レビュー

ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)

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おすすめ度

Bohemian Rhapsody

キット ♤ 4.0 ★★★★
アイラ ♡ 4.0 ★★★★

一世を風靡したイギリスのロックバンド「クイーン」のフロントマンであり、1991年に45歳の若さで世を去ったフレディ・マーキュリーの半生を描く伝記映画。現メンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーが音楽総指揮を手がけ、劇中の楽曲の多くはフレディ自身の歌声を使用。さまざまな曲が誕生するいきさつや、「ボヘミアン・ラプソディ」のシングルカット決定までの紆余曲折など、クイーンファンでなくとも楽しめる。特筆すべきは、「ライブ・エイド」での21分間にわたる圧巻のパフォーマンスの再現だ。フレディ役には『ナイト・ミュージアム』のラミ・マレック。『X-MEN』シリーズのブライアン・シンガー監督。

 

言いたい放題

キット♤ ロックバンド「クイーン」とフレディ・マーキュリーの半生を描いた作品。アメリカ、日本を含む全世界でヒットしている。日本はクイーンかまだ駆け出しだった頃に本国イギリスよりも先にファンがついた国なので、日本でのヒットは想定内というところか。本作は母国のイギリス映画ではなく、アメリカ資本によるアメリカ映画。そのためというわけでもないだろうが、「売れる」映画にするために周到に考えて作られていると思った。クイーン好きには必見なんやろけど、彼らのことをよく知らなくても楽しめる。

アイラ♡ 公開初日・初回で観たのに、レビューが遅くなっちゃいました・・・。そのとおり、確実にヒットすべく組み立てられた構成よね。事実は極力単純化して筋立てをシンプルにして、盛り上げるところは大いに盛り上げることで、大衆性のある娯楽作品にしてある。そこが本作の最大の特色であり、功罪相半ばするところでもあると思う。すぐにスターダムを駆け上がったように描かれてるけど、実際にはいろいろ紆余曲折があった。そのあたりはすっぱり省かれてるしね。

♤ そのわりに、妻と窓辺の電気スタンドを使ってやりとりするシーンに時間をかけてたり。あれはいらんかった気がするな。クイーンというバンドではなく、フレディ・マーキュリーの伝記映画に仕立ててあるのもヒットの要因やろな。バンドの顔であるリード・ボーカル、タンザニアでペルシャ系インド人の家庭に生まれたマイノリティ、ゲイでエイズによる死亡など題材には事欠かないのでフレディにフォーカスするのはまぁ当然。その分、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンの3人が脇役として影が薄くなってしまったのは残念。もう少し他のメンバーの人物像が見えるようにしても良かったのでは?

♡ 製作にあたっては、いまもクイーンであるブライアンとロジャーの意向がかなり反映されているので、この構成には彼らの意図も大きく作用しているはず。ある種特異なバックグラウンドを持つフレディは、クイーンの中ではもちろんロック界でもトリックスター的存在やし、優等生的なブライアンの対抗軸としての位置づけもあるので、本作はフレディ・マーキュリー物語ということでこそ成り立つのやと思う。むしろ私は、フレディという大馬鹿もんのクソ野郎に対する赦しの物語と受け止めてるの。

♤ 伝記映画仕立てにしてあるけど、ドラマティックになるように史実を改変しているよな。映画の冒頭はライブエイドの当日の朝フレディが目覚めて会場へでかけるところと会場の設営を並行して見せ、いよいよフレディが大観衆を前にしたステージへ浮揚するような躍動感で上がっていくところ。そこから一転して時間はクイーン結成まで巻き戻され、そこからラストのライブエイドの圧巻のライブへと進んでいく。このライブエイドをクライマックスに据える映画構成が成功のポイント。ここを盛り上げるため、ライブの直前にフレディがメンバーにHIV感染のことを告げたことになっている。しかし実際には、本人がHIV感染を知ったのは1987年と言われていて、ライブエイドは1985年と前後が逆になっている。ここらはハリウッド流のご都合主義ってとこか。

♡ ライブエイドのときに死の予感があったかなかったかは、ストーリー上大きなポイントやもんね。ライブエイドのパフォーマンスをかなり忠実に再現した21分間のステージの場面は、本作いちばんの見ものやし。

♤ この部分はほんとに素晴らしい出来栄えで、ここだけでも本作を観る価値あり。ライブエイドの映像はYouTubeで観ることができるけど、全員が相当な努力をしてライブシーンの再現に臨んだことがわかる。

♡ ただ、フレディ役のラミ・マレックについては、残念ながら私は最後まで違和感が拭えなかった。ブライアン・メイが驚くほどのそっくりぶりで、ジョンもかなりいい線。ロジャーは実物のほうが可愛かったけど、ドラムが叩けないのに叩けると嘘をついてオーディションに臨んだという彼も、ライブシーンでは迫力あるドラムを叩いてたしね。3人にはたっぷりと感情移入ができたのに、主役がすごく頑張っていただけにいまひとつ残念さが残ったわ。

♤ フレディについては意見が分かれるけど、後半で短髪、髭でマッチョな格好になったとこはかなり似てたと思うで。

♡ うそぉ、どこの子が髭つけて悪ふざけしてるんかと思ったわ(笑) けど、全編をほとんどクイーンの往時のヒット曲が流れる構成は懐かしさでいっぱい。彼らの実写映像が流れるエンドロールは、さすがに涙が止まらなかった。最後の最後で、”Show Must Go On”が流れるなんてね・・・。

♤ 音楽は、版権を持つメンバーやフレディの遺族の協力を得てオリジナルの音源を使うことができたということなので問題なし。ブライアンとロジャーを音楽総指揮としてスタッフに名を連ねることで、映画に箔をつけるところは抜かりない。彼らは、冒頭の20世紀フォックスのあのファンファーレも演奏していて、いきなりファンの心を掴むようになってるし。

♡ うん、これは”オペラ座の夜(Night at the Opera)”の最後に、ブライアンのギターの多重録音による英国国歌”Got Save the Queen”が収録されているのともなんだか呼応するようで、ちょっとおもしろかった。あとはやはり、”Bohemian Rhapsody”のシングルカットをめぐるEMIの役員室でのやりとり。ここは洋楽ファンにはたまらない小ネタの宝庫よ。実は意外と気づかれてないのやけど、EMIの役員を演じるマイク・マイヤーズが、自らの『ウェインズ・ワールド』を茶化すところは必見!

 

予告編

スタッフ

監督 ブライアン・シンガー
脚本 アンソニー・マッカーテン
音楽監修 ベッキー・ベンサム
音楽総指揮 ブライアン・メイ
ロジャー・テイラー

キャスト

ラミ・マレック フレディ・マーキュリー
ルーシー・ボーイントン メアリー・オースティン
グウィリム・リー ブライアン・メイ
ベン・ハーディ ロジャー・テイラー
ジョセフ・マッゼロ ジョン・ディーコン
エイダン・ギレン ジョン・リード
アレン・リーチ ポール・プレンター
トム・ホランダー ジム・ビーチ
マイク・マイヤーズ レイ・フォスター
アーロン・マカスカー ジム・ハットン

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