レビュー

夜に生きる(Live by Night)

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おすすめ度

「夜に生きる」のポスターキット♤ 4.0 ★★★★
アイラ♡ 4.0 ★★★★

『アルゴ』に続くベン・アフレックの監督作。自ら脚本と主演もつとめる。原作はアメリカでベストセラーとなったデニス・ルヘインのノワール小説。禁酒法時代末期のボストンで、市警察幹部の息子として厳格な家庭に育ったジョーは、父に反発しギャングの世界に足を踏み入れる。あるとき強盗に入った賭博場で、ジョーはエマという美女と出会いたちまち恋に落ちるが、彼女は対立組織のボスの情婦だったことから、彼の運命は大きく動き出す。共演にエル・ファニング、ブレンダン・グリーソン、クリス・メッシーナ、ゾーイ・サルダナ。

 

 

言いたい放題

アイラ♡ デニス・ルヘインの原作が緻密に描き込まれた上質のノワール小説だけに、“読んでから観る”だと厳しいかなと思いつつ臨んでみたら、なかなか手際よくまとめてたね。クリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』やスコセッシ監督の『シャッターアイランド』など、ルヘイン作品は名匠たちが映画化に取り組んできたけど、これはかなりいい出来やったと思う。

キット♤ 映画化権はレオナルド・ディカプリオが持ってたけど、自らは製作に退き、ベン・アフレックを口説いて撮らせたのやとか。結局彼が監督・脚本・主演の3役をこなしてるわけやけど、デニス・ルヘインという作家は文章が大変上手で読んでいてもぐいぐい引き込まれる。もちろん小説の構成が巧みでしっかりしてることはいうまでもない。なので、映画を観るにあたっての興味のひとつは、ベン・アフレックがこの原作をどう料理するかというところやった。

♡ 原作にはかなり忠実に映画化してたわよね。

♤ 刑務所に入っていた間の出来事や、米国軍隊の武器を盗むところなどがカットされたのはちょっと残念。その分、登場人物たちの人格の掘り込みや、主人公ジョー(ベン・アフレック)との関係の描写が今ひとつという感は否めない。それだけ端折ったにも関わらず、特に映画の前半はセリフの連続でいささか詰め込んだという感じがする。予備知識なしに観るとストーリーを追うのに大変かもしれない。

♡ 人間関係がかなり入り組んでるしね。ホワイトやペスカトーレといったギャングの親分たちや、ジョーの相棒のディオン、妻となるグラシエラなど、原作ではもっとじっくり人物像が描き込まれて納得する部分が多いだけに、そこは残念やけど。

♤ 逆に映像ならでは!と思ったのは、前半の警察とのカーチェイスのシーン、ボストンの街中やパーティ会場の風景、後半のタンパやキューバの町の風景、そして原作にはなかった雄大な自然の風景など。“読んでから観る”の利点は、活字から作り上げた自分のイメージと映像とを比較できることやけど、このあたりの表現力はうまいものがあるな。

♡ 暑苦しくてちゃらちゃらしたイメージのフロリダを、コロニアル風の美しい絵に落とし込んでみせたのはなかなかのもの。ベン・アフレックって、映像づくりに意外といいセンスを持ってるみたいね。

♤ 登場人物のイメージというところでは、ジョーと相棒のディオン(クリス・メッシーナ)は抱いていたイメージに近い。主要な女性3人のうち、グラシエラ(ゾーイ・サルダナ)、ロレッタ(エル・ファニング)はええのやけど、エマ(シエナ・ミラー)だけがちょっと厳しいなぁ。エマ役はかなり若いにも関わらず、後々までジョーとホワイトの2人を虜にし続けるくらいの女性やから、そうそう適役はおらんのかな。

♡ いわゆるファムファタールという存在やからね。原作ではもっと重要な役回りやったので、ここはおっ!という人をキャスティングしてほしかったな。対してエル・ファニングはほんとに素晴らしい女優になったね。赤ちゃんのころからスクリーンで観てるけど、ロレッタという過酷な運命を背負う女性の中に潜む、それこそ聖女から幼女までのさまざまな表情を一瞬で演じ分ける凄みが素晴らしかった。

♤ ゾーイ・サルダナは青や緑の皮膚をしたエイリアン役ばっかり回ってくる気の毒な女優やけど、本作では人間の役。グラシエラ役もええ感じやねんけど、登場時間が少なくて彼女の深い人間性を出すところまでは行かなかった。ベン・アフレックは、僕にとっては『ゴーン・ガール』でロザムンド・パイクにやられっぱなしのダメダメ亭主のイメージやねんけど、その後バットマンへ「そう来るか!」と唸らせる転身を果たしたとはいえ、根はイケてない男。なので、アイリッシュ系のもひとつ垢抜けないギャングというこのジョーの役は適役やった。

♡ ガタイもいいし見た目も悪くないのやけど、スーツは似合わないし、なんかもっさりしてるよね、ベン・アフレック(笑) 原作を読んでいる間、私はトム・ハーディのイメージで追ってたから、個人的には正直ちょっとがっかりしてるねん。別にええんやけど。

♤ 原作は一級品、出演者のキャスティングも悪くない、監督・脚本のベン・アフレックも頑張っている。なのにあと一息という感じがしてしまったのは、原作を2時間枠に入れようとすること自体に無理があったからかなという気がする。もうちょっと時間枠を広げて主要人物、特に女性の人格描写に時間をあてたら名作になったかも・・・。

 

 

予告編

スタッフ

監督 ベン・アフレック
原作 デニス・ルヘイン
脚本 ベン・アフレック

 

キャスト

ベン・アフレック ジョー・コフリン
エル・ファニング ロレッタ・フィギス
ブレンダン・グリーソン トム・コフリン
クリス・メッシーナ ディオン・バルトロ
シエナ・ミラー エマ・グールド
ゾーイ・サルダナ グラシエラ
クリス・クーパー フィギス本部長

 

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