おすすめ度
キット ♤ 2.5 ★★☆
アイラ ♡ 3.0 ★★★
リンカーン大統領による奴隷解放宣言よりも早く、肌の色や貧富の差、宗教や思想に関係なく、誰もが平等な“自由州”の設立を宣言した男、ニュートン・ナイト。『シービスケット』のゲイリー・ロス監督が史実にのっとって描いた、南北戦争前後の知られざるアメリカ史。カリスマ性のあるリーダーには、『ダラス・バイヤーズクラブ』で2013年の主演男優賞を総なめにしたマシュー・マコノヒー。17年のアカデミー助演男優賞に輝いたマハーシャ・アリの存在が光る。
言いたい放題
アイラ♡ あらまっ、ずいぶんな低評価やありませんこと~(^_^;)
キット♤ アメリカの南北戦争とその後の時代に、ミシシッピ州で北軍にも南軍にも属しない「ジョーンズ自由州」を立ち上げた実在の人物ニュートン・ナイトの物語ということやねんけど、ちょっと疲れた。題材は悪くないし出演者もそれなりの俳優を集めているのに「う~ん」という感じ。140分という長さもあるけど、それ以上に映画のまとまりの無さに疲れてしまった。
♡ 私は最後までまったく飽きずに観られたわ。南北戦争前後の知られざる歴史という内容でもあり、興味深いテーマやった。人種問題では今なお題材にされるミシシッピという独特の土地柄も、たぶんアメリカ人ならピンとくるところなのかなと思ったけど。スワンプ(沼地)のじっとりくる感じもよかった。
♤ 前半と後半でかなり色合いが違うよね。前半は、南軍の脱走兵の主人公ナイトが脱走兵仲間や黒人奴隷、重税にあえぐ農民たちを一つにまとめて、反乱軍として3つの郡を支配下において残忍な南軍の将校に復讐するまで。後半は南北戦争が終わって、ナイトやその仲間たちが別の地へ移り住んで暮らしていく話。
♡ その隙間を埋めるように、何十年も経ってからナイトの子孫が異人種間の結婚を禁止する法律に違反したとして裁判にかけられる話が数度にわたって挿入される構成。そうする意味がわかりにくいね。本筋とそれほどリンクしない話やし。
♤ 南軍が同じ白人の小作農家に重税を課して、略奪まがいのことまでする悪辣ぶりが延々かつ淡々と描かれる前半。これはナイトが奮起する重要な背景ではあるけど、たいした盛り上がりがあるわけでもないのに冗長。ここをもっと手際よく切り詰めて、「独立州」を作るまでの内容を膨らませれば、この映画の前半だけでも十分面白い娯楽作品になったと思う。後半はばっさり捨ててもよかったんとちがうか?
♡ 南北戦争とその前後に起きたことについて、搾取される側の視点から網羅しておきたいという制作意図があったんでしょうね。実際、記録写真みたいなのもたくさん挿入されていて、歴史もの路線を狙ったのかなと思うけど。ただ、対抗措置としての殺しをおおっぴらに是認しているという点ではナイトも正義の人というわけではなく、彼のあり方じたい評価が難しいところがあるわね。
♤ みんなを率いて南軍と抗争している間は生き生きとしていたナイトも、後半はすっかり精彩を欠いて、北軍が引き上げていった後のKKKの横暴に為す術もない。好意的にみれば、解放奴隷でありナイトの盟友であるモーゼスの自由市民としての主張と挑戦と挫折を描くことで、人種問題が簡単には解決できない問題であることを改めて見せようとしたのかもしれない。しかし、それであれば、映画を通しての人種問題への堀込みが浅いんやないかな。
♡ とはいえ、150年近く前に奴隷制度が廃止される前の南部で、反乱軍の中で白人と黒人が共に戦ったということを知ったのは興味深かったわ。ナイトには不条理と戦おうという精神が常にあって、それが彼のカリスマにもなってる。ただ、なぜ彼の理想世界は歴史の中に埋もれてしまったのか、そこをもうちょっと描いてほしかったかな。
♤ 映画では搾取する側の裕福な白人と搾取される側の貧乏白人+黒人奴隷という二項対立だけで説明してしまっているけど、そんな単純な話なのかと疑問に思う。搾取される側の内部でも差別はあったはずで、それは物語の中でも匂わされてはいるが回収はされてない。ということで、史実に基づいた映画というには本当らしさに欠けるし問題提起も浅い。娯楽作品というには楽しめない。中途半端な映画になってしまっている。
♡ アカデミー委員会もこのところ人種間の公平性についてナーバスになってるから、敢えてこのテーマをぶつけてきたのかなという気はした。2017年のアカデミー賞候補作には人種をテーマにするものが多かったし、大半が未公開なのでよくはわからないけど、どれももっと鋭く切り込んでいる印象はあるわね。アカデミー賞といえば、モーゼス役のマハーシャ・アリは作品賞の『ムーンライト』で助演男優賞を取ったけど。
♤ 登場場面こそ多くないけど、重要な役どころを生き生きと演じて存在感あり。TVドラマへの起用も多くて今後が楽しみな俳優やな。
♡ マシュー・マコノヒーは、このところクセの強い役が多いけど、『評決のとき』(1996)の弁護士役は鮮烈な印象。『リンカーン弁護士』(2011)以後は、『MUD』『ダラス・バイヤーズクラブ』など、だんだん気持ち悪い役が増えてるけど、私は大好きやの。テキサス出身の彼には、南部訛り丸出しのこういう役どころはぴったりやけど、今後はさらにまた気色悪い役で精進してほしいですね(笑)
予告編
スタッフ
監督 | ゲイリー・ロス |
脚本 | ゲイリー・ロス |
キャスト
マシュー・マコノヒー | ニュートン・ナイト |
ググ・バサ=ロー | レイチェル |
マハーシャラ・アリ | モーゼス |
ケリー・ラッセル | セリーナ・ナイト |