レビュー

ロケットマン(Rocketman)

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おすすめ度

Rocketmanキット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

5度のグラミー受賞に輝くミュージシャン、エルトン・ジョンの半生を、数々のヒット曲に乗せミュージカル風に描く。類まれな才能であっという間にスターダムを駆け上がるが、幼時の体験やコンプレックスによる苦悩は彼を酒やドラッグに走らせ、その成功に影を落としていく。主演は『キングスマン』シリーズのタロン・エガートン。監督は『ボヘミアン・ラプソディ』のデクスター・フレッチャー。30曲ものエルトンの曲は、タロン・エガートン自身が吹き替えなしにすべてこなしている。

 

言いたい放題

キット♡ エルトン・ジョンの半生を描いた伝記映画。監督のデクスター・フレッチャーは『ボヘミアン・ラプソディ』の監督でもある。『ボヘミアン・・・』が創作を交えた伝記映画の体裁をとっていたのに対して、本作はミュージカル映画の造り。現実と空想が入り混じった映像となっている。

アイラ♡ キーとなるのは、エルトンという人が幼少時から、そして成長してミュージシャンとして大成功してからも、ひたすら愛情に飢えていたという部分やね。父親は少年エルトンをまるで顧みず、大スターとなってからも家族からの愛は薄い。恋愛感情を抱く相手はストレート、もしくはゲイであってもエルトンをただショービズに利用するだけの人間。常に孤独に苛まれ、そんな中で数々の名作を振り絞るように世に送り出していったことが描かれる。

キット♡ 冒頭からして、ハデハデな舞台衣装のエルトンがそのまま断酒会の部屋に入ってきてサークルに入って語りだす。そこから過去に戻り、幼少期から親の愛情に恵まれなかったこと、幼くしてピアノの才能の片鱗を見せたこと、クラッシックからロックへと転向したこと、作詞家バーニー・トーピンとの出会いへと進んでいく。作曲は得意だが作詞が不得手なエルトンがバーニーからの詞を受け取って、即興で『僕の歌は君の歌(Your Song)』を弾き語るところが見せ場。

アイラ♡ 難を感じるところがあるとすれば、ミュージシャンとしての彼の描き方がいささか浅いこと。私生活では心に闇を抱えながら、アーティストとしては容易に成功する・・・みたいなはずはないので、そこのバランスがちょっとね。なので、バーニーと出会い『Your Song』ができていく過程はすごくよかった。逆に、同じく彼との決別を歌った『Good-by Yellow Brick Road』は軽すぎる。ちなみに私、バーニーとエルトンはずっと恋人同士だと思いこんでいて、バーニーがストレートだとは初めて知ってちょっと衝撃。当時はそんなふうに紹介されていた記憶がするけど、どうやら思い違いだったみたい。

キット♤ エルトンを演じたタロン・エガートンは『キングスマン』シリーズや『SING/シング』でのゴリラの吹き替えくらいしかこれといった実績はないのに、本作では吹き替えなしで30曲近くを歌っている。5カ月間、歌とピアノのレッスンを受けたそうやけど、それくらいのトレーニングで演ってしまうのはスゴい。そういえば、『キングスマン ゴールデン・サークル』にはエルトン・ジョンがゲスト的に出演してたから、縁はあったんやな。ちなみに、前歯がすきっ歯になっていたのは矯正したのではなく、歯用のタトゥーインクで描いたものらしい。

アイラ♡ 彼と一生の友となる作詞家のバーニー・トーピンを演じたのは、『リトル・ダンサー』でビリー・エリオットを演ったジェイミー・ベル。最近作では春に公開された『リヴァプール、最後の恋』でアネット・ベニングと共演。彼のことは、子ども時代を知ってる親戚の子みたいな思いで見てしまうので、何を観ても邪念が入って困るわ・・・。

キット♤ マネージャーのジョン・リード役リチャード・マッデンはどこかで見たことがあると思ったら、テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のロブ・スタークを演っていた。風貌が変わりすぎてすぐ気が付かなかった。ちなみにこのジョン・リードは後日クイーンのマネージャーもやっている。本作ではエルトンと仲違いしてクビになるビジネス優先の人間性に欠ける人物として描かれてるけど、『ボヘミアン・・・』では仲間の罠に嵌ってクイーンのマネージャーをクビになる気の毒な役。

アイラ♡ 『ボヘミアン・・・』でジョン・リードを演じたエイダン・ギレンも『ゲーム・オブ・スローンズ』の主要登場人物ピーター・ベイリッシュ(リトルフィンガー)を演じてて、イギリスの旬の俳優たちを脇でたくさん起用してるのを観られるのは楽しいね。あと、エルトンの母役は、なんと『ジュラシック・ワールド』のプライス・ダラス・ハワード。中年太りしたおばさん役でぜんぜん気が付かなかったわ。

キット♤ 本作ではエルトン・ジョン本人が製作総指揮に名を連ねているので、良くも悪くもエルトン自身のの意向が反映され、どこまで真実なのかはわからない。でも音楽映画としてタロン・エガートンの頑張りだけでも十分観るだけの価値がある。

アイラ♡ ミュージカル風にいきなり歌や踊りが始まっていく数々の場面はとても楽しいし、ダンスシーンのキレもいい。年齢を重ねて動きが鈍くなるエルトンの様子もタロン・エガートンがかわいく演じてるし。そういえば、実際のPVそっくりに作られたエンディングの『I’m Still Standing 』は、彼が『SING』で歌った曲やったわね。

 

予告編

スタッフ

監督 デクスター・フレッチャー
脚本 リー・ホール

キャスト

タロン・エガートン エルトン・ジョン
ジェイミー・ベル バーニー・トーピン
リチャード・マッデン ジョン・リード
ジェマ・ジョーンズ アイヴィー
プライス・ダラス・ハワード シーラ・フェアブラザー
スティーブン・グレハム ディック・ジェイムス
テイト・ドノバン ダグ・ウェストン
チャーリー・ロウ レイ・ウィリアムズ

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