おすすめ度
キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆
ロビン・ウィリアムズが映画化構想をあたためていた風刺漫画家ジョン・キャラハンの半生を、脚本・監督を受け継ぐ形となったガス・ヴァン・サントが企画から20年越しに映画化。主演にホアキン・フェニックス。ジョナ・ヒル、ジャック・ブラック、ルーニー・マーラなどがが脇を固める。2018年・第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。オレゴン州ポートランドで酒びたりの毎日を送っていたキャラハンは、友人の運転する自動車の事故で半身不随となる。ますます自暴自棄な暮らしを続けるキャラハンは周囲とも衝突を重ねていくが、とある断酒会の主催者と出会い、持ち前の才能で風刺漫画家としての生き方を模索していくようになる。
言いたい放題
キット♤ 交通事故で首から下が全身麻痺となり、やがて風刺漫画家になったジョン・キャラハンという人の伝記映画。もともとロビン・ウィリアムスが映画化権を買い取って自分が主演するつもりだったのが、実現する前にロビン・ウィリアムスもジョン・キャラハンも他界してしまった。その後ガス・ヴァン・サント監督、ホアキン・フェニックス主演での映画化が実現した。
アイラ♡ 主人公のジョン・キャラハンは恵まれない少年時代を送ったことが原因で重度のアルコール依存症に陥り、自堕落な生活を続けた挙げ句、悪友の運転する車が事故って自分だけ半身不随の身に。手が不自由でも風刺漫画を描く才能があることに気づき、それを機に立ち直っていくのかと思えば、相変わらず酒への依存は治らず、介護人にもわがまま放題。もはや同情も共感もできないキャラで、落ちるとこまで落ちてしまえ!と呪いたくなるほどのひどさ。それが、とある断酒会への参加をきっかけに変化が生まれていく・・・といった内容。
♤ というと、事故による半身不随やアルコール依存などの困難を乗り越えていく話のようやし、観る前はそういう作品なんやろと思ってた。それよりも本作では、依存症からから立ち直るための断酒会やそのメンバー、ジョンを支える人々のことに思ったより重点が置かれてた。特に会の主催者でパトロンでもあるドニー役のジョナ・ヒルのちょっと現実離れしたようなキャラクターが良かったな。
♡ ジョンが一向に生き方を改めようとしないのは、自分の境遇に対する憐れみから抜け出せないからだということが次第に理解されていく。監督は、そこまでをゆっくり時間をかけて撮っていく。アメリカ映画にはよく登場する断酒会やけど、本作での主催者ドニーは、常に知的で鷹揚な態度でジョンに接し、自らゲイであることに苦しみ酒浸りの日々を送っていたことをジョンに告白する。“自己と向き合う”というのは簡単やけど、大抵の人にはこれが難しい。それでも、自己憐憫こそが自らに傲慢さを許していたということにジョンが気づき、これまで関わってきた人々のもとを順に訪ねはじめたとき、監督の思いがわかったような気がしたわ。ガス・ヴァン・サント作品ってちょっと青臭い理想主義的なとこがあるけど、メッセージはピュアでストレートやね。
♤ これを観たいと思ったのは、何より主演がホアキン・フェニックスやったから。最近作では『ザ・マスター』や『ビューティフル・デイ』など、粗野であまり教養のない役の印象が強いけど、『教授のおかしな妄想殺人』では哲学の教授役で違う一面を見せるような達者な俳優。本作でもクセの強い主人公を好演してた。
♡ 確実に独特のポジションを築きあげてきたという印象やね。彼女役のルーニー・マーラが美しい北欧美女役で出てくるのやけど、ストーリーへの影響力がいまひとつ薄くて残念。それよりやっぱり、悪友役のジャック・ブラック。ジョンの訪問を受けたときのリアクションは本作最大の見どころじゃないかしらね。一生消せない罪悪感を背負い、でも何の対処もしてこなかった男の苦悩を一瞬で表現しきってた。自ら主演するつもりだったというロビン・ウィリアムスもまた、アルコール依存に苦しんでいたというけど、彼がジョンを演じたらどんな感じやったかなと想像。でもここは、陰の濃いホアキン・フェニックスが演じて正解やったような気がする。
予告編
スタッフ
監督 | ガス・ヴァン・サント |
脚本 | ガス・ヴァン・サント |
キャスト
ホアキン・フェニックス | ジョン・キャラハン |
ジョナ・ヒル | ドニー |
ルーニー・マーラ | アヌー |
ジャック・ブラック | デクスター |