レビュー

私は、マリア・カラス(Maria by Callas)

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おすすめ度

Maria by Callas

キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

20世紀最高のソプラノ歌手としていまも称賛されるオペラ歌手マリア・カラス。未発表の自叙伝や私信、観客がこっそり撮影した舞台映像などを通してその人生を解き明かしていく。ナレーションはなく、カラス本人の歌と言葉、自叙伝を朗読する女優ファニー・アルダンの声だけで構成。3年をかけて集められたという資料のなかには未発表の映像も多い。プロのオペラ歌手としての自信と信念、ひとりの女性としての思いなど、これまで明かされることのなかった真実の姿に迫るドキュメンタリー。

 

言いたい放題

キット♤ あまりにも有名なオペラ歌手としてその名前は知っていても、オペラを観ない者として、どんな人物だったのかほとんど知らなかったマリア・カラスの人生を追うドキュメンタリー映画。

アイラ♡ くっきりとした濃い目鼻だちから、すっかりヨーロッパの人と思い込んでいたけど、ニューヨークで生まれ育ったギリシャ系アメリカ人と知ってとても意外でした。

♤ アメリカ人とオペラって、あんまりイメージ繋がれへんもんね。

♡ でも子供のころから声楽の特訓を受けて、10代後半にして頭角をあらわす才能の持ち主だった。デビュー当時の古い映像から受ける印象は太めでもっさりしてるけど、みるみるうちに美貌に磨きがかかり、スターのオーラを放ち始めるのには驚いた。

♤ 40年も前に亡くなっているしスキャンダルもあったから、すでに語り尽くされてる人かと思いきや、本作で用いられた映像、音源、私信などの素材の半分以上は未公開のものという。監督をはじめ制作スタッフはかなり頑張って材料を集めたんやろね。映像の一部には、モノクロから当時の写真を元にカラー化したものもあるらしい。マリア・カラスをよく知らない者にとってはさほどインパクトはないけど、ファンにとっては嬉しい驚きの映画なのかもしれないな。

♡ 観客席から素人が撮った映像も多くて、画質も音質も悪いけど、それはそれで当時のステージの様子が伝わってきて興味深い。ほかにはテレビ番組のインタビューがなかなか面白いのやけど、放映時にカットされた部分なのやてね。私生活を映した一部の貴重な映像もあるけれど、多くは舞台でのパフォーマンスや、劇場から出てきたところで記者に囲まれているような映像がほとんど。改めて驚くのやけど、彼女はそこにカメラがある限り、その存在を常に意識していて、まるでモデルのようにカメラのほうへ表情を作りポーズを決めてみせる。この時代の女優さんなんかもそうよね。ファッションも常に華やかで、プロであるという自意識が体中から放たれてる。

♤ ただ後半からはその華やかな成功譚からうって変わって、人間関係のあつれきやスキャンダルの話になっていく。ギリシャ人の大富豪オナシスとの関係、オナシスがケネディ未亡人のジャッキーと結婚して破局に至ったことぐらいは知っていたけど、細かいことは当然知らない。オナシスの裏切りを知って激しく罵るところや、それでも未練が残っているところ、そして最後には取り戻す一連の流れを生々しく見せている。

♡ それでもオペラ歌手としての彼女は潰れないからすごいと思った。体を使って自己表現する芸術家には避けられないこととはいえ、肉体的な衰えによって表現力が落ちてきたことのほうが辛いのよね。

♤ ドキュメンタリーとしてはかなり力をいれて作っていると思うけど、マリア・カラスに対してどれくらい思い入れがあるかによって評価が違ってくる。オペラを良く知らない身にとっては、ほどほどというところかな。

♡ 一女性、とはいっても普通の女性ではまったくないけれど、波乱の生涯と強い信念でそれを受け止め乗り越えた人の物語としてみると、決して単に映像をつないだだけのドキュメンタリーではないと思うわ。インタビューを受ける彼女は、どんなに下世話な内容であっても常に堂々として決してブレない。ステージでは渾身の歌唱と圧倒的な美しさをみせるプロ・・・というより、やっぱり天才というべきなのかな。ラストに、敢えて『ジャンニ・スキッキ』の“O mio babbino caro” (私のお父さん)というポピュラーな1曲をもってきたところで、ベタやなぁと思いつつも涙が出てしまいました。

 

予告編

スタッフ

監督 トム・ボルフ
朗読 ファニー・アルダン

 

キャスト

マリア・カラス 本人

 

レクタングル336

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