レビュー

ノクターナル・アニマルズ(Nocturnal Animals)

投稿日:2017年11月11日 更新日:

おすすめ度

Nocturnal Animals

キット ♤ 2.5 ★★☆
アイラ ♡ 3.0 ★★★

トム・フォード監督が、『シングルマン』(2009)から7年ぶりに手がける第2作目。米作家オースティン・ライトの小説『ミステリ原稿』を映画化したサスペンスドラマ。アートディーラーとして成功を収めながら、夫との関係が冷えはじめているスーザン。そんな彼女のもとに、元夫のエドワードから小説の原稿が送られ、そこに描かれる強烈な物語に彼女の心は揺れ動いていく・・・。エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホールを主演に、劇中劇にマイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソンらが出演。 

 

言いたい放題

アイラ♡ えらいまた、辛口な星数やこと!

キット♤ 新聞の映画評が高ポイントやし、怪優ジェイク・ギレンホール出演作ということで観に行ったはええのやけど、結論から言うともうがっかり。期待して損した。

♡ グッチやサンローランのデザイナーであり、コリン・ファースの『シングルマン』で監督デビューを果たし評価されたトム・フォード監督作品。ベネチア国際映画祭では審査員グランプリを受賞。英米双方のアカデミー賞やゴールデングローブ賞でも高く評価されているということで、大いに期待させる作品よね。主演も、『アメリカン・ハッスル』や『メッセージ』のエイミー・アダムスと、『ナイトクローラー』や『プリズナーズ』のジェイク・ギレンホールとくればなおさら。

♤ 裕福な家の娘で、芸術家を断念してアートギャラリーのオーナーとして成功ているスーザン(エイミー・アダムス)のもとに、19年前に離婚した夫トニー(ジェイク・ギレンホール)から小説の原稿が送られてくる。トニーは学生時代に結婚した作家志望の貧乏な若者で、スーザンの心変わりでわずか2年で離婚。小説のタイトル『ノクターナル・アニマル(夜行性動物)』とは、当時トニーが不眠症の彼女につけたあだ名だった。という設定で、いま現在のスーザンと、若いころの2人、そしてトニーの小説を“劇中劇”化した物語が切り替わりながら進んでいく構造。

♡ この劇中劇の主人公もジェイク・ギレンホールが演じてるのやけど、これが彼が送った小説の内容であるということがわかるのに少し時間がかかる。

♤ スーザンが元夫から送られてきた原稿を読みながら過去を回想するシーンと「劇中劇」が重なりながら進むので、観る側としては、トニーの創作である小説と19年前の事実とが重なり合い、それが彼女の”現在”に何らかの効果や影響をあらわすのではないかと期待する。ところがこの“劇中劇”は単に完結した小説でしかなく、それによって物語が大きく膨らむでなく、圧倒的な結末が来るわけでもない。

♡ ではなぜトニーはスーザンに小説を送ったのか・・・というところなんやけど、原稿を読んで心がさまざまに乱れるスーザンは彼に会いたくなり、連絡をとる。19年前の心変わりの相手だったいまの夫とはうまく行っておらず、小説家として成功しそうなトニーに関心が移ったのか、それとも小説の内容の何かに心が動いたのか・・・。そこはあまり明確ではないのよね。

♤ けど、トニーを待つスーザンは結局待ちぼうけを食らわされる。これは、トニーが19年前に捨てられた恨みを晴らすだけの行為としか受け取れないやろ。遠大な復讐劇ということか。そのことは、スーザンのアトリエに「REVENGE」と大書された作品が展示されていたところからも推察できた。

♡ 「これは復讐か愛か!」というのがプロモーション側の問いかけみたいやけど、確かにここに男の愛を感じとるのは難しい。元妻への怒りや憎悪をエネルギーにして小説を書き上げたのではあるようやけど。スーザンのほうが、実直に自分を愛してくれた男を捨てた罪悪感に苛まれていく。ただ、現実と劇中劇それぞれのスタイルが極端に異なるので、意外とぐいぐいと観てしまうのが本作の妙味。とくに劇中劇のほうは、いい俳優を揃えてきてることもあって楽しんで観られた。

♤ 特に、テキサスの保安官風の刑事役のマイケル・シャノンと犯罪者役のアーロン・テイラー=ジョンソンが良いな。

♡ 刑事が道を外すところの心理描写もおもしろいものがある。

♤ ただ、善良な一般市民が、無法者の前では全く無力で為す術もないけど、痛めつけられた後に復讐者となって・・・というストーリーは『わらの犬』などですでに使い尽くされたもの。新しさはなかったな。

♡ せやねん。スタイリッシュで豪華な調度や衣装に彩られたスーザンをとりまくクールな世界と、バイオレントな劇中劇の両極端の世界の間で揺さぶられる観客は、すごい作品を見せられたような気になってしまう。でも、それぞれを単体作品だと仮定するといずれも中途半端なものでしかないのよ。

♤ オープニングに醜悪な”アート作品”が延々と流されるのにも辟易したな。

♡ あれは、強いていえばスーザンにまとわりつく虚無感の象徴なのかという気はした。仕事場での彼女は、戦闘モードに装いながら常に放心状態やし。送られてきた小説に、コケにした元夫からの何らかのメッセージを読み取り、後悔や罪悪感と向き合っていく・・・というお話なんやろね。映像がとてもきれいでした。

 

 

予告編

スタッフ

監督 トム・フォード
脚本 トム・フォード

 

キャスト

エイミー・アダムス スーザン・モロー
ジェイク・ギレンホール トニー・ヘイスティング
エドワード・シェフィールド
マイケル・シャノン ボビー・アンディーズ
アーロン・テイラー=ジョンソン レイ・マーカス
アイラ・フィッシャー ローラ・ヘイスティングス
エリー・バンバー インディア・ヘイスティングス
アーミー・ハマー ハットン・モロー
カール・グルスマン ルー
ロバート・アラマヨ ターク
ローラ・リニー アン・サットン
アンドレア・ライズボロー アレシア
マイケル・シーン カルロス
インディア・メネズ サマンサ・モロー

 

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