おすすめ度
キット ♤ 2.5 ★★☆
アイラ ♡ 2.5 ★★☆
『初恋のきた道』『単騎、千里を走る。』や『HERO』『LOVERS』などで知られるチャン・イーモウ監督によるファンタジック・アドベンチャー。約1700年の歳月をかけて建造されたという万里の長城の真の目的は何だったのか・・・。金と名声のために世界を旅した末に中国は万里の長城まで辿り着いた傭兵ウイリアム(マット・デイモン)。60年に一度現れるという怪物の大群の襲来を迎え撃つべく。中国中から集められた精鋭の戦士とともに人類を守るための戦いに挑んでいく。
言いたい放題
キット♤ グレートウォール(=万里の長城)というタイトルから、漢民族と匈奴との戦いみたいなイメージを持ったけど、全く違ってSF映画やなこれは。空想上の怪物「饕餮(とうてつ)」の大群が60年に一度北から攻めてくるのを防ぐために造られたのが万里の長城というわけで、そこに迷い込んだ西洋人の傭兵ウィリアム(マット・デイモン)が精鋭部隊とともに戦っていくという物語。
アイラ♡ 実写ではあるけど、ほとんどは3D映像の中に俳優をはめ込んだような感じで、大量のエキストラによる兵士たちも大部分はコンピュータグラフィックスでしょうね。画面の迫力はあるけど、終始作りもんくささが漂ってしまったなぁ。おそろしい数で押し寄せてくる怪物たちも、なんか『ロード・オブ・ザ・リング』あたりの焼き直しのようで・・・。
♤ 監督のチャン・イーモウは、『HERO』『LOVERS』などワイヤーアクションを使った戦闘場面や、鮮やかな色の使い方など斬新な映画を撮ってきたけど、本作ではCGを使っていないカットはほとんど皆無やったんとちゃうかな。
♡ 衣装なんかの色彩には様式的な美しさがあって、中世ヨーロッパが舞台だとどうしてもすすけた色合いになちがちなのが、中国となるとこういう鮮明な色合いを使ってきても違和感がないよね。とにかく制作費だけは潤沢にあったという感じがするけど。
♤ 戦闘シーンはなかなか迫力あるし、城壁の上から命綱一本で飛び降りては攻撃するとこなどワイヤーアクションの名残を感じるところもある。けど、制作資金が潤沢すぎて大味になってしまった感じがする。CGは饕餮の動きなどはよく出来てるけど、冒頭の荒野のシーンなど風景部分の造りが甘く、一昔前のテレビゲームの背景みたいなチープさやった。
♡ 物語の筋も大味。
♤ そこはもう突っ込みどころ満載で、逐一あげつらう大人げないことはしたくないけど、あえて一つだけ指摘させてもらうと、万里の長城は総長6000km以上もあるのに、映画で人間と饕餮との攻防戦が行われるのはせいぜい数km程度。饕餮が防御の厚いところを避けて攻撃したら戦闘にもならずに突破できる。というわけで、舞台が万里の長城であるべき必然性が全然ない。
♡ 猛烈な訓練と周到な準備を重ねて怪物を迎え撃つというのに、長城全体のごく一部の防御を厚くしてるだけやものね。せっかくマット・デイモンやウィレム・デフォー、アンディ・ラウなんてところを使っていながらほとんど活かされてないし・・・。
♤ ストーリーや俳優の演技力で見せる映画ではないので主演がマット・デイモンである必要もなく、ギャラが高くても名前で客を呼べる俳優を充てた感じやな。相方のペロ役のペドロ・パスカルに至っては全く無名の俳優。3人目の西洋人にウイリアム・デフォーも大した役でない。準主演級のジン・ティエンは先日観た『キングコング 髑髏島の巨神」』最後まで生き残る科学者役をやったけど、本作では大抜擢。武術の達人ということになっているけど、槍を持って戦うシーンではぜんぜん腰が入ってない。唯一、場を引き締めているのはアンディ・ラウなんやけど、その存在感にふさわしい役柄ともいえないのが辛いところ。
♡ 万里の長城っていう存在じたいは、欧米からみればなかなか不可思議で魅力的な歴史的建造物なんでしょうね。題材として使ってみたかったというのはわからないでもない。
♤ 最近のハリウッド映画は、何らかの形で中国を取り入れることが目立って増えてるよな。市場としても意識せざるを得ないし、中国資本の影響もかなり大きいはず。言論の自由という点では、最近観たばかりの『人生タクシー』のイランと大差ないともいえる。そんな国のプロパガンダ映画を知らないうちに見せられるようになってくるとしたら少々気持ち悪いな。
予告編
スタッフ
監督 | チャン・イーモウ |
脚本 | カルロ・バーナード |
ダグ・ミロ | |
トニー・ギルロイ |
キャスト
マット・デイモン | ウィリアム・ガリン |
ジン・ティエン | リン・メイ司令官 |
ペドロ・パスカル | ペロ・トバール |
ウィレム・デフォー | バラード |
アンディ・ラウ | ワン軍師 |