レビュー

カフェ・ソサエティ(Café Society)

投稿日:2017年5月6日 更新日:

おすすめ度

「Cafe Society」のポスターの写真

キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 4.0 ★★★★

ウディ・アレン監督が1930年代ハリウッド黄金時代の虚実を通じて描く、一人の青年をめぐるロマンティック・コメディ。刺激のある生活を夢見て、映画業界の大物エージェントとして成功している叔父フィルをたよってロサンゼルスに移り住んだニューヨーク育ちの青年ボビー。フィルの秘書を務める美女ヴォニーに心を奪われ、彼女と親密さを増していくが、彼女には思いがけない恋人の存在があった。芸能人や政治家、裏社会の人間まで、ありとあらゆる人間の野心がうずまく街で、彼もまた成功していくのだが・・・。ウディ・アレン作品では『ローマでアモーレ』でも起用されたジェシー・アイゼンバーグがニューヨーク育ちのユダヤ人青年を好演。ナレーションはアレン監督自らがつとめる。シャネルなどの華やかな衣装も見どころ。

 

言いたい放題

キット♤ ウディ・アレン監督はおよそ50年にわたってコンスタントに仕事を続けてるけど、この10年くらいは年1本のペースに落ち着いてるかな。新作が来るたび、今年はどんな映画かなと楽しみにしながら劇場に足を運ぶのが恒例になっている。

アイラ♡ このところは、彼にとって庭同然のニューヨークを離れて、パリやバルセロナやロンドンやローマ・・・って、ヨーロッパの都市を舞台にしたものが多かったけど、本作はニューヨーク育ちのユダヤ系青年が主人公ということで、テイストにも古巣感があってどこかほっとするものがあったね。

♤ アレンの映画には自伝的また自分自身を主人公に投影したような作品とそれ以外とに分けられると思う。前者では監督、脚本、主演の3役をこなすことが多かったけど、さすがに歳をとってからは、彼の身代わりともいうべき俳優を充てることが多くなった。

♡ これもまさにそのタイプの作品よね。主人公のニューヨークの家族、特に個性の強い母親像はウディ・アレン作品の重要なモチーフ。来世があるからってユダヤ教からキリスト教に改宗する兄のことをボロクソにいう叔母さんなんて、ウディ・アレンでないと描けない存在やし。それに主人公のボビーって、そっくりそのままウディ・アレンの分身やと思わない? きれいな女性を前にするとやたら饒舌になってぺらぺら喋り出すとこなんて『アニー・ホール』とかいろんな作品でのウディ・アレン自身を思い出してしまう。

♤ 物語の前半は、仕事を求めてニューヨークからハリウッドに移る主人公ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)、ハリウッドで代理人として成功しているボビー伯父のフィル(ステーヴ・カレル)、フィルの秘書で不倫相手のヴォニー(クリステン・スチュワート)の奇妙な三角関係で進んでいく。途中までの話の流れはビリー・ワイルダーの名作『アパートの鍵貸します』に似ていると思ったけど、ヴォニーが選択できる立場ということで『アパート・・・』とは全く違う方向へ展開していく。

♡ 叔父のフィルの会話には、当時の有名俳優たちの名前が飛び出してきてなかなか面白いよね。ヴォニーに案内させてビバリーヒルズあたりのセレブの邸宅巡りをする場面もハリウッド黄金時代という設定ならではやし、この時代らしいジャズがばんばん使われて、これもウディ・アレン独特の味わい。

♤ 後半は、ロスで挫折を味わったボビーがニューヨークに戻り、舞台もギャングの兄貴が経営するナイトクラブへと移る。彼はビジネスで成功し、もうひとりの女性ヴェロニカ(ブレイク・ライヴリー)が絡んでくる。この兄貴をめぐる一連のエピソードや口やかましい母親の存在なんかを、アレンらしい軽快な語りでさらっと見せてしまうのはいつもながら上手いな。タイトルの『カフェ・ソサエティ』は「1930年~50年代にナイトクラブなどに出入りしていた映画スターなどの有名人」という意味。

♡ ジェシー・アイゼンバーグというのは、しゅっとした二枚目ではないし、どうかすると脇役止まりになりそうなキャラやのに、結構主演をこなしてるのよね。『ローマでアモーレ』での起用を経ての本作主演やけど、ボビー役にはぴったりでなかなかの抜擢やったと思う。

♤ ちょっと気が弱くて、成功してもどこか背伸びしている感じや、ガールフレンドと同じ名前の女性を結婚相手に選ぶような垢抜けないところがイメージにぴったり。個人的には『ゾンビランド』(2010)で注目して、翌年の『ソーシャル・ネットワーク』でブレイクしたかと思ったけど、その後が続いていないのでこの映画を機会に今後に期待したい。

♡ ボビーに絡む2人の女性はどちらも素敵やった。シャネルが提供しているという衣装にもうっとりしてしまう。ウディ・アレンは今後しばらく、どなたにご執心となるのでありましょうね。

♤ ヴォニー役のクリステン・スチュワートは、『パニック・ルーム』の子役で見たが、成功した『トワイライト』シリーズを観ていないので大人になってから見るのはこれが初めてかな。新鮮で好感が持てる。

♡ ジュリエット・ビノシュの『アクトレス』(2015)の秘書役とか、『イントゥ・ザ・ワイルド』(2008)、『スノーホワイト』など、すでに実績は多いよ。ウディ・アレンから声がかかったことで可能性はさらに広がったのと違うかな。

♤ 1年間待つ間の期待に応えてくれて、来年はどんな映画が来るかとまた期待させてくれる作品やった。

♡ 生粋のニューヨーカーであるウディ・アレン監督が、虚飾まみれのハリウッド黄金時代を皮肉った作品という見方はできると思うけど、円熟した人生観がにじみ出てるという感じを受けたな。『ブルージャスミン』もやったけど、観客を突き放すようなエンディングに込められた、人生にはいろんな選択や分岐があって、それもこれも含めての自分・・・みたいなメッセージにはほろ苦さがある。似たテーマを持ちながら、味わい深さに圧倒的に欠けてた『ラ・ラ・ランド』はもっと勉強せんとあかんわ。 

 

予告編

 

スタッフ

監督 ウッディ・アレン
脚本 ウッディ・アレン

 

キャスト

ジェシー・アイゼンバーグ ボビー
クリステン・スチュワート ヴォニー
ブレイク・ライブリー ヴェロニカ
スティーブ・カレル フィル・スターン

レクタングル336

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