レビュー

ローガン・ラッキー(Logan Lucky)

投稿日:2017年11月28日 更新日:

おすすめ度

Logan Luckyキット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 4.0 ★★★★

2013年の『サイド・エフェクト』を最後に映画監督業を退いたスティーブン・ソダーバーグが、新人レベッカ・ブラウンのオリジナル脚本で再び長編劇場映画に復帰。かつてはフットボールの花形選手だったが、いまや不運続きのジミー・ローガン。弟と妹を誘い、アメリカ最大のモーターカーイベントNASCARレースの売上を盗む計画を立てる。主演にチャニング・テイタム、アダム・ドライバー、ダニエル・クレイグらクセ者が揃う。音楽には『オーシャンズ』シリーズの作曲を手掛けてきたデビッド・ホームズ。

 

言いたい放題

アイラ♡ 前から、ダニエル・クレイグって取り澄ましたスパイやジャーナリストより、ちょっとガラの悪い役が似合うんじゃないかと思ってたけど、これは予想以上のハマり役!

キット♤ 上手に作られた犯罪コメディやな。シリアスドラマじゃないから、ストーリー上のご都合主義や結果オーライに全く問題はないけど、結果に至る伏線を省略しすぎると薄っぺらい軽い映画になりがち。本作は、そこのところに細かく“理由付け”が埋め込んであって、それでいて人を喰ったようなコメディ調なのでより笑いを誘われる。

♡ 不運が続くという一家の“呪い”にとらわれる3人きょうだいの長兄ジミー・ローガン(チャニング・テイタム)は、モーターカーレースの売上金を着服するという大胆な計画を立てる。戦傷で片腕をなくしたバーテンダーの弟クライド(アダム・ドライバー)と、カーマニアで美容師の妹メリー(ライリー・キーオ )だけでは心もとないと、服役中の爆破の専門家ジョー・バング(ダニエル・クレイグ)に脱獄と引き換えに計画への参加を持ちかける・・・というのが物語の発端。

♤ 現金強奪をめぐって、そこかしこに仕組まれた伏線の回収が実に手際よい。たとえば金庫破りのためにジョーを脱獄させ、事が終われば刑務所に戻すといういかにも無茶な筋書き。これを一応理屈の通る方法で成功させてしまう。計画が狂ったときの修正やバックアップなんか全くない非現実的なプランを真面目くさってやるところはコメディの定石。運転上手のメリーがド派手な青いスポーツカーでぶっ飛ばすところは、そんな車で走ったら目立ちすぎるやろと思うけど、「この先にパトカーは1台だけで、既に手を打ってある」というメリーの段取りの良さ。そのパトカー対策がまた笑わせる。

♡ 空気感はゆる~いのに、物語は心地よいテンポで進んでいって、その快調さに身を委ねていると、強奪計画が終わるあたりから急にもたつきはじめる。「えっ???」と思っていると、それも最後できちんと説明がつく。しかも結構いいエンディングに結びつくので、いかにもアメリカ人の好きそうなスケールの大きい法螺話ということで大団円。心地よく笑えたよ。

♤ あほらしさにもきちんと手順を踏むという丁寧な脚本がよく出来ているんやな。加えて、出演俳優がなかなか良い。ダニエル・クレイグは、クールなジェームズ・ボンドのイメージから一転。コメディ出演が意外としっくり来る。

♡ 私としては、もっとブチ切れたキャラでもよかったくらい。もっと役の幅を広げてほしいよね。

♤ アダム・ドライバーは、『スターウォーズ』シリーズのだめだめカイロ・レン役で僕としては評価の低い俳優やってんけど、『パターソン』に続く本作で、もっそりした役に向いていることが分かった。

♡ 彼は本当はかなりの実力派。まだ若いけど、作品にも恵まれてきてるので、これから伸びていくんと違うかな。長い顔もだいぶ見慣れてきたし。それより、犯行時に亡くした義手の替わりに届いた新品のあれ、『スターウォーズ』へのオマージュやろか。あそこは面白すぎた!

♤ ほかにも豪華に俳優陣を使ってきてるな。終盤近くにヒラリー・スワンクを不気味に登場させたり、セス・マクファーレンをゲスト出演風に出したり、ジミーの妻にケイティ・ホームズを使ったり・・・と、とにかくキャスティングが贅沢。ただ配給会社の宣伝が、スティーブン・ソダーバーグつながりで『オーシャンズ11』を必要以上に前面に出すのはちょっと鼻についたな。

♡ そう私も感じたけど、これって『オーシャンズ』シリーズの正反対の世界なんよね。一見あれこれ詰め込みすぎの物語だけど、よく考えるとそこにはアメリカ人の、特に田舎の白人が大好きな要素がいっぱい詰まってる。大金強盗というアメリカ映画の古典的系譜のなかに、美少女コンテストやNASCARレースという田舎の人気イベントがあり、彼らの大好きなカントリーや、古いロックミュージックがバックに流れる。しかもジョン・デンバーやクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルなどの数曲を除いて、たいしたヒット曲は含まれてない。でも、そこに共感を覚える人々は必ずいて、それがジョーの弟たちのあほっぽさとして大げさに描かれる、田舎街で鬱々と暮らす典型的な白人層なんやと思う。そんな環境で育つジミーの娘がまた愛らしくて、彼女にジミーの心の歌である“Take Me Home, Country Roads”を歌わせて、観客がそれに唱和する演出も心憎い。

 

予告編

スタッフ

監督 スティーブン・ソダーバーグ
脚本 レベッカ・ブラント

 

キャスト

チャニング・テイタム ジミー・ローガン
アダム・ドライバー クライド・ローガン
ライリー・キーオ メリー・ローガン
ダニエル・クレイグ ジョー・バング
セス・マクファーレン マックス
ケイティ・ホームズ ボビー・ジョー
キャサリン・ウォーターストン シルヴィア
ドワイト・ヨーカム バーンズ所長
セバスチャン・スタン デイトン・ホワイト
ブライアン・グリーソン サム・バング
ジャック・クエイド フィッシュ・バング
ヒラリー・スワンク サラ・グレイソン

 

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