おすすめ度
キット ♤ 2.0 ★★
アイラ ♡ 3.0 ★★★
実際に起きたヨットレースでのいたましい出来事に基づくドラマ。監督は『博士と彼女のセオリー』のジェームズ・マーシュ。主演は『英国王のスピーチ』などのコリン・ファース。1968年、イギリスでヨットによる単独無寄港世界一周を競うゴールデン・グローブ・レースが開催されることになり、華々しい経歴を持つセーラーたちが参加を表明。航海計器の会社を経営するドナルド・クロウハーストは、まったくのアマチュアながら不振の会社を立て直すためレースへの出場を宣言。スポンサーも現われ、メディアや家族らの期待に押されて出航準備を進めていく。だが準備が十分に整わないまま出港した彼を、過酷な現実が待ち受けていた。『ナイロビの蜂』のレイチェル・ワイズ、『ワンダーウーマン』のデビッド・シューリスが共演。
言いたい放題
キット♤ 1960年代、無寄港の世界一周レースに挑戦したイギリスのアマチュアヨットマンの実話に基づく作品。主演が最近好調のコリン・ファースとなれば観るしかないと映画館へ行ってはみたものの、正直がっかりやった。
アイラ♡ というか、違う期待をしてしまったのがそもそもの間違いよね。そもそもこのポスターを観せられたら、颯爽とヨットで海原を駆けていく物語を想像してしまうもの。『博士と彼女のセオリー』のジェームズ・マーシュ監督と、主演作に外れなしのコリン・ファースの組み合わせということで安心してしまい、何の予備知識もなしに観に行ったのがいけなかった・・・。
♤ 主人公クロウハースト(コリン・ファース)は、経営する会社が不振で、賞金と名声を獲得するため新しくヨットを作ってレースに挑もうとする。外洋航海の経験がない素人ヨットマンなので、ほとんど窮地を脱するための博打みたいなもの。それでも観る側からすれば、「あらゆる不利を跳ね返して見事優勝」「頑張ったけども、惜しいところで勝利を逃す」「健闘むなしく、途中でリタイア」「惜しくも事故で亡くなる」などなど結末についていろんな想像はするけれど、いずれにせよめちゃくちゃ“頑張る”だろうという期待で鑑賞に臨む。
♡ 邦題も悪いよね。喜望峰の風に乗ってすいすいと船を走らせていくみたいやもの。
♤ ところがそんな期待は見事に裏切られる。がっかりと言ったのはそういういう意味やけど、「それはないやろ」という肩透かし感をウリにしたかったのなら、ある意味成功してるんやろな。この邦題はいかにも思わせぶりやけど、喜望峰の風には吹かれない。原題の「Mercy」は直訳すれば「慈悲」という意味やから、たしかにダメダメ男クロウハーストには慈悲が必要だったといえるのかも。
♡ この事故のことは欧米ではかなり知られているのやそうで、本国やアメリカの人にとっては、あの話だとすぐわかる。精神的に追い詰められて周囲に嘘をつき続け、絶望的な選択をしてしまう主人公に対して、神の(おそらく)慈悲を乞うという原題の意味するところはわかる気がする。
♤ 構成も、出港後のシーンは洋上のクロウハーストと本国で待っている家族やメディアなどの様子を交互に映し出すばかりで飽きてしまう。レースなのだから、ライバルの船のシーンなどもあっても良かったと思うけど一切なしというのもなぁ。
♡ それでも、コリン・ファースだったから作品としてまとまったとは思うけどね。修理のためだったか、マストのてっぺんまで登って船の揺れを体感するあたりから次第に表情が固くなり、やがて致命的な嘘で自分を塗り固めていくようになるという一連の流れのなかでの演技はやっぱり素晴らしかった。なぜレースを中断できかったのか、なぜもっと早く真実を伝えなかったのか・・・。自分に負け、自然の脅威にも負けた彼は、生き恥を晒したくない見栄っ張りだったのか、卑怯者だったのか・・・その上でこの“慈悲”という原題を考えてみる価値はある。
♤ いろんな見方はあるやろけど、自分としてはやっぱりがっかり作。コリン・ファースとレイチェル・ワイズの無駄遣いに終わってしまった。
♡ よかったのが新聞記者役のデビッド・シューリス。『ハリポタ』シリーズや『ワンダーウーマン』など昔から出番の多い人やけど、最近ではTVのドラマの『FARGO/ファーゴ』で金貸しの代理人という実にいやらし~役を好演。本作でも、結果として無責任にレース継続の後押しをすることになるジャーナリストを演じていい存在感を出してました。
予告編
スタッフ
監督 | ジェームズ・マーシュ |
製作 | グレアム・ブロードベント |
ピート・チャーニン | |
スコット・Z・バーンズ | |
ニコラ・モベルネ | |
ジャック・ペラン | |
脚本 | スコット・Z・バーンズ |
撮影 | エリック・ゴーティエ |
音楽 | ヨハン・ヨハンソン |
キャスト
コリン・ファース | ドナルド・クローハースト |
レイチェル・ワイズ | クレア・クローハースト |
デビッド・シューリス | ロドニー・ホールワース |
ケン・ストット | スタンリー・ベスト |