レビュー

タリーと私の秘密の時間(Tully)

投稿日:2018年9月1日 更新日:

おすすめ度

Tully

キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.0 ★★★

『JUNO ジュノ』『マイレージ、マイライフ』のジェイソン・ライトマン監督が、『ヤング≒アダルト』のシャーリーズ・セロンと再びタッグを組み、子育てに疲れた母親と不思議なベビーシッター女性との交流や描く。何でも完璧にこなしてきた主婦のマーロ(シャーリーズ・セロン)は、3人目の子どもを出産してから疲れきっていた。そこへ夜だけのベビーシッターとしてやってきたタリーという若い女性。奔放ながら完璧に仕事をこなし、マーロの相談相手にもなってくれるタリーを得て、マーロは自分を取り戻していく。自分のことをほとんど語らないタリーは、ある夜マーロを飲みに誘い出すが・・・。タリーは夜明け前には必ず帰ってしまい、自分の身の上を語らないのだが……。タリーには『ブレードランナー 2049』などでのマッケンジー・デイビス。脚本は『JUNO ジュノ』『ヤング≒アダルト』のディアブロ・コーディ。

 

言いたい放題

アイラ♡ 主人公のマーロは、主婦として母親として完璧に家事をこなすタイプ。小学生の息子はどうやら多動性注意欠損障害を持っているようで、しばしば学校でトラブルを起こす。経済的に成功している夫の兄の家とは生活水準にかなり差があり、しかも兄は息子の小学校入学にも口利きをしていて・・・と、大小さまざまなストレスを抱えているところに3人目を出産。夫もいい人ではあるけれど、根が真面目なマーロはワンオペ育児に心身ともに次第に疲弊。そこへタリーという救世主が現れる!という寸法。

キット♤ 劇場予告を観ていたので、主演のシャーリーズ・セロンが子育てで大変なところにタリーというナイトシッターが現れて・・・という筋書きは分かっていた。ところが、このタリーが若いのにパーフェクトで、話が進むほどにこんな都合の良い話はないやろという思いが強まってくる。

♡ いつもドンピシャのタイミングでやってきて、疲れ果てたマーロをぐっすり休ませてくれる。マーロも次第に生気を取り戻していき、そればかりかご無沙汰気味だった夫婦生活まで救ってくれたり・・・。

♤ さらに、模範的なシッターだったはずのタリーは、昔はイケイケだったというマーロに、子どもたちを置いて久しぶりにマンハッタンまで飲みに出ようと誘う。このあたりから、なんかおかしいなという感じが漂いはじめる。「タクシーで行こう」というマーロに、「帰りは私が運転するからと」答えるタリー。それなのに帰りの車を運転していたのはマーロ自身。違和感はさらにつのり、直後の大きな出来事を経てようやく真相が明らかになる。

♡ 私たちにとって惜しまれるのは、最近『2重螺旋の恋人』というフランス映画を観てしまっていたことやね~。すぐ「あっ、そこかい!」と思ってしまって、盛り上がりが一気に半減。あれを観ていなかったら、もう少し高評価をつけられたかもしれない。

♤ なるほどと納得する一方で、そもそも映画製作者が観客を「騙す」手段として、これは少々お手軽すぎるような気もする。マーロの夫は夜だけシッターが来ていると思わされていたのか、それともタリーを知るはずの夫もまたマーロの想像の産物で、ではベッドでヘッドフォンをつけてシューティングゲームにふける夫は果たして実体なのかどうか・・・。この辺を考えだすとちょっと興味深くはあるけど。マーロは自分の結婚を失敗だとは思っていないので、妻の休場がぜんぜん見えていないお気楽な夫との落差が際立つな。

♡ 完璧主義で家族への愛情も深いからこそ陥った状況なのでしょうけれど、やっぱり悪いのはこのだんなやわ~。悪気はまったくないけど、頑張ってる妻をぜんぜんサポートできてない。実際、子育て経験者にはリアリティありすぎてかなり響くものがあるみたいよ、この作品は。若い父親たちは観るといいんじゃない? それほど素晴らしい脚本というわけでもないけど。

♤ シャーリーズ・セロンはスラりとした美人やけど、アカデミー主演女優賞を獲得した『モンスター』では14kg増量したほど“体を張る”女優。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』での丸刈りなんか序の口で、本作では再び16kg増量して3人の子供を持つ中年の母親になりきっているからすごい。

♡ 『モンスター』の顔面メイクもすごかったものね。今回はすっぴんとはいえ顔は美しいままやったけど、娘から「Mom, what’s wrong with your body(身体どうしちゃったの?)」と呆れ半分に尋ねられるほど、みごとにだらしなく肉の付いた身体にはびっくり。肉襦袢かと思えば、ほんとに太ってたんやね!

♤ タリーに助けられて元気を回復してきた頃は、ウェストもほっそりしかけてたもんな。それがラストではまたでっぷり。それをまた元に戻すのやから女優ってたいしたもんや。

♡ そうそう、音楽がなかなかいいのよ。女2人で車でマンハッタンまで出かける場面では、2人の気分を示すようにシンディ・ローパーの“Girls Just Want to Have Fun”や“Time after Time”などがメドレーで流れる。かと思うと冒頭にベルベット・アンダーグラウンドの”Ride into the Sun”といった曲が入ってたり。しかもテーマに使われているのが『OO7は二度死ぬ』のテーマ“You Only Live Twice”ってのも面白いわね。

 

予告編

スタッフ

監督 ジェイソン・ライトマン
脚本 ディアブロ・コーディ

キャスト

シャーリーズ・セロン マーロ
マッケンジー・デイビス タリー
マーク・デュプラス クレイグ
ロン・リビングストン ドリュー
アッシャー・マイルズ・フォーリカ ジョナ
リア・フランクランド サラ

レクタングル336

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