レビュー

マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!(My Generation)

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My Generation

キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 4.0 ★★★★

“スウィンギング・ロンドン”と呼ばれ、いまも世界中の音楽やアートに影響を与え続けるイギリスの1960年代カルチャーを描いたドキュメンタリー。プロデュースとナビゲーターはイギリスの名優マイケル・ケイン。ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フーなどのミュージシャン、モデルのツイッギー、ファッションデザイナーのマリー・クワントなど、6年がかりで50以上のインタビュー撮影を敢行。貴重なアーカイブ映像も盛り込みながら、時代をリードした人々の証言を通して当時の熱狂とその終焉までを追っていく。ピーター・バラカンが日本語字幕監修を担当。

 

言いたい放題

キット♤ タイトルの「マイ・ジェネレーション」は、イギリスのロックバンド「ザ・フー」が1965年に発表した曲のタイトル。この映画はロンドンの60年代を熱狂させたカルチャーをインタビューと過去のアーカイブで綴った力作。マイケル・ケインがナビゲータとなって、自身の過去の映像を交えながら進行していくドキュメンタリー。

アイラ♡ そのときその場所に生まれていたかったところがあるとしたら、私は何といっても60年代のロンドン。本作は、ロンドンの若者たちの爆発的なエネルギーが古臭くて退屈な街をカラフルに染め上げていった、まさにその10年間を俳優マイケル・ケインが案内する、それはもう珠玉のひとときでありました。

♤ 映像として登場するのがポール・マッカートニー、ジョン・レノン、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、マリアンヌ・フェイスフル、ツィギー、デイヴィッド・ベイリー、メアリー・クワント、ジョン・レノン、デイヴィッド・ボウイ、ヴィダル・サスーン、デイヴィッド・ホックニー、ジョーン・コリンス、サンディ・ショウなどなど、錚々たる顔ぶれ。これだけで十分見応えあり。映画中の音楽も当時の曲が満載。

♡ 映画『ボヘミアン・ラプソディ』にも出てくるBIBAのカラフルな店内の様子まで垣間見ることができるのよね。“スウィンギング・ロンドン”と呼ばれて、音楽やファッション、アートなどのストリートカルチャーが一気に花開いた時代といわれてはいるものの、本当のところは、長いあいだ心理的に抑圧されてきた労働者階級の若者による、ある種の階級闘争が試みられた時代というべきなんでしょう・・・ということがわかった映画でもあるわね。

♤ 60年代のイギリスといえば、第二次世界大戦を経て、かつて栄華を誇った大英帝国の国力はとうに落ち、世界の覇権をアメリカに譲った時期。本作からもわかるように、イギリスは我々が思う以上の階級社会で、それが大英帝国を支えていたわけやけど、国力の低下とともに中~下層の一般人、特に若者たちの抑圧に対する反動が各方面での爆発的な変革に繋がったと考えれば理解しやすい。見方を変えれば、「音楽」というものが階級のしがらみをぶち破る突破口になったのかもしれない。

♡ たしかに、階級社会という構造は私たち日本人にはとってもわかりにくくて、でも階級による言葉のアクセントの違いは、たとえば本作にも映像で登場するモンティ・パイソンなんかもずっとテーマにしているし、さらにポール・マッカートニーやロジャー・ダルトリー(ピーター・バラカン氏監修なので、ロジャー・ドールトリーと表記されてる)たちの証言を得てぐっとリアリティを持って伝わってくるわけよね。そのマイケル・ケイン自身、労働者階級出身でコックニー訛が抜けず、俳優としてえらく苦労したことを面白おかしく語ってみせてるし。で、当時すでに30代だったという立場から、少しお兄ちゃん的な視線でこの時代をナビゲート。彼自身の若い時代の映像といまの彼とをオーバーラップさせながら、リアルで絶妙の語りを見せててよかった。

♤ マイケル・ケインは今でこそ歳を重ねてイギリス紳士然としてるけど、大作だけでなくB級と言わざるを得ないような軽い映画にも出演して偉ぶったところがない俳優。上流階級の支配が続いていたら日の目を見ることがなかった人なので、彼の語りには説得力がある。

♡ 保守的な旧世代はもちろんこの現象に眉をひそめ、権威的なBBCに至ってはレコード放送に規制をかける。この顛末、すなわち若者たちが海上に浮かべた船から海賊放送を行ったことは映画『パイレーツ・ロック』でお馴染みやけど、その実際の映像が出てくるのも嬉しいこと。

♤ 階層社会の重しから逃れて新しい文化が輝いたイギリスの60年代。しかし終盤では、若者がドラッグに蝕まれていく姿を見せてこの時代に陰りが近づいていることを仄めかす。

♡ マイケル・ケインは、「若者が志向した未来が自分たちを締め出すことになった・・・」というような表現で、この時代の終焉を惜しみ、69年7月の、ある人気バンドのメンバーの死をもって時代の終焉を象徴させてる。実際、この時期を機に才能あるミュージシャンがドラッグの過剰摂取やドラッグ絡みの事故で命を落としていったわけやし・・・。ポール・マッカートニーをはじめ、このときすでに世界のトップミュージシャンとなっていた人々が、それとの関わりについて語る映像にも改めて衝撃を受けたわ。

♤ 何事にも始まりがあれば終りがあるとはいえ、あまりに力強い時代の輝ける遺産やな。

♡ その後の若者カルチャーも、60年代のロンドンがなかったら違うものになってたんやろなぁと思うと、なんともしみじみとしてしまう・・・。

 

予告編

スタッフ

監督 デビッド・バッティ
製作 マイケル・ケイン
ディック・クレメント
イアン・ラ・フレネ
サイモン・フラー
フーラ・クローニン・オライリー
製作総指揮 ジェームズ・クレイトン
プレゼンター
マイケル・ケイン
脚本 ディック・クレメント
イアン・ラ・フレネ
字幕監修 ピーター・バラカン

キャスト

マイケル・ケイン
デビッド・ベイリー
ジョーン・コリンズ
ロジャー・ダルトリー
ドノバン
ダドリー・エドワーズ
マリアンヌ・フェイスフル
バーバラ・フラニスキ
ルル
ポール・マッカートニー
テリー・オニール
デビッド・パットナム
メアリー・クワント
ミム・スカラ
サンディ・ショウ
ペネロピ・トゥリー
ツイッギー

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