おすすめ度
キット♤ 3.5 ★★★☆
アイラ♡ 3.0 ★★★
2016年・第29回東京国際映画祭のコンペティション部門で最優秀男優賞(パオロ・バレステロス)と観客賞を受賞したフィリピン映画。トランスジェンダーとして厳格な家庭に育ち、ビューティーコンテストでの優勝をめざして生きるトリシャ・エチェバリアだったが、あるコンテストで優勝を獲得したその場で急死してしまう。彼女の望みは、自分の通夜では7日にわたって毎日異なるセレブのメイクをしてほしいというものだった。トリシャの願いをかなえるべく友人たちは奔走する。苦難を乗り越え、常に自分らしさを失わず美しさを追い求めたトリシャの人生に、最後の彩りを添えるために・・・。
言いたい放題
アイラ♡ 国際的に評価されつつあるフィリピンのジュン・ロブレス・ラナ監督作品。2016年の東京国際映画祭では主演男優賞を獲得しているだけあって、主演俳優の魅力で見せきったという印象かな。
キット♤ 主人公はミスコン女王を狙うトランスジェンダー。彼女(彼)の学生時代、父親と衝突して家を出る頃、ゲイ仲間との生活、ミスコンでの優勝と突然の死、遺言に従って友人がやってくれる死後の日替わり化粧、等々が時間通りでなく、新旧入り混じったシャッフル状態で進んでいく。なので、映画が始まってからしばらくは状況が飲み込めないが次第に分かってくる。
♡ その点、フラッシュバックの使い方がまだまだ稚拙だったり、主人公以外の登場人物の描き込みが足りなかったりと、監督としての手腕はまだまだ国際的レベルにはない気はするけど、主人公のトリシャの明るくて優しい生き方に接するだけで観る者の胸は熱くなると思う。
♤ トリシャ役のパオロ・バレステロスはこの映画に出演する前から、自らにものまねメイクを施して、ジュリア・ロバーツ、アン・ハサウェイ、ビヨンセなどのそっくりメイクの写真をInstagramに投稿していたんやてな。ちなみにInstagramのアカウント「pochoy_29」はフォロワー200万人。本作では、死後のそっくりメイクは映画のプロのメイクのスタッフではなく、パオロ・バレステロスが自前でやっていたらしい。
♡ LGBDをテーマとする映画はたくさんあるけど、フィリピンの人には何というかアジア離れしたラテンの血を感じるところがあって、本作にも漂うあっけらかんとした陽気な空気感が独特。トリシャや親友たちの持ち前の明るさが、辛い話を湿っぽくしてないし。LGBD、特にトランスジェンダーの男性主人公を明るく健気な人物として描くのはお約束化してると感じるけど、だからこそ登場人物たちへの感情移入がスムーズにできてよかった。
♤ トリシャは男運が悪くて、けっこうきつい場面もあるけど、全体としてはコメディ的な味わいもあって、シリアスになりすぎなくてよかった。手抜きもなく丁寧に作られている。全体を通して、画面がカラフルで色の使い方もいい。フィリピン映画侮りがたしやな。
♡ 監督のジュン・ロブレス・ラナによると、フィリピンで数年前、トランスジェンダーの人が殺される事件があって、ネットに心ない書き込みを観たことが本作の構想につながったということやねんて。
♤ 彼は早くにカミングアウトしたゲイなので、トランスジェンダーに対する理解、共感といった面では問題ないはず。映画を観ていると、トリシャを含めたトランスジェンダーの人たちを美人に撮るというよりも、ありのままに撮ろうとしているのかなと感じた。メイクで綺麗にしているが、なんとなく女になりきれないような部分を映像技術で手を加えるのではなく、敢えてそのまま残しているような感じ。トリシャかて、顔はきれいにつくっても肩幅はごっついままやし(笑) しかし、タイトルがなんで “Die Beautifully” やのうて “Die Beautiful” なんやろ?
予告編
スタッフ
監督 | ジュン・ロブレス・ラナ |
脚本 | ロディ・ベラ |
キャスト
パオロ・バレステロス | トリシャ |
ジョエル・トーレ | トリシャの父 |
グラディス・レイエス | トリシャの姉 |
クリスチャン・バブレスイナ・デ・ベレン | バーブ |