レビュー

グリーンルーム(Green Room)

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おすすめ度

「グリーンルーム」のポスター

キット♤ 3.0 ★★★
アイラ♡ 3.0 ★★★

『スター・トレック』シリーズや『ターミネータ4』で人気を博しながら、2016年6月に不慮の自動車事故で亡くなったアントン・イェルチン初の、そして最後の主演となったスリラー映画。極右ネオナチの基地とは知らず、売れないパンクバンドが金のためにとあるライブハウスに出演する。演奏後、楽屋で起きた殺人事件を目撃してしまった彼らは、殺人に関係したネオナチ集団から命を狙われることに。楽屋に籠城を余儀なくされ、外部との連絡手段も断たれた彼らは、ネオナチ集団からの決死の脱出行に臨んでいく。

 

言いたい放題

アイラ♡ うぇ~~~。アントンちゃんの遺作っていうから観たのに、こんな血ぃ出るって知ってたら観んかったわぁ~(ToT)

キット♤ 観る前からB級映画の香りがぷんぷんする作品やったな(笑)。ほんで、観てみたらやっぱり低予算のインディーズ系B級作品やった。ただ、B級にはB級なりの楽しみ方があって、予算を湯水の如く使って作られた大作と同じ土俵に置かず、寛容の精神で観ることがまず大事。あとは減点主義であら捜しするのではなく、視点を下げてちょっとした面白いところを探すこと。

♡ とはいえ、けっこう最後までぐいぐい観てしまったわし・・・(汗) あと、しっとり湿った森の光景や空気がなぜかすごく爽やかで、血生臭さを中和してたというか、美しささえ帯びてたのがなんか不思議やったねぇ。

♤ ストーリーは至ってシンプルで、主人公のパット(アントン・イェルチン)たち3人の売れないパンクロックバンド “The Ain’t Rights“ が、金のためにと出演を引き受けた田舎のライブハウスがネオナチの根城で、そこで運悪く殺人を目撃してしまう。ネオナチのボスは、ハウスバンドのメンバーも含め目撃者全員を消すよう部下に命じ、パットたちは楽屋に立てこもって生死をかけた脱出のため彼らとの戦いに臨むことになるってとこかな。「Green Room」とは「楽屋」という意味らしい。

♡ ライブハウスがネオナチの巣窟って、ほとんど最後までわからなかったけど(笑)、パットがちょっとした思いつきからそこのハウスバンドに反ナチの曲を演奏させるあたりで、ははん?という感じがあったといえばあったかな。けど、ネオナチ軍団のリーダーが知的な策略家っぽいのに、他のメンバーは頭の足りなそうな連中ばっかりで・・・。

♤ パトリック・スチュワート演じるリーダーが、楽屋に立て籠もったパットたちをドア越しに懐柔して出て来させようとするところはなかなかよかった。ところが、言葉巧みに立て篭もり組の拳銃を取り上げたところまではよかってんけど、あとの戦術がぐだぐだ。相手は丸腰なんやから、荒くれどもを突入させればすぐ済むのに、なぜか建物を包囲して出てくるところを待ち伏せるという回りくどいことをする。手下や獰猛な犬を小出しに送り込むもんやから、味方にもかなりの犠牲者を出すことになるやん。なんやこれ~。

♡ いや、それは警察沙汰になると自分たちもまずいことになるからでしょ。武器かてなんぼでも揃ってるけど、バンド連中の小競り合いがたまたま大きくなったくらいのことに見せかけるために、敢えて派手なことを避けたんやと思うよ・・・って、結構観てるやん私!

♤ けど、ぜんぜん策は成功してへん! まぁ作りは荒っぽいけど、追い詰められた弱者が暴力的な反撃に出るというストーリーは、サム・ペキンパー監督、ダスティン・ホフマン主演の『わらの犬』を連想させるかな。普通の人が暴力的になるのは『タクシー・ドライバー』に通じるとこもあるし。

♡ そんなええもんか? で、アントンちゃん演じるパットも、パンクを標榜するくせに実はびびり。ステージでは「ナチくたばれ!」とか歌うくせに、一体どないやねん?って設定よ。でも、望まぬ展開となってから、ずたずたに切られて血だらけの腕にダクトテープを巻きつけて、突如髪を剃り上げ、顔にメイクまでして戦いに臨むと決めた瞬間の彼はなかなかパンクやった・・・と思う(汗)

♤ その点、一番肝がすわってるのはイモージェン・プーツ演じるアンバーというハウスバンドの女の子。イェルチンには悪いけど、彼女を主演にしたほうが面白くなったんとちゃうかな。あと、ネオナチが飼っていて建物の中へ送り込まれるめちゃくちゃ獰猛な犬が、明るいところで見るとえらく可愛らしいねん。こういうギャップもなんでかわからん面白さ。

♡ ストーリーとは関係ないのやけど、バンドメンバーの間で、いままで一番影響を受けたミュージシャンを一人だけ挙げるというのをやっていて、スティーリー・ダンだのプリンスだの、ぜんぜんパンクとちゃう人らの名前が出て来るのも興味深かった。パットのバンドの女の子はサイモンとガーファンクルやというし・・・。で、アンバーがミュージシャンの名前を挙げないまま話が終わった直後、エンドロールに流れるのがクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの“Sinister Purpose”。これも1969年発売のアルバム“Green River”収録の古い曲で、「悪意」という意味になるのかな。パンクバンドやのに、彼らのバックボーンにパンクがないって、どういうこっちゃ? 面白いわ。

♤ もひとつ関係ない話やけど、ネオナチ集団のボス役のパトリック・スチュワートは、『スター・トレック』のジェネレーションシリーズでエンタープライズの船長役をやっていた俳優。アントン・イェルチンとはスター・トレックの世代を越えての共演となった。新しいスター・トレックはまだ続いていきそうなので、今後のチェコフあるいはその代役がどうなるかも興味のあるところやね。

 

予告編

スタッフ

監督 ジェレミー・ソルニエ
脚本 ジェレミー・ソルニエ

 

キャスト

アントン・イェルチン パット
イモージェン・プーツ アンバー
パトリック・スチュワート ダーシー

レクタングル336

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