レビュー

2重螺旋の恋人(L’amant double)

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おすすめ度

L'amant double

キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

『スイミング・プール』『8人の女たち』のフランソワ・オゾン監督が、ジョイス・キャロル・オーツの短編小説を翻案。原因不明の腹痛に悩まされるクロエは、心因性のものかもしれないと精神分析医を紹介され、やがて診察を行う医師ポールと恋に落ち同居を始める。ある日クロエは、街でポールそっくりの男を見かけ居所を突き止めるが、実は彼はポールの双子の兄弟ルイで、同じく精神分析医だった。穏やかなポールと違って、ルイは傲慢で挑発的という正反対の性格。ポールがルイの存在を隠す理由を知るため、クロエはルイの診察を受け続けるが、次第に彼らの関係は混乱していく・・・。クロエには『17歳』のマリーヌ・ヴァクト。双子の兄弟に『最後のマイ・ウェイ』のジェレミー・レニエが双子の精神科医を演じる。クロエの母親役としてジャクリーン・ビセットが姿を見せる。

 

言いたい放題

アイラ♡ スタイリッシュな映像が印象的な、サイコサスペンスといえばいいのかな。ちょっとホラー、スリラーの味わいもあるし。

キット♤ 原因不明の腹痛に悩まされ、精神分析医を紹介されるクロエ(マリーヌ・ヴァクト)は診察を受けるうちにその精神分析医ポール(ジェレミー・レニエ)と恋仲になる。ところがポールには秘密があって、母親の姓を名乗っていたり、双子の兄ルイがいて彼も精神分析医を開業していたり・・・というややこしい展開になっていく。ジェントルマンのポールに対してルイは不良オヤジ風。一人二役のレニエは表情だけで2人を演じ分けている。

♡ 面白いのは、どこまでが現実でどこまでがクロエの妄想なのかが必ずしもはっきりしていないこと。作る側があえてそうしたのかもしれず、観る人によってその線引きは違ってくるのかもと思った。

♤ 観る側としては、当然ながら結末を予想しながら話を追っていく。まぁ可能性としては、ルイは過去にポールとの間に何かあって、その存在が隠されているのかもしれないし、実は2人は同一人物で、ジキルとハイドみたいな二重人格なのかもと思ってみたり。

♡ 私も、ラスト近くまでルイの実在について確証が得られないまま観ていたけど、それはさておき意外な結末が用意されている。

♤ 結末なぁ。これはこれで構わないんやけど、筋を追いつつ論理的に推理していってこの結論へは辿り着けないってのははどうしたものかな。それさえ大目に見たとしても、映画のかなりの部分は現実ではなかったのかも・・・というんやったら納得し難いものがある。

♡ そうやね。ただ、サイコサスペンスとして観ると、最後まで一体どこへ連れて行かれるのか予想がつかないというところで、それが作品の魅力になっている気がする。それだけに、いったんオチを見せられるとちょっとがっかりもするんやけどね。辻褄の合わない部分が出てきても、そういう仕掛けだと言われたら文句はいえない。ただ強いていうと『エイリアン』みたいな演出はいらんかったかな。

♤ ルイの存在を認めないポールに疑念を持つクロエは、ポールと正反対の魅力を持つルイに惹かれていく。演じているマリーヌ・ヴァクトは悪くない。が、ポールに隠し事はしないでくれと言いながら、彼の荷物を勝手に調べたり、隠れてルイと合っているクロエの性格がうっとおしいな。

♡ フランス映画って女性主人公の自我が強烈で、言葉を尽くして自己を正当化したがるキャラが多いのがちょっと苦手。クロエも自己中心的なところがあって、なかなか感情移入しにくいとこはあるね。でもオチは別にして、クロエ自身が自覚する感覚や欲望と、無意識下から突如現れてくる倒錯した欲望の両方を行ったり来たりするところに不思議な緊張があって、決して悪い作品ではないと思う。ただセクシャルなシーンがかなり多いわりに、あまり官能的ではないってのは何なんやろね。

♤ 映像がなかなかいい。冒頭、クロエが髪をカットするシーン、ルイの診療所の入り口や診察室の鏡をつかったシーンなどどれも凝っている。クロエが歩くところでは、ハイヒールの踵と床とのコツコツ音が印象的に使われているし。主演の2人の演技も良かったのに、なんか原作に無理があったとしか言いようがない。

♡ 半円形にはめ込まれた鏡にクロエの姿が順に写り込んでいくところなどもかっこよかったよね。彼らの住む部屋や診察室のセットもセンスがいいし。

♤ クロエの母親役、見たことある顔やと思ったらジャクリーン・ビセットやった。とっくに引退したと思ってたけど、出演作リストを見るといまも1~2年に1作くらいの割で映画やテレビドラマに出演してる様子。

♡ 歳はとったけど相変わらずの美貌でした。

 

予告編

スタッフ

監督 フランソワ・オゾン
原作 ジョイス・キャロル・オーツ
脚本 フランソワ・オゾン

 

キャスト

マリーヌ・バクト クロエ
ジェレミー・レニエ ポール/ルイ
ジャクリーン・ビセット クロエの母
ファニー・セイジ サンドラ
ミリアム・ボワイエ ローズ
ドミニク・レイモン 婦人科医

 

レクタングル336

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