レビュー

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(Demolition)

投稿日:2017年3月8日 更新日:

おすすめ度

「Demolition」のポスターの写真

キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 4.0 ★★★★

ウォール街のエリート銀行員デイヴィス。仕事も私生活も順風満帆そのものだったある日、彼の同乗する車を運転していた妻が突然の交通事故で他界する。妻の死に直面しても涙を流すことができず、悲しみの感覚を失っていることに気付いたデイヴィスは、義父の言葉をきっかけに身近なものを破壊しはじめる・・・。主演にジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ。監督は『わたしに会うまでの1600キロ』『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン=マルク・ヴァレ。

 

言いたい放題

アイラ♡ なんというか、体調の悪い日に観ると大嫌いになりそうな作品やね。幸いしんどくない日に観たので(笑)、どちらかというと好感度は高かったです。ほとんど訳がわからないまま進んでいくのに、なぜかぐいぐい観てしまう。

キット♤ めちゃくちゃ分かりにくい映画、というか見る人を選ぶ映画やな。

アイラ♡ そしてジェイク・ギレンホールにぴったりの映画でもある(笑)

キット♤ かいつまむと、妻の事故死でプッツンしてしまった主人公のデイヴィス(ジェイク・ギレンホール)が、義父の一言をきっかけに色んなものへの破壊行動をエスカレートさせ、その過程で知り合ったこれもプッツン気味のカレン(ナオミ・ワッツ)と意気投合して、さらに彼女のちょっと変な息子とも仲良くなって…という流れ。つながりのわかりにくい回想シーンや幻覚のようなフラッシュバックも入ってくるので、映画の進行についていくのが大変。字幕を読んでいるうちに置いて行かれそうになる。

♡ 妻の突然の事故死によって感覚が麻痺してしまって、ついには妻を愛していたのかどうかもわからなくなっていくというメインプロットやけど、逆に、極限まで傷ついた心が機能停止してしまった男の話としてとらえると、一連の異常行動も腑に落ちる。この監督の作品は、『わたしに会うまでの1600キロ』にしても、主人公の気持に寄り添えるようになるまで結構時間がかかるというか、好きになれないままラスト近くまで引っ張っていかれるけど、それがふっと解ける瞬間がある。これもそんな感じの作品なのかなと思う。

♤ 自販機会社のクレーム処理担当者としてデイヴィスと知り合うカレンも、深夜にクレーマーの自宅に電話をかけるとか、ちょっと変な息子を放任同然に育ててるとか、ストーカーまがいのことをするとか、そもそもまともじゃない。なのに彼女についての背景説明がほとんどないまま進めるので、よけい不可解な作品になってる(笑)

♡ 精神のバランスの取れてない人間の感情の起伏に付き合わされるので、意図してのことやろけど、なかなかしんどいものがあるよね。ただ、頭脳労働者だった彼が肉体を酷使するようになり、ついには自宅まで破壊していくのは非現実そのものやけど、ここは案外現代人の深層心理を突いてるのと違うかな。びっくりしつつ、実はみんなあの行動に共感してたりして。

♤ しかしジェイク・ギレンホールは、こういう変な人をやらせたら第一人者やな。『ナイトクローラー』のあの役をあれだけ不気味に演じられる俳優もそうおらんやろ。

♡ あと、今回がデビュー作であるらしいナオミ・ワッツの息子役のジュダ・ルイスという子が気になった。一昔前のロックミュージシャンみたいな服装で、いきなり人の体に銃をぶっ放したり、古いロックを大音量で聴いたりする変わった子。しかも奇行で停学中。でも根は不安のかたまりで、心を許せる大人として次第にデイヴィスに信頼を寄せていく。どうしようもない3人やけど、なんか再生の兆しのようなものを感じたわ。

♤ デイヴィスは妻の死に涙を流すことがなかったのが、あるとき車に乗ろうとして、彼女が青いポストイットに残したメモ書きを見つける。そこには “If it’s rainy, you won’t see me. if it’s sunny, you’ll think of me.” と書かれていて、それを読んでデイヴィスは初めて泣くことができた。邦題は、デイヴィスが立ち直りのきっかけを得るこのメモから来てる。原題の『Demolition』が破壊とかいうそのまんまの意味なのに対して、今回の邦題はなかなかええのんちゃうかな。

♡ ただこのメモ自体、よぉわからん代物ではあるけどね。でも物体は壊しつくしたけど、妻への想いが失せていないことをようやく実感した彼の心が湿り気を帯びてくるくだりは良いね。テーマは破壊からの再生みたいな、意外とシンプルなものなのかもと思ったわ。で、カレン親子とはこのまま続いていくんかな・・・知らんけど(笑)

♤ とにかく説明的なセリフがほとんどないので、見る側が一生懸命推論しなければならないけど、体調さえよければ、それもまた楽しって作品。ただしこういう映画は一般にはアピールしないので日本ではヒットしない。映画の制作年は2015年なのに、2017年公開となっているのは配給会社が悩んだ末か? まあ、お蔵入りにならずに公開されてよかった、よかった。

 

 

 

予告編

スタッフ

監督 ジャン=マルク・バレ
脚本 ブライアン・サイプ

 

キャスト

ジェイク・ギレンホール デイヴィス・ミッチェル
ナオミ・ワッツ カレン・モレノ
クリス・クーパー フィル・イーストマン
ジュダ・ルイス

クリス・モレノ

レクタングル336

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