おすすめ度
キット♤ 4.0★★★★
アイラ♡ 3.0★★★
士郎正宗のコミックを押井守監督が映画化したSFアニメ『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』のハリウッド実写化版。全身にダメージを受け、脳とわずかな記憶を残してサイボーグ化された公安9課最強の捜査官・少佐は、全世界を揺るがすサイバーテロ事件を発端に記憶が呼び覚まされ、やがて自分自身の真の過去と向き合っていく…。主人公の少佐には『アベンジャーズ』『LUCY ルーシー』などアクション映画の出演も多いスカーレット・ヨハンソン。上司の荒巻にビートたけし。他にジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット、桃井かおり、デンマーク出身の俳優ピルウ・アスベックらが共演。
言いたい放題
アイラ♡ 日本のアニメをハリウッドが実写化したという理解でええのかな?
キット♤ 作品のルーツは1989年に始まる士郎正宗のコミック。その後何度も劇場版アニメ、TVアニメが作られてるけど、本作が初めての実写版になる。ベースになっているのは、1995年の押井守監督による劇場版アニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』といわれてる。なので押井版アニメをオリジナルとすれば、実写版製作にあたってストーリーはかなり変更されているんやけど、前に作られたTV版、劇場版の背景設定はすでに別個のものとなってパラレルワールド化しているので、またひとつ新しくワールドが加わったと解釈すればええんやと思う。
♡ 熱心なファンの目にはどう映ったのかわからないけど、ビジュアルも精緻に作り込まれてそれなりに楽しめた反面、アジアを舞台とする近未来SFは、どうしても『ブレード・ランナー』的世界に絡め取られる宿命なのかしらとがっかりもした。舞台設定のみならず、全体に『ブレード・ランナー』へのリスペクトが強すぎるように感じるのやけど・・・。イヤではないけど、ええかげんそこから脱してくれよと思うのは私だけじゃないでしょう。ぎらぎらの巨大広告や再開発に取り残されすぎた場末の安食堂はもうええわ~。
♤ 明らかに類似点は多いよな。アジアンテイストの近未来の街となると『ブレード・ランナー』的世界はどうしても避けて通れない、というかオリジナルのアニメもおそらくその影響を受けていると思うので、実写版は似たものにならざるを得ないんやろ。ただ『ブレード・ランナー』世界の最たるものである大型広告が、本作ではホログラムを駆使した巨大立体映像に進化してて、ビルから人間が飛び出たり大蛇が建物に巻き付いたりしてたな。
♡ 街の風景だけじゃなく、テロリスト集団を率いるクゼの存在が、『ブレード・ランナー』でルトガー・ハウアーが演じたレプリカントのリーダーを彷彿とさせるのよね。自分たちを作った者を呪うような最期のセリフもけっこうカブるとこがあるし。
♤ 『ブレード・ランナー』では、レプリカントを開発・製造していた「タイレル社」と脱走したレプリカントとの対立という構図があったわけやけど、今回それをそのままパクって「ハンカ・ロボティクス社」と開発に失敗したサイボーグに置き換えたようなもんやからね。
♡ 他にも過去のSF名作をだいぶパクってない? オマージュという言葉を使ってもええけど(笑)
♤ たとえば、首筋のプラグに電極のようなものを差し込むところは『マトリックス』を連想する。けどこれは『マトリックス』が押井版アニメから影響を受けたものらしい。あと、少佐が損傷した腕を修理してもらうのは『スターウォーズ エピソード5 帝国の逆襲』でルークが医療ドロイドに義手を付けてもらうシーンに似てるし、顔のパネルを外すとメカ部分が見えるのは『ターミネーター』やその他諸々。そんな具合やから、逆に先達の色んなSF作品へのオマージュと思いながら観たら面白いのんとちがう?
♡ ただ、違和感があったのがたけしの存在なのよね。SFやから、彼だけ日本語というのは別に気にならないけど、たけしの演技はいつもあんな感じとはいえ、あのぶっきらぼうで一本調子な演技は計算のうえなのかしら。彼もまたサイボーグなのかな。あと、スカーレット・ヨハンソンの着てるぼってりしたスーツ、ずいぶんかっこ悪くない? 女性戦士はセクシーなほうがええと思うのやけど、力任せになんか引っ張ってるシーンなんて白い超人ハルクかいなと思ったよ。
♤ うん、光学迷彩スーツってことなんやけど、僕ももうちょっとなんとかしてほしかった(汗)。スカーレット・ヨハンソンは『ロスト・イン・トランスレーション』や『マッチポイント』などで前途有望な演技派になると思ったんやけど、最近はアクション系への出演が多いな。その流れとしての本作は適役やと思うし、アクションシーンは見ていても格好よい。
♡ ストーリーのほうはどうなのかな。原作との対比みたいなところも含めて。
♤ 構成としては、ラストの戦車との戦闘シーンから悪者社長と荒巻との対決までを単純化しすぎた感じを受けた。大企業の社長が悪事を働くのに、全部自分で手を下すというのはどうなんかなぁ。けど、SF映画としては十分よく出来ていると思う。オリジナルとの違いを挙げるとすれば、オリジナルでは日本の外務省が秘密裏に人工知能研究をしていたのが制御できなくなるという設定が、こちらではサイボーグを開発・生産する「ハンカ・ロボティクス社」の社長が悪者という分かりやすい設定になっている。あと、オリジナルのほうが人工知能の進化について哲学的なテーマを持っているのに対して、こちらは脳の古い記憶を書き換えられたことによる人間関係の喪失感みたいなものを描いていて、その分深みがなくなったともいえそう。まぁ、オリジナルと比較する必要も別にないんやけどな。
♡ 既視感のあるシーンは多かったけど、気色の悪い芸者ロボットとか、それなりに面白い部分もあって楽しめた。オリジナルはかなり難解さを伴う作品のようやし、何も知らずに観るほうが気楽でいいかもしれないわね。
♤ 逆にアニメ版の印象的なシーンを実写版に取り入れて、かなり忠実に再現しているところがオリジナルとの類似点になってる。少佐がサイボーグ化されるプロセス、光学迷彩で透明化した少佐が水たまりで格闘するシーン、海上から香港のビル群を見るような夜景、戦車を壊そうとして体がボロボロになる場面、街中の看板が殆ど中国語というところなどがそう。映像ではCGを使いまくってるけど、細かなところまでちゃんと作られていて安っぽさがない。そのために制作費が増えてしまった割に本国での人気はイマイチで、巨額の赤字になるらしい。ということで続編が作られる可能性は低そうやけど、これは単発でええと思う。
予告編
スタッフ
監督 | ルパート・サンダース |
脚本 | ジェイミー・モス |
ウィリアム・ウィーラー | |
アーレン・クルーガー |
キャスト
スカーレット・ヨハンソン | 少佐/草薙素子 |
ピルウ・アスベック | バトー |
ビートたけし | 荒巻 |
ジュリエット・ビノシュ | オウレイ博士 |
マイケル・カルメン・ピット | クゼ |
桃井かおり | 素子の母親 |