レビュー

サバービコン 仮面を被った街(Suburbicon)

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Suburbicon

キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

1950年代。絵に描いたように理想的な郊外生活を実現するというふれこみで開発された新興住宅地サバービコン。ある日、黒人の一家が越してきたことから白人住民の嫌悪が高まっていた。同じころ、隣に住むロッジ家に強盗が入り妻が殺されてしまう。幼い息子のニッキーの生活もすっかり変わってしまう。やがて2人組の容疑者が見つかるのだが・・・。1950年代に実際に起きた人種差別暴動を下敷きに、サバービコンの一角で起きる事件をサスペンスタッチに描く。ジョージ・クルーニー監督作品。ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の脚本にクルーニーも参加し、彼と親交の深いマット・デイモンが主演を務めた。

 

言いたい放題

アイラ♡ ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の未発表脚本にジョージ・クルーニーが共同執筆と監督として加わり製作した作品。小悪党がケチな悪事に手を染めたもののすんなりとは行かず、あれよあれよというまに惨事が拡大してすべてが修羅場と化す・・・という展開を得意とするコーエン兄弟らしさが本作でもたっぷり味わえた。

キット♤ 白人しか住んでいない郊外の新興住宅地に黒人一家が引っ越してきて、時を同じくしてロッジ家では強盗殺人事件が起こる。容疑者も捕まるのやけど、幼い息子ニッキーも何かがおかしいことに気づいていくという話やけど、感想を一言でいうと、「惜しい」やな。コーエン兄弟らしいブラックユーモアが効いた「変な」映画であるところは期待通り。前作「ミケランジェロ・プロジェクト」の監督で大外ししたクルーニーも、本作に関しては歯切れのよいいい感じで撮っている。けど、なんでコーエン兄が監督せえへんかったのかな? クルーニーは俳優だけじゃなくて監督、制作をやっていきたいようやけど・・・。

♡ 役者としては遅咲きで、でもブレイクしてからは正統派二枚目以外にも積極的に役柄を広げてるので、俳優に専念しても面白い存在感を発揮していけるやろにね。それはさておき、「惜しい」の理由は?

♤ きらりと光る部分はたくさんあって、うまく出来ていると思う反面、どうも構成に引っかかる。黒人一家の話はどうしても必要やったんかな。コーエン兄弟の映画には、最初なんだか分からないが、観ているうちに話が通って、最後はなるほど!というまとまり方をする作品が多い気がするけど、本作にはそれがなかった。

♡ 白人コミュニティに黒人一家が引っ越してきたことで実際に起きた1957年の人種差別暴動を下敷きにしているということなんやけど、私もこの一家のエピソードとロッジ家の事件とが何らかの関連性を持ってくるものと思ったのやけどね。

♤ マット・デイモン演じるガードナー・ロッジが、苗字のせいでユダヤ人と勘違いされていたという場面があったり、義兄がガードナーの宗派が聖教会ーカトリックとプロテスタントとの中間的な宗派らしいけどーだから信用できないというくだりがあったりするけど、人種差別やマイノリティ差別という部分を強調したかったと考えても、どうもしっくりとつながってこない。

♡ 民族紛争などについて社会的な発言をすることの多いクルーニーなので、一家の家の周囲に板塀をめぐらせる場面など、トランプ大統領の「壁」発言を意識したのかなとも・・・。

♤ いっそ黒人一家の部分を切り離して、保険金殺人のサスペンス映画として作れったほうが面白い映画になったのと違うかな。ドアの下の隙間から見える隣室の人の影を見て少年が怯えるところや、ジュリアン・ムーア演じるマーガレットの殺害場面をシルエットで見せる部分、ベッドの下に隠れた少年から脚しか見えないところなど、随所に50年代に活躍したサスペンスの巨匠ヒッチコックへのオマージュを感じてすごく面白いし。そこにマット・デイモンが子供用自転車を漕ぐところや、ジュリアン・ムーアのネジの外れた演技、子供が友達からヘビをもらうところなど、コーエン兄弟ならではの崩しが混ざってて、全体としては非常に良い感じなだけに・・・惜しい。

♡ そうそう。シリアスやのにブラックコメディの味付けをして、ところどころで緊張感に空気穴をあけるのがコーエン作品らしいところ。消防自動車の暴走によるカークラッシュなんか、うまいこと伏線をつくってたしね。ジョージ・クルーニーもそれを面白がる感性は持ってると思うのやけど、ロッジ家の惨劇と人種差別暴動を並行して描くなら、街の人々の不満が爆発しついに暴動が頂点に達してしまう経緯をもう少し丁寧に描き込んでもよかった。暴動のエピソードの収拾が中途半端やったね。

♤ 出演者では、保険会社の調査員役のオスカー・アイザックがええ感じやな。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のダメロン役でブレイクしたが、その前にコーエン兄弟の映画「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」でしっかりした演技を見せているので実力派としての今後が楽しみ。ジュリアン・ムーアのちょっと知恵が足りなくて引きつった感じも良かった。

♡ 張り付いたような作り笑いさせたら、彼女の右に出るハリウッド女優はいてないと思うほどやね。

♤ けどマット・デイモンについてはどうかなぁ、僕は失敗と思う。50年代の大企業の財務部長の役なら、ヒチコックにならうならケーリー・グラントかジェイムス・スチュアートみたいなシュッとした人をあててほしかった。昔風の二枚目はもう絶滅してしまったから、今ならテレビドラマ『MAD MEN マッドメン』で売り出したジョン・ハムあたりで見てみたかった気がする。

♡ 全体にはすごく好きな作品なのやけど、ことニッキー少年については後味の悪さが残ったな。コーエン兄弟作品の『ファーゴ』だと、婦警夫妻の何でもない日常を短く描くことで惨劇の余韻を和らげてたけど、ニッキー少年にはそれがない。小さい子どもだけに、これからどうするんよ?という思いが立ってしまって・・・。ラストシーンに何らかの救済がほしかった。

 

 

予告編

スタッフ

監督 ジョージ・クルーニー
脚本 ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
ジョージ・クルーニー
グラント・ヘスロフ

 

キャスト

マット・デイモン ガードナー
ジュリアン・ムーア ローズ/マーガレット
オスカー・アイザック バド・クーパー
ノア・ジュプ ニッキー
グレン・フレシュラー スローン
アレックス・ハッセル ルイス
ゲイリー・バサラバ ミッチ
ジャック・コンレイ ハイタワー
カリマー・ウェストブルック デイジー・マイヤーズ
トニー・エスピノサ アンディ
リース・バーク ウィリアム・マイヤーズ

 

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