レビュー

レディ・プレイヤー1(Ready Player One)

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おすすめ度

Ready Player One

キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 4.5 ★★★★☆

スティーブン・スピルバーグ監督が、アーネスト・クラインの小説『ゲームウォーズ』を映画化。失政のため貧富差が拡大し、トレーラーを積み重ねたスタックというエリアに貧しい人々が住む2045年。彼らの娯楽はOASISというヴァーチャル・リアリティ(VR)に入り混み、理想の自分を生きることだった。ある日OASISの開発で巨万の富を築いたジェームス・ハリデーが亡くなり、OASISに隠された3つの謎を見つけたものに遺産と会社の運営権を譲渡するというメッセージが発せられる。主人公のウェイドはひとつ目の謎を解くが、ハリデーの遺産を狙うIOI社の妨害の手が迫っていた。

 

言いたい放題

アイラ♡ いや~参ったな。スピルバーグがもう何十年にもわたって現代の名匠であり続けていることに微塵の疑いもないけど、これほどのみずみずしい感性が72歳の彼にまだ残存していたとは!

キット♤ いうまでもなく、スティーブン・スピルバーグ監督は『インディ・ジョーンズ』『E.T.』『ジュラシックパーク』などの娯楽作から『シンドラーのリスト』『ブリッジ・オブ・スパイ』どのシリアスものまで幅広く撮り続け、直近ではシリアス系の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』と、娯楽ものジャンルの本作品を監督。さらに製作総指揮としてかなりの作品製作に関与しているので、70歳を越えてのこのバイタリティには驚くばかり。

♡ ただ単にVRゲームの実写版みたいな作品やったらいややなぁと懸念してたのやけど、さすがに彼はそのはるか上からやってきたね。社会派作品といえる『ペンタゴン・・・』とは対極の位置にある超娯楽作であるにとどまらず、サブカルオタクを狂喜させる小ネタを豊富にちりばめ、かつ中年層をほろりとさせるノスタルジー風味をつけたうえで、リアルとバーチャルを巧みに行き来させる。これだけの手際のよさは、やっぱり彼でなくては発揮できないんやなぁと痛感。これぞ超一流の仕事!

♤ オタクが狂喜という部分では、アニメ、ゲーム、映画オタクのそれぞれが敏感に反応してしまう内容の濃さやしな。

♡ 中年層も喜ぶという点では、なんと全体に施されているのが80年代の味わい。特に音楽やね。冒頭いきなりヴァン・ヘイレンの『Jump』とともに主人公がスラムのような家から現れ、ホール&オーツの『You Make Make My Dreams Come True』がエンドロールに流れるまで、80年代サウンドのオンパレード。途中にはさまってくるアニメやゲーム、映画なども、いまの50代が泣いて喜ぶようなセレクションやし。

♤ ストーリーは、現実世界が残念なことになってしまった近未来で、人々はVR(仮想現実)「OASIS(オアシス)」に入り浸り、バーチャル世界に作った自分のアバターとリアル世界の自分とを行ったり来たりしている。そのOASISの開発者で大富豪のハリデーが、OASISに隠された3つの謎”イースター・エッグ”を見つけたものにOASISを含む全てを譲ると遺言し、一斉にその争奪戦が始まる。主要登場人物は、この争いに加わるウェイド/パーシバルと仮想現実での友達4人(アルテミス、エイチ、ショウ、ダイトウ)。これに、巨大ゲーム企業IOIのノーラン・ソレントとその手下たちが組織力で対抗してくる。

♡ 物語そのものは大した話ではないので、遺産の争奪バトルを描くだけなら凡庸なSFアクションで終わったでしょうけれど、そうはしないのがスピルバーグ。主人公が簡単に彼女をゲットできたり、4人の仲間が簡単に集まれたりするご都合主義はあるにせよ、幅広い年齢層のオタク心をくすぐってくる彼こそ、真性のオタクじいさんである!

♤ とにかく、いろんな映画やアニメの登場人物、ロボット、乗り物、ガジェットなどなどのクロスオーバーが満載。映画の筋を追いながら、ただでさえ目まぐるしく動く画面の中で知っている物の形を見つけるだけでも困難やのに、会話の中にさり気なく出てくるキーワードを聞き分けるのは至難の技。自分も日本のサブカル全般に通じているわけじゃないので、知らないものもあるし、日本では知られていないキャラクターも盛り込まれているので、これをすべてわかれというのはかなりのオタクでも難しいやろ。

♡ しかも日本のアニメオタクには感涙もののキャラクターも出てくるしね。ツイッターでもかなりこのネタで賑わってる。キティちゃんを発見した人もいるらしいよ。

♤ Wikipediaの記事を見たら、膨大なクロスオーバーがリストアップされててびっくりした。僕なんかその1割ほどしか認知できてなかったし。聞くところでは、原作者のアーネスト・クラインは日本のサブカルチャーについては超が付くほどのオタクなんやて。原作には、東映制作の日本版スパイダーマンに出てくるレオパルドンというロボットも登場するそうやけど、誰にも分からないので映画ではカットしてるらしい。けど、これだけのクロスオーバーを一映画作品のなかで実現するには膨大な著作権の交渉が必要だったはずで、スピルバーグの情熱と知名度があってこそ可能になったんやろなぁ。マーベルやDCなど、自分の領土内でのクロスオーバーは今後も活発になると思うけど、本作ほど思いっきり著作の境界を飛び越えたクロスオーバーを実現する映画はもう出てこない気がする。

♡ 私が降参したのは、ネタバレになるけど、映画『シャイニング』の使い方。『シャイニング』自体が多くのトリビアに満ちてて、語らせたらなんぼでも・・・というマニアの多いカルト作品やけど、オーバールックホテルのあの再現ぶりには思わず声が出てしまった。もちろんあれも80年代の作品やしね。スピルバーグ監督が、なぜ50代あたりの観客を意識したのかはわからないけど、遺産を託すハリデーには、どこかスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツたちの姿がダブっていて、彼らのまだ若かった時代へのオマージュなのかなとも思ったり。

♤ そうそう。OASISの開発者ハリデーとパートナーのモローの2人は、アップルの創業者のジョブズとウォズニアックを連想させるよな。ほかにWikipediaにあった以外で気がついたこととして、現実世界と仮想現実を並行して見せる映画としては『アバター』があるけど、それよりも『マトリックス』との類似性を感じたってことと、小さいニンジャみたいな格好のショウは背中に2本の刀をクロスに掛けてるけど、これは『デッドプール』に似てる。

♡ ところでタイトルの『Ready Player One』って、『Ready Player Two』への布石なのかしらね。けど、これだけのネタをぶちこんだシリーズ化は作る側がしんどそう・・・。

 

 

予告編

スタッフ

監督 スティーブン・スピルバーグ
原作 アーネスト・クライン
脚本 ザック・ペン
アーネスト・クライン

 

キャスト

タイ・シェリダン パーシヴァル/ウェイド・ワッツ
オリビア・クック アルテミス/サマンサ・エブリン・クック
ベン・メンデルソーン ノーラン・ソレント
リナ・ウェイス エイチ/ヘレン
サイモン・ペッグ オグデン・モロー
マーク・ライランス アノラック/ジェームズ・ハリデー
フィリップ・チャオ ショウ/ゾウ
森崎ウィン ダイトウ/トシロウ
T・J・ミラー アイロック
ハナ・ジョン=カーメン フナーレ
ラルフ・アイネソン リック
スーザン・リンチ アリス
パーディタ・ウィークス キーラ

 

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