評価は酷かったらしい。1986年にも『地獄のデビルトラック』という映画で監督・脚本を手がけて大コケしてるのに、どうも懲りん人なんやな。
♡ ストーリーテラーとしては比類ない筆力を持ってはるのにねぇ。本作でも脚本を手がけてるわけやけど、なまじ原作を一番理解している人が脚本に携わると、観客の視線に立って原作を咀嚼するという部分が欠けてしまって、結果独りよがりになりがちなんやと思うわ。
♤ というわけで、我々も一抹の不安を感じながら映画館へ足を運んだんやけど・・・。
♡ 前半1時間くらいは「金返せ」気分で観てたよ、私は(笑)。どんだけセットに予算ケチるねん!っていうほど、TVの2時間サスペンスみたいに普通のキャンプ場でロケしてるし、ゾンビは安っぽいし、あまりのイタさに気恥ずかしさを覚えた。
♤ いや、決して名作とはいわないけど、わりと気に入ったで。全体としてはキング原作の失敗系の低予算映画の雰囲気を残しつつ(笑)、観れる映画にまとまっている。主演にジョン・キューザックとサミュエル・L・ジャクソンという一流どころを配して、予算を2人のギャラに集中投下したことが功を奏したな。もし予算をケチって無名俳優を主役に充ててたらめちゃくちゃ残念なことになってたな。
♡ 話は、携帯電話(cell phone)を使っていた人々があるとき一斉に暴れだして、ゾンビみたいになるというところから始まるのやけど・・・。
♤ 突然怪現象が起きるのはキングものの常道やね。その原因や首謀者についてはまったく説明されないまま、主人公たちがわけのわからん現象にとまどい振り回されながら前へ進んでいくというパターン。
♡ どうせ説明不能な怪異譚やねんから、『世にも奇妙な物語』みたいな短編TVドラマ向きやと思うのやけど、なんで2時間の尺にするかなぁ。
♤ ま、ええやん(笑) そのかわり突っ込みどころは満載やで! ほとんどの人間がゾンビ化すれば発電所とかも機能停止するやろに、行く先々で電気が使えるとか、色々あるけどそれにこだわってはいけない。演出や撮影などにも特に見るべきものはないけど、主演2人の個性で回しきったという感じは嫌いではない。
♡ 「金返せ」モードが解消したのは、パニックがいったん落ち着いて、登場人物たちが団結して進んでいく段階になったころから。これもキング独特なんやけど、物語にさほどの意味を与える内容ではないにせよ、キングは人と人との交わりや登場人物のキャラクターを彼らの会話を通じて上手に掘り下げる。そこで人物への共感や思い入れが形成されていくんよね。このあたりからまぁ安心して観てたけど。ただ、ラストが何とも不可解やったね。
♤ 一応ハッピーエンドなんかと思ったが、最後の場面で「あれっ」と思わせる。よう分からんけど、2種類のエンディングを用意して、好きな方を選べということか?
♡ ゾンビ化しても、内面では永遠の平穏を得ているということなのかとも思った。で、そのシーンに流れてた曲が『You’ll Never Walk Alone』。ミュージカル『回転木馬』の劇中曲で、リヴァプールFCのアンセムとしても有名。FC東京も使うてるらしいけど・・・。“一人じゃない”というこのタイトルの意味するところを考えると、よけいわけのわからん結末やったかな。わからんでもええか(^_^;)
予告編
スタッフ
監督 | トッド・ウィリアムズ |
脚本 | スティーブン・キング |
アダム・アレッカ |
キャスト
ジョン・キューザック | クレイ・リドル |
サミュエル・L・ジャクソン | トム・マッコート |
イザベル・ファーマン | アリス・マクスウェル |