おすすめ度
キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.0 ★★★
キューバ映画。主人公のモデルは、実在した旧ソビエトの宇宙飛行士で「最後のソビエト連邦国民」とも呼ばれたセルゲイ・クリカレフ。東西冷戦が終わろうとしていた1991年。キューバのハバナに住む大学教授セルジオは、宇宙ステーション滞在中のセルゲイからの無線を受信し、交信を続けるうちに2人は親友となる。やがてソ連が崩壊し、セルゲイは帰還無期限延長を言いわたされることに。セルゲイを救うため、セルジオはあるアイデアを思いつく。監督は、『ビヘイビア』などを手がけたキューバ人のエルネスト・ダラナス・セラーノ。
言いたい放題
キット♤ たぶん初めて観るキューバ映画。
アイラ♡ うん、たぶん初めて。
♤ キューバは社会主義国で主要な産業はサトウキビ生産。決して豊かではない国。かつては同じ社会主義国のよしみでソ連からかなりの資金援助を得ていたけど、ソ連の崩壊で頼るべきスポンサーを失い経済は大混乱。この映画の舞台となるのはまさしくソ連崩壊の1991年。
♡ 映画の冒頭でもそのあたりが手際よく語られて、社会派ドキュメンタリー映画のような始まり方。キューバの市民を経済的な不安が襲いはじめた時期であることを知らせ、やがて主人公のひとりセルジオの暮らしへと流れが切り替わっていく。
♤ セルジオはハバナに暮らす大学教授。もうひとりの主要登場人物が、ソ連改めロシアの宇宙飛行士セルゲイ。セルゲイはソ連時代から宇宙船ミールに滞在してたんやけど、宇宙におる間にソ連が崩壊。地上側も大混乱で、セルゲイを地球に戻すことができなくなってしまった。宇宙船滞在を余儀なくされているセルゲイとセルジオの接点は、セルジオの趣味であるアマチュア無線。彼がミールからの電波を傍受したことから2人の交信が始まり、さらにセルジオの無線仲間で、彼に無線機器を送ったりして支援しているアメリカ人ピーターが加わってくるという壮大な構図。
♡ セルゲイが帰還を試みてもパネルが破損してしまい、いよいよもって帰れない・・・となると思い出してしまうのが、アルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』。宇宙に一人取り残された宇宙飛行士ライアンが、宇宙に遺棄されたソ連の宇宙船ソユーズを利用しようとしたり、無線で地球に救援を求めると言葉の通じない相手とつながってしまったり・・・。でも話はぜんぜん違う展開をみせるのやけど。
♤ メインになってくるのは、どちらかというとハバナにいるセルジオの大学での日々や家庭の様子。キューバを脱出するための船を密かに屋上で造っている隣人や、給料だけでは生活できないセルジオが密造酒を作って大儲けしてたり、母親が葉巻作りの内職をしていたり・・・と、コメディ風の作りだが微妙なタッチで独特の雰囲気を出しているのがよかった。
♡ アメリカの無線愛好家ピーターを演じるのが、ハリウッドの脇役として数々の作品に出演してきたロン・パールマン。彼がなかなかいい味を出している。
♤ 軽いコメディ風の映画だと思って観ていると、セルゲイの挙動を不審とみて取り締まろうとする警察の二人組が登場し、このあたりから風刺とコミカル度が加速。終盤にかけてはナンセンスさが混じって作風が変わってくる。
♡ セルゲイが無許可の周波数で通信していることに難癖を付ける政府の役人の戯画化もなかなか面白いのやけど、残念ながら全体にもうひとつパンチに欠けてたかなぁ。
♤ しかも、肝心のセルゲイが助けられて地球に戻ってこれた理由がどうもよく分からない・・・。ストーリーがいまいち理解できないという不思議な作品ではあったな。
♡ 素材はすごくいいので、作り方次第でもっと魅力的にできたはず。登場人物も、淡々と日々を送るおばあちゃんとか女子学生とか、キューバのゆる~い感じで描かれる設定でセンスは悪くないと思った。
予告編
スタッフ
監督 | エルネスト・ダラナス・セラーノ |
脚本 | エルネスト・ダラナス・セラーノ |
マルタ・ダラナス |
キャスト
トマス・カオ | セルジオ |
ヘクター・ノア | セルゲイ |
ロン・パールマン | ピーター |
ユリエット・クルス | リア |
マリオ・グエッラ | ラミロ |
アナ・グロリア・ブデュン | カリダ |
アルマンド・ミゲル・ゴメス | ウリセス |
カミラ・アーティッシュ | パウラ |
イダルミス・ガルシア | ソニア |
アイリン・デ・ラ・カリダー・ロドリゲス | マリアナ |
A・J・バックリー | ホール刑事 |
ローランド・レイムヤノフ | イゴール |
マヌエル・アルバデス | トマス |