おすすめ度
キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 4.0 ★★★★
カナダのフォークアートの画家モード・ルイス夫婦の半生を描くドラマ。カナダ東部の小さな町。子どものときから重度の関節リウマチを患うモードは、家政婦募集の張り紙を出していた魚の行商人エベレットの住む家へ雇ってもらうべく押しかける。孤児院育ちで教育もなく、粗野なエベレットとの同居生活だったが、モードは好きな絵で家中を飾るようになっていた。やがてお互いを大切に思うようになり2人は結婚。あるとき、エベレットの顧客のサンドラがモードの絵の才能を認めたことから、彼女の絵は評判を呼び、遠くから客やマスコミが押し寄せるようになるのだが・・・。『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンス、『6才のボクが、大人になるまで。』のイーサン・ホークの主演。
言いたい放題
アイラ♡ モード・ルイス(1903~1970)という画家を知らなかったのやけど、絵本のようなナイーブな情景画を描く人なんやね。色彩は明るく温かで、人の記憶に呼びかける懐かしさのある作風。
キット♤ 生涯カナダのノバスコシアの田舎町を出たことがなかった人なので、映画の舞台も住んでいた村の中だけ。モードは、小児性関節リウマチを患っていて体が不自由、過去に死産の経験があり、親が残した財産は兄の借金でなくなり、引き取られた叔母には迷惑がられているという不幸な境遇。でも、家政婦を募集していたエベレットと出会って彼の家に押しかけ、最悪の環境からの脱出を図る。気の毒な女性と思って観ていると、エベレットの雇われ家政婦からしっかり妻になり、いつの間にか2人の力関係が逆転してしまっているというたくましさ満点の人やった。
♡ エベレットは孤児院育ちで教育もなく、魚の行商をして町はずれの掘っ立て小屋みたいなところで暮らしてる。口より手が先に出るタイプで、家政婦として雇ったモードにも、女は黙って家事をしてればいいという暴君そのままに君臨しようとする。「俺、犬、ニワトリ、その次がお前!」と宣言してたくせに、それがいつのまにやら逆転・・・(笑)。とはいえ、どこの夫婦もこんなものなんと違う?
♤ サリー・ホーキンスは、『ブルー・ジャスミン』や直近の『シェイプ・オブ・ウォーター』で十分に実力はわかってるけど、見た目は病気で弱々しいのに芯はしっかりしている役というこの役にはぴったりやな。イーサン・ホークのほうは、脚本も書けるし俳優としての才能もあって、出演作も多いのに、これこそが絶対的な代表作というインパクトの強い出演作がないような気がする。本作では、言葉で愛情表現などできない無骨な男が妻に対して見せるやさしさの演技が光った。
♡ まさに割れ鍋に綴じ蓋っていう感じの夫婦の醸し出す雰囲気がよかったけど、やはりここはイーサン・ホークの演技がいいね。
♤ 根はやさしいので、屈託のないモードに徐々に外堀を埋められ、後半はモードのなすがまま。少しいらつくものを抑えられないが、モードに怒りを向けるのではなく、そういう環境の自分を夫として情けなくおもってしまうような素朴な人。
♡ おそらくエベレットという人は、愛情にあふれた環境で育つことがなくて、人を愛するのがどういうことか実感することなくモードを家に迎えてしまったんやろね。彼女が自分の世話を焼き、好きな絵で小屋を飾り、味気なかった生活が色彩とうるおいで満たされるようになっても、モードに対する気持ちが愛情というものだということになかなか気づけない。でも気づけば掃き掃除して、じゃがいもむいて、網戸付けて・・・。
♤ それで文句言われるんやから甲斐ないわ。
♡ いさかいがあってモードが家を飛び出したあと、「俺を捨てないでくれ」というセリフに私の隣のおっさん泣いてはった。身につまされはるんやわ(笑) 夫婦連れも多かったけど、奥さんたちはみな「ざまぁ!」と思ったことでしょ。
♤ そんな2人が互いに寄り添い、電気もないようなつつましい暮らしに幸せを感じている。観る者の気持ちが温かくなる良い作品。ところでモード・ルイスについてWikipediaで調べたら、2人の結婚後にモードが絵を描き始めるいきさつについて、「エヴェレットはモードが描く事を奨励する。魚を一軒一軒に売るのと同時にモードのポストカードを25セントで売り、やがて彼の顧客から評判が上がる。そしてモードのために油絵のセットを購入する」と書かれてる。こっちが事実だとすれば、エベレットはほんまはもっとええ夫やったのに、映画ではそこが消されてしもた。いやいや男はつらい。
予告編
スタッフ
監督 | アシュリング・ウォルシュ |
脚本 | シェリー・ホワイト |
キャスト
サリー・ホーキンス | モード・ルイス |
イーサン・ホーク | エベレット・ルイス |
カリ・マチェット | サンドラ |
ガブリエル・ローズ | アイダ |