レビュー

SING シング(Sing)

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おすすめ度

Singキット♤ 4.0 ★★★★
アイラ♡ 4.0 ★★★★

『ミニオンズ』『ペット』などのヒット作を手がけたイルミネーション・スタジオによる長編アニメーション。声優にマシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン、ジョン・C・ライリー、タロン・エガートン、トリー・ケリーらを起用し、誰もが知る新旧ヒット曲を歌い上げる。監督は『リトル・ランボーズ』のガース・ジェニングス。コアラのバスター・ムーンが経営する劇場は赤字続き。起死回生のため素人歌唱コンテストを企画したところ、賞金額のミスプリントで応募が殺到。その中には子だくさんのブタの主婦・ロジータに、若いゴリラのギャング・ジョニー、パンク・ロッカーを目指すヤマアラシの少女・アッシュ、はったり好きなネズミのマイクたちがいた。内気なゾウの少女・ミーナの助けを借り、オーディションが進むが…。

 

言いたい放題

アイラ♡ 傑作アニメというわけでは決してない。物語も単純なら、登場人物のキャラにも特にひねりがあるわけじゃないし。全員が歌と賞金のために頑張る!というだけの話なのに、ふっと幸せな笑みに包まれる映画。予想外によかったよ!

キット♤ 封切りからすでに4週目。アカデミー賞受賞作の発表と重なったりして、観に行くのがついつい後回しになってしまったけど、いまだ観客動員数は4週連続1位という人気ぶり。ちなみに、2位は『モアナと伝説の海』、3位は『ゴースト・イン・ザ・シェル』。春休みとぶつかったせいもあるやろけど、アニメ・特撮ものが上位を独占している。で、日本では字幕版よりも吹き替え版の上映数が圧倒的に多い。渋谷なんか日本語吹き替え版のみやで! ということは、まず基本的にアニメの出来のよさがヒットの一因なんやろな。

♡ とはいえ洋楽好きとしては、声優陣に豪華な顔ぶれを揃えてすべての曲にしっかり命が吹き込まれてるというのは決して見逃せない部分。日本語吹き替え版のほうも、本格的に歌える人ばかりを揃えていて、なかなか評判いいみたいやし。

♤ 声の出演は、メインキャラクターで劇場のオーナーでもあるコアラのバスター・ムーンがマシュー・マコノヒー。ただし歌わない。あと、豚の主婦のロジータにリース・ウィザースプーン。『ゴースト・イン・ザ・シェル』で派手なアクションを見たばかりのスカーレット・ヨハンソンは、知らんかったけど歌える人で、ヤマアラシのアッシュ役で声を披露している。芸達者なセス・マクファーレンはネズミのマイク役で、フランク・シナトラばりのスタンダードジャズで楽しませてくれる。さらにゾウのミーナ役のトリー・ケリーやゴリラのタロン・エガートンのうまさにも魅せられるなぁ・・・。

♡ 大勢集まってくるオーディションの場面は、それこそ数秒ごとに色んな動物がとっかえひっかえ歌うのやけど、これがずいぶん多ジャンルにわたっていて、もっと聴かせてくれないものかと少々フラストレーションが。歌われるのもスティービー・ワンダー、エルトン・ジョン、ビートルズ、レディー・ガガ、テイラー・スウィフト、ジョン・レジェンド、あとゾンビーズやオランダのショッキング・ブルーなど。バックにもクイーン、ジプシー・キングス、歌劇『トゥーランドット』から『誰も寝てはならぬ』などなどが使われて、ちょっとした音楽のショーケースの様相。

♤ きゃりーぱみゅぱみゅの曲を歌うレッサーパンダのユニットが、いかにも欧米からみた日本って感じで爆笑やったな。

♡ あとやっぱりすごかったのがアニメーションの技術よね。もう随分前から、Pixarなどが出がける動画作品のテクスチャーの精密さには驚かされてたけど。

♤ その点について思ったのは、日本のアニメとアメリカのアニメの違いやな。日本のアニメはセル画を手書きする家内制手工業みたいなところから出発して技術を高めてきたので、今では3Dのモデリングを行っていても、そこから敢えて2Dのセル画風の画像に落として製作しているものが多い。ドラえもんの最新作など一部を除いて、『鉄腕アトム』のころから慣れ親しんだセル画のぺたっとした雰囲気で作るのが当たり前のようになっている。一方、アメリカはディスニーがアニメで成功して以来、セル画で3次元的な見せ方をしようという努力なんかしないで、いきなりコンピュータで3Dの画像を作る方へジャンプした。だから、アメリカの近年のアニメの歴史は、コンピュータとソフトウェアの技術革新の歴史とも重なるんや。

♡ 本作でも、動物たちの毛並みや水槽から溢れ出す水、倒壊する建物が巻き起こす粉塵など、実写かと思うほどのすごさなのに改めて驚嘆したわ。あと、関係ないけど、洗車の場面にはほろっときたよ~。

♤ アニメの精緻さというところでは、本作を製作したユニバーサル・ピクチャー/イルミネーション・エンターテインメントの技術は、後発ながらすでにディスニーに追いついたか追い越したかもしれないな。たとえば、終盤でステージ上空にヘリコプターが飛んでくる場面、歌っているネズミがそれにあおられて飛ばされそうになるところでは、ネズミの毛が風圧に翻弄されるところまで見せている。というわけで本作のヒットの要因は、実力派の俳優と歌手を声優に起用して、クオリティの高い歌を披露し、しかも最高水準のアニメのテクノロジーを駆使しているという三拍子揃った点やろと思う。

♡ 子ども向けと思われているかもしれないけど、音楽好きの大人の目と耳にも十分すぎるほど耐え得る作品ね。平然と電気や水道を泥棒するなんて!ってレビューもどこかで目にしたけど、教育的であることを求める話なのかしらね? ともあれ個人的には、やっぱり豪華な声優陣の声の演技と歌が楽しめる字幕版がぜったいお勧め! ただ日本語吹き替え版の歌も、ほとんど違和感のない仕上がりになっているそうなので、機会があれば観てみたい。

♤ 最後に、バスター・ムーンが映画の中で3回言う「All creatures great and small, welcome to …」というところの「All creatures great and small」はアメリカのテレビドラマの題名。アメリカ人なら、ここでどっと来るところなのかも。

 

予告編

スタッフ

監督 ガース・ジェニングス
脚本 ガース・ジェニングス

 

キャスト

マシュー・マコノヒー バスター・ムーン(コアラ)
リース・ウィザースプーン ロジータ(ブタの主婦)
セス・マクファーレン マイク(ネズミ)
スカーレット・ヨハンソン アッシュ(ヤマアラシ)
ジョン・C・ライリー エディ(ヒツジ)
タロン・エガートン ジョニー(ゴリラ)
トリー・ケリー ミーナ(ゾウ)
ニック・クロール グンター(ブタ、男性)
ジェニファー・ソーンダース ナナ・ヌードルマン(ヒツジのお婆ちゃん)

レクタングル336

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