レビュー

僕たちは希望という名の列車に乗った(Das schweigende Klassenzimmer)

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Das schweigende Klassenzimmer

キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 4.0 ★★★★

1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を見る。ハンガリー市民に共感した2人は、暴動で命を落とした人々への哀悼を示すため、2分間の黙祷をクラスに呼びかける。だがソ連の影響下にあった東ドイツでは国家への反逆行為とみなされ、人民教育相から1週間以内に首謀者を明らかにするよう迫られる。密告に応じて仲間を裏切れば、退学を免れ、エリートとしての道を歩むことができる。軽い気持ちから政治的タブーに触れ、人生を左右するほどの選択を迫られることになる彼らはどのような選択をするのか・・・。『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』のラース・クラウメが脚本・監督。

 

言いたい放題

キット♤ 1956年に当時東西に分断されていた東ドイツで起こった実話をもとにした作品。劇場予告を観た段階では特に惹かれるほどでもなかったけど、評判の良さに観にいったところ良作だった。ただドイツ映画は久しぶりで、俳優も全く知らない人ばかり。映画の舞台は第二次世界大戦後、東西に分断されたがまだベルリンの壁が作られる前の東ドイツ。独立した社会主義国とはいえソ連の衛星国みたいな位置づけで、限られた情報しか与えられない環境。この時期に起こったハンガリー動乱は、東ドイツでは反社会主義的な暴動と報道されていたが、西ベルリンの映画館でのニュースや、禁止されている西側のラジオ放送などから実態は圧政に不満を持った市民の蜂起とソ連による弾圧であることを知ることから話が展開してゆく。

アイラ♡ ベルリンに壁ができる前。検問はあっても人々は比較的自由に東西ベルリンを行き来していたんやね。主人公の高校生たちも、墓参りだとかって適当な理由をつけて列車で西ベルリンまで行って成人映画を観るなんてことを日常的にやってた様子。彼らは西で観たニュース映像で、ハンガリーの人々が蜂起したことを知りショックを受けるのやけど、本当に彼らを動かしたのは、ハンガリーのサッカー選手が動乱に巻き込まれて亡くなったこと。いかにも高校生らしいピュアさで、主人公のクルトとテオが2分間の黙祷をクラスに呼びかけたのも、彼への哀悼の意を表するためだった。ところが学校側はそれを反体制的行動と受け止め、政府に通報してしまう。

♤ 映画はここから、当時の社会主義政権が本来の理想とはかけ離れたものであったことを延々と見せつけていく。特に、学務局という部署の女性局員は首謀者を明らかにするよう生徒たちに要求。退学と引き換えに互いに密告させようとし、最後はエリックを犯人に仕立てることを生徒たちに強要するなど、ヒステリックなまでに強烈なことをしかけてくる。それに対して、それぞれ意見の違いはあっても仲間を裏切らない信念のようなもので結ばれていた生徒たちは立派やった。

♡ 進学クラスにいる彼らは、いい大学に入れればエリートコースに乗れる。政治家の父親を持つクルトは、父を不利な立場へ追い込みたくはない。テオの父親は鉄工所の労働者。彼も優秀な息子の将来に期待を寄せる父を落胆させたくはない。退学をちらつかされながらも、仲間との絆を貫こうとする彼らは潔かったね。体制に巻かれたくないと感じはじめる年齢ってこともあるかもしれない。高校生を演じるには、俳優たちがちょっと歳くってたように思うけど、でも舞台となる時代の暗いイメージとはちがって青春映画の爽やかさがあった。

♤ テオ、クルト、エリックを演じた3人がそれぞれの個性を生かした演技で良かった。しかもテオの父には社会運動で逮捕された過去があり、エリックの父親については、戦争の英雄と聞かされていたのに実はナチスの協力者で、処刑されていたということが次第に分かってきて物語に厚みを加えている。

♡ 彼らの親たちは、ナチス政権下から社会主義体制への移行を壮年期に実体験している世代。ナチスドイツ時代には人に言いたくない経験をした人もいて、事実を子どもに告げることができないでいる。真実を知ったエリックの狂乱も胸に迫る。本作は親世代にも焦点を当てることで、より長い時代を切り取っている点でも秀逸。間もなくベルリンには壁が築かれ、1900年代初頭まで長い社会主義体制の時代が続くわけやけど、実際のクルトたちがその後どうなったのかが知りたいよね。

♤ 原題の「Das schweigende Klassenzimmer」は「静かな教室」という意味で、クルトの提案で行った2分間の黙祷から取っている。邦題のほうは、当局によって閉鎖された教室の生徒の多くが西側へ亡命したことから選んだんやと思うけど、なんかちょっと違う気がする。

♡ 私はわりといい線行ってると思ったよ。西側には自由がある。でもクルトたちにとって、西への列車に乗るのは多くのものを捨てることでもある。痛みをこらえて父親と握手を交わした彼らを支えるのは希望だけ。多くを語らないラストシーンには彼ら一人ひとりの決意が満ちていてよかった。

 

予告編

スタッフ

監督 ラース・クラウメ
脚本 ラース・クラウメ

キャスト

レオナルド・シャイヒャー テオ・レムケ
トム・グラメンツ クルト・ヴェヒター
レナ・クレンク レナ
ヨナス・ダスラー エリック・バビンスキー
イザイア・ミカルスキ パウル
ロナルト・ツェアフェルト ヘルマン・レムケ
ブルクハルト・クラウスナー ランゲ国民教育大臣

レクタングル336

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