おすすめ度
キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 4.5 ★★★★☆
物語がすべてPCの画面のなかで展開していくというユニークな手法によるサスペンス作品。16歳の女子高生マーゴットが突然失踪し、行方不明事件として捜査が始まるが、手がかりはなく、家出なのか事件なのかもわからない。生死を分けるとされる37時間が経過し、父親のデビッドは娘のPCにログインしてInstagramやFacebook、TwitterなどのSNSにアクセスを試みるが、そこで思いがけない娘の私生活と交友関係を知ることになる。主演は『スター・トレック』シリーズでヒカル・スールーを演じるジョン・チョウ。製作に『ウォンテッド』のティムール・ベクマンベトフ。監督は、Googleグラスだけで撮影したYouTube動画で注目を集めた27歳のインド系アメリカ人、アニーシュ・チャガンティ。
言いたい放題
キット♤ アニーシュ・チャガンティという無名のインド系アメリカ人監督のデビュー作。全編を通してPCの画面だけを見せることで1本の映画を作ってしまったことで注目された。PCやスマホで写真や動画の撮影、メールのやりとりやビデオ通話など、可能なことが飛躍的に増えて、かつその裏側ではSNSや検索エンジンなどオンラインならではのサービスが動いているこの時代の特性をうまく映画作品にしてる。10年前ならこういう発想は出てこなかったな。
アイラ♡ 2012年に5部門でオスカーに輝いた『アーティスト』や今年最大の話題作となった『カメラを止めるな』と同様、二度とこの手は使えない!というタイプの作品ではあるわよね。突然失踪してしまった娘を探す父親の物語なんやけど、制作手法の斬新さだけでなく、一流のミステリーサスペンス作品としてしっかり成立していることが評価ポイント。
♤ 過去の出来事ですら、PCの画面を使って説明しているのが面白い。たとえば主人公デビッドの妻はすでに病気で亡くなっているのやけど、過去の発病から闘病、再発して亡くなるまでの時系列を、当時のPCとその環境とともに見せている。つまり古い記憶はWindows 3.1のPCに保存された画像。それが新しいWindowsやMacintoshへと変わっていき、写真は動画に取って代わられ、通信もモデムでのパソコン通信だったのがインターネットへと進化。Webブラウザが登場してFacebookやInstagramが使われていくという具合。もちろん、これらはすべてPCの画面の映像で表現できる。
♡ 長年PCを使ってきた人たちには、自分が経験してきた作業環境の変化と、主人公たち家族の時間の流れを重ねあわせることができるのよね。
♤ 娘のマーゴットと急に連絡が取れなくなってしまい、父親は娘の交友関係を調べるため、彼女のPCに入ってSNSへのログインを試みる。そのときGoogle検索やInstagram、Facebook、Googleマップなどおなじみの画面が次々と出てくるけど、こういうのを使っていない年配の人は何をやっているのか分からないやろな。
♡ パスワードがわからず、新しいパスワードを設定しようとしてあちこちたらい回しされ、最終的に当てずっぽうで入れたパスワードがヒットするあたり、日ごろ似たような経験をしている人たちはにやにやしたことでしょうね。ず~っとPCの画面を見せられるとはいっても、これは訳のわからないハッカーたちの話ではなく、私たちのありふれた日常を切り取っているからこそのリアリティといえる。
♤ デビッドが義弟に疑いをかけ問い詰めるシーンがあるけど、これをPCの画面を通じて見せるため、事前に隠しカメラを仕掛けてPCをモニターとして使っている。実写場面を使わないための苦肉の策ともいえるけど、警察に証拠映像を提出するという理由づけがあるので不自然さはまったくない。こういうところまでよく考えられている。
♡ 物語も緻密に練り込まれていて、最後までなかなか犯人が浮かび上がってこない。犯人がわかってからも、さらに意外な真相が待っていて最後まで飽きさせない。そしてラストに至って、観る人全員が大きなカタルシスを得ることができる。表現手法やアイディアこそ斬新だけど、決してそれに頼ってはいない骨太な作品よね。
♤ SNSなど便利なツールのおかげで、親もいつでも娘と連絡を取れると思い込んでいるんやけど、ひとたびこういう出来事に直面すると、娘の交友関係を全く知らなかったことに愕然とする。家族関係が昔とは違ってきていることを改めて考えさせられる作品でもある。
予告編
スタッフ
監督 | アニーシュ・チャガンティ |
脚本 | アニーシュ・チャガンティ |
セブ・オハニアン |
キャスト
ジョン・チョウ | デビッド・キム |
デブラ・メッシング | ヴィック捜査官 |
ジョセフ・リー | ピーター |
ミシェル・ラー | マーゴット |