レビュー

おかえり、ブルゴーニュへ(Ce qui nous lie)

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Ce qui nous lie

キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

フランス・ブルゴーニュ地方のワイナリー(ドメーヌ)を舞台に、ここで成長した3人兄弟それぞれの生き方を描く。世界を旅するため家を出た長男のジャンは、オーストラリアでワイン醸造者に。末弟のジェレミーは別のドメーヌの婿養子になり、真ん中の妹ジュリエットが家の実質的な後継者となっていた。余命いくばくもない父親に会うため故郷に戻ったジャンは弟妹らと再会するが、ほどなく父親は亡くなり、3人はドメーヌの相続という問題と直面する。父親を欠いたまま葡萄の収穫とワインの仕込みを進める彼らは、それぞれに悩みや問題を抱えていた。監督は、『猫が行方不明』『スパニッシュ・アパートメント』のセドリック・クラピッシュ。

 

言いたい放題

アイラ♡ ワイン造りと家族模様を重ねて描いた、なかなかの佳作。品質のよいワインが造られていく、その過程の奥深さを垣間見せながら、相続問題を軸に兄弟一人ひとりの来し方やこれからの人生の選択を描いていく。フランス映画っぽい毒気はないけど、好きな作品。

キット♤ ブルゴーニュのワイナリーに育ち、10年ぶりに戻ってきた長男は、父親と不仲で家を飛び出して世界を放浪。いまはオーストラリアでワインを造っているがパートナーとの関係が微妙。ワイン造りの能力はありそう。妹は父親を手伝っていたので味覚や感性に優れているが、自分の判断力にまだ自信が持てていない。弟は、別のワイナリーの娘と結婚していて、義理の両親からの干渉に辟易している。兄や姉ほどのワイン造りの能力は持ち合わせていないが、兄たちの後を追いかけて育った末っ子らしい優しいキャラクター。

♡ 父が亡くなり、3人で今年の葡萄を収穫し、ワインを仕込んでいく様子がすごく興味深いのよね。3人とも、幼時からワインづくりを父にみっちり仕込まれ、何日後に収穫するか、実のついた小枝をどれくらい取り除くかなど、父ならどうしただろうかと考えながら作業を進めていく。収穫時には多くの人を雇い入れ、その管理もしなくてはならない。1年をかけて納得のいくワインを生み出していくことの困難さが次々と描かれていて面白かった。

♤ それと並行して、父が亡くなったことによる遺産相続の問題が浮かび上がる。思いのほか多額の相続税がのしかかってくるが、土地の処分には3人の合意が必要で、相続税を払うためには葡萄畑を部分的に売るか、ドメーヌ全て手放すかといった問題に直面する。それぞれの考えや立場の違いでなかなか結論が出せないところへ、収穫時に一時雇用する労働者や弟の義理の両親、オーストラリアから来た長男の家族などの問題が絡んでくる。

♡ といって大きな波乱があるわけではない。だからこそ、観る人それぞれの共感ポイントがどこかにあったりして、その描き方がなかなかうまいなぁと思ったわ。3人の根っこには、子どものころから父に叩き込まれたワイン造りへのプライドや情熱が根強くあって、この共通の思いがやがてひとつの解決を出していく。後味のいい締めくくり方やったのと違うかな。

♤ 面白かったのは、やっぱりワイン造りの工程やね。ぶどうの糖度を見ながら収穫のタイミングを決めたり、収穫時期の天気の判断、季節労働者への仕事の指示など、ワイナリーならではの仕事の一部を垣間見れるところは興味深い。「除梗率」とか聞いたこともないような言葉も出てくるけど、勉強にもなった。

♡ 収穫を終えた日の慰労会なんて、きっとこの地方では何百年も前からこんなお祭り騒ぎをドメーヌごとに繰り返してきたんやろなと感じさせる膨らみがあって面白かったわ。

♤ 物語のかなりの部分がワイナリーという舞台設定に依存するもので、それがこの映画の特色。それを取り除けば、特に目新しくもない家族ドラマになってしまうとは思うけど。

♡ それだけに、もう少し3人の個性を掘り下げてもよかったかもしれないけどね。特にジュリエットの苦悩って、わかりにくいことだけに何か描きようがなかったかな・・・と。

 

予告編

スタッフ

監督 セドリック・クラピッシュ
脚本 セドリック・クラピッシュ
サンティアゴ・アミゴレーナ

 

キャスト

ピオ・マルマイ ジャン
アナ・ジラルド ジュリエット
フランソワ・シビル ジェレミー

 

レクタングル336

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